読者投票あり!!46[破]「DAN ZEN ISIS P-1 Grand Prix」プランニング編集術アワード予選を開催

2021/08/23(月)20:00
img

 イシス編集学校[破]講座のプランニング編集術が今期リニューアルした。イシス人なら誰でも知っているプランニングのメソッド<よ・も・が・せ・わ・ほ・り>は変わらない。ほかならぬ松岡正剛の仕事術であることを尖らせた解説文、お題文にバージョンアップしたのだ。リニューアル後の46[破]の稽古では「今まで見たことがないが、見たかったのはこれだった」と思わせるものをめざしてプランの数々が立ち上がった。

 

 学衆は各自が選んだ「数寄な千夜千冊」3夜から方法的な着想を得て、想定したクライアントが求める「ハイパーミュージアム」を考案し、つくりあげる。[守][破]で学んだ方法を総動員し、連想と要約を繰り返し、まだこの世にないけれど、人々の心の奥底に待望されているような「忘れもの」を企画する。

 

 8月8日(日)の突破デーで、稽古にいったんの区切りがついたのもつかの間、翌9日(月)に、 アワードの号砲が打たれた。


  ●・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・●
    DAN ZEN ISIS P-1 Grand Prix 今期も開催!

  ●・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・●


 ISIS学林局より、今期もP-1グランプリを感門之盟で開催したい、という告知が46[破]ボードに届いた。社会を編集するのではなく、編集を社会する。社会をイシスにするのではなく、イシスを社会にする。そんなプランを全校が集う感門之盟で競い合う。46[破]各教室から1つずつプランが選ばれた。その後、企画者の学衆のみならず、クラスメイトと師範代、師範も加わって、再編集しブラッシュアップした10企画をここに披露する。

 

 心動かされるプラン、体験したいプランにぜひ「投票」してほしい。『遊刊エディスト』読者ならどなたでも参加できる。読者投票が予選となり、上位2プランは、本選にすすむ。[破]の指導陣の推薦1プランも加え、本選出場は3プラン(3教室)となる。本選は、第77回感門之盟2日目(9月5日)に行われる。企画者である学衆と師範代によるプレゼンが繰り広げられる予定だ。こちらも必見。イシス編集学校関係者はすぐ参加申し込みを! オンラインでどこからでも参加可能である。


 では、10教室のプランを披露しよう。[破]の稽古でいったん出来上がったプランを応用編として再編集している。突破者には<隣接と波及>といえばおわかりいただけるだろう。

 

 投票方法は、記事の最後にある。

 


 

◆プラン:1 あたりめ乱射教室
ミュージアム名「東北ミュージアム・エミシの暮らす千年の森」
 「まつろわぬ者」アテルイが生きた森で、東北の面影に出会う。

 

 

 

企画者:鹿澤倫子
プロフィール:馬と猫を愛する編集者。

 

<千夜千冊数寄3冊>
1)0623夜『バレエの魔力』鈴木晶
2)1304夜『セレンディピティの探究』澤泉重一・片井修
3)1413夜『蝦(えみし)夷』 高橋崇

 

<概要と推しポイント>

 岩手県の歴史教師の私は憂慮していました。エミシを討伐した坂上田村麻呂は知っていても、エミシのリーダーだったアテルイを東北の人は意外と知らない。エミシとはなにかを訪ねるミュージアムをプランナー鹿澤さんに託し、誕生したのがエミシの暮らしを疑似体験する「エミシの暮らす千年の森」です。古代の照葉樹林を植生した森では採集と狩猟を体験し、馬に乗り弓矢を操るエミシに遭遇。本館では朝廷との三十八年戦争の痕跡を訪ねます。住居を復元した村落で暮らせば「まつろわぬ者」の気配を感じるでしょう。展示だけでは終わらない、過去から現代に至る千年の時間の連続性に身を置いて、森羅万象への畏怖を、アテルイの面影を感応されたい。


執筆者:師範:天野陽子
画像作成者:学衆:義原星乃

 

 


 

◆プラン:2 アジール位相教室

ミュージアム名「ハッコウクエスト~発酵キングダムへの招待~」
 ド派手で不思議なヤツラ。発酵世界の勇者を醸す冒険ミュージアム。

 

 

 

企画者:浅見政和
プロフィール:新規事業開発担当。ビールの起源は古代メソポタミア文明と言われています。最初はただの腐ったパンジュースに違いないビールを、飲んでみて、最初にうまいと感じた人へのリスペクトが止まりません。

 

<千夜千冊数寄3冊>
1)1758夜『アジール』オルトヴィン・ヘンスラー
2)1687夜『日本の伝統 発酵の科学』中島春紫
3)1643夜『菊とポケモン』アン・アリスン


<概要と推しポイント>

 生れも育ちも伊豆大島。クサヤを作る会社の5代目社長である私は、クサヤの販売量低下と作り手の高齢化に悩み、プランナー浅見さんに「子どもたちが発酵の仕事に憧れる環境をつくりたい」と打ち明けました。こうして実現したのが「ハッコウクエスト」です。全国の蔵でもらえる発酵手形が冒険のチケット。「究めし者」を目指して、発酵の石板を集めながら「かぐ・みる・きく」の困難に遭い、微生物の謎と葛藤する。発酵を巡る冒険の途中では、菌を操る賢者、発酵を広める伝道師、菌を研究する博士に出会います。彼らとの対話で醸されるものは何か。クサヤから子どもの未来を醸成するハッコウクエストに、ド派手で不思議なヤツラが待っています。


執筆者:師範:天野陽子
画像作成者:学衆:富田七海

 


 

◆プラン:3 互次元カフェ教室

ミュージアム名「ニッポン夢幻露店」
 寅さんと遊ぶ、日本の原風景。岩波新書に学ぶ、日本の知。

 

 

企画者:ミヤガワ
プロフィール:プログラマブル表示器(HMI)開発を生業とする。知文AT賞では『万物理論』の背後に10冊の本を携え臨んだ凄腕。

 

<千夜千冊数寄3冊>
1)1000夜『良寛全集』 良寛
2)1283夜『縄文人の文化力』小林達雄
3)1418夜『日本の深層 縄文・蝦夷文化を探る』梅原猛


<概要と推しポイント>

 現代日本で居場所をなくした車寅次郎…彼が最後に行きついたのが、このミュージアムだ。りんご飴に金魚掬い、的屋にガマの油売り。賑わいの奥で鳴り響くマレビトたちの慟哭。祭りを担った職人達の技芸体験もできれば、祝祭と表裏であった「嘆」の歴史も鎮魂歌と共に体感できる。更には館内各所で、寅次郎の気まぐれな語りを聴きながら、周縁的日本史を「耳学問」できてしまう――軽妙で、ときに説教も辞さぬ寅さんの語りは、実のところ岩波書店の膨大なアーカイブをもとにモード編集を施した代物。寅次郎の猫だましにあうかのように、来館者は岩波の「知」に巻き込まれてゆく。書を捨てて祭りに出たその先で、新たな(日)本の面影を堪能されたい。


執筆者:チームストロー区師範:新井陽大
画像作成者:互次元カフェ教室学衆:藤田朋子&内野絹子

 


 

◆プラン:4 望眺世界塔教室

ミュージアム名「空から大人を見てみれば」
 大人を縛る「常識」を沢山蒐めて、望眺して、編み直してみよう!


 

 

企画者:織田茂
プロフィール:通信系企業に勤務。前46守および現46破で教室全員卒門・突破という師範・師範代・学衆仲間に恵まれた強運の持ち主。

 

<千夜千冊数寄3冊>
1)1403夜『世界史の誕生とイスラーム』宮崎正勝
2)1670夜『国語入試問題必勝法』清水義範
3)0435夜『フェルマーの最終定理』サイモン・シン

 

<概要と推しポイント>

 無響室で映像なきスクリーンの光とひたすら対峙する「映画断食」のシンシン。触感のオノマトペだけを頼りにメニューを注文する「オノマトペ食券機」のソワソワ。ピタゴラス音律を使って音楽と数学の相似性を解明する「ピタゴラス意ッ地」のムズムズ…。このミュージアムでは、心身に蓄積している様々な「常識」をくすぐり、ゆさぶり、なでまわす……なでまわす?そう、「常識」とは、明確な像を結ばぬ巨大な象だ。来館者は、まるで群盲が象をなでるかのごとく常識に触れ、常識にフラれて、新たな「常“織”」を編み直す。童心あふれる多様多彩な仕掛けを支えるのは、仏教の無常観。知識・認識ひっくるめ、「常ならざるシキ織り織り」を体感すべし。


執筆者:師範:新井陽大
画像作成者:師範代:高橋陽一

 


 

◆プラン:5 多項セラフィータ教室

ミュージアム名「ミュージアム”Road to Michi”」
 己の中にひそむ未知の風景を探す旅へ出発しよう。

 

 

 

企画者:岡山高明
プロフィール:今年3月退職し第二の人生(街づくりに関する仕事に取組むこと)を構想中。

 

<千夜千冊数寄3冊>
1)0042夜『方丈記』鴨長明
2)0075夜『茶の本』岡倉天心
3)0991夜『おくのほそ道』松尾芭蕉

 

<概要と推しポイント>

 ”Road to Michi”は生活の原風景を巡る旅を続けるクルーズ船にある。木製の学校椅子、柔道の青畳、ジミヘンのギターサウンド、これまで乗船した人々から集めたモノ。一見何の関係もないが「銀の匙」のように持ち主に自身の物語を目覚めさせるモノであり、物語とともにアーカイブすることで、初めて見る人にも懐かしい「見たことのある未知」となる。私たちは航海中、これらの「未知」を身の回りに置いて互いに語り合い、診・申・信の三人衆の導きで芭蕉のように旅に生きることを学ぶ。この体験で私たちの「心の故郷」や世界の見方は再編集されていく。やがて船は目的の港に着岸する。私たちは「来たことのある未知」に向かい、一歩を踏み出すのだ。


執筆者:師範:北原ひでお
画像作成者:師範代:戸田由香

 


 

◆プラン:6 ジャイアン対角線教室

ミュージアム名「東京イルマニア博物館」
 忽然と現れるオブジェを消せ――「何もない」をするミュージアム

 

Edited in Prisma app with Dallas

 

企画者:川上鼓太郎
プロフィール:破の稽古中に20歳になった46破最年少学衆&唯一の21世紀生まれ。母もかつて守破で学んだイシスの申し子。

 

<千夜千冊数寄3冊>
1)0179夜『スイミー』レオ・レオーニ
2)1547夜『ぼくがジョブズに教えたこと』ノーラン・ブッシュネル&ジーン・ストーン
3)0234夜『ボッコちゃん』星新一

 

<概要と推しポイント>

 都との境の埼玉・入間市。「何もない」と市民は口を揃える。周囲の市には全国区の施設があるが入間にはない。誇りも愛着もない。 その入間に東京イルマニア博物館が誕生した。入間市駅を降りたあなたは駅前にモノリスを見つける。刻まれたQRコードが入場券=アプリだ。あなたは入間を隈なく散策し20のモノリスを探す。見つけるとスマホ画面にはARオブジェ「東京の記憶」が現れる。狭山茶畑に浮く渋谷モヤイ像、出雲祝神社を飛ぶいけふくろう……。「反対語を10集めよ」画面に出る様々な指令をクリアすると東京の遺物=入間の異物は消え、モノリスは透明化し風景と混じる。眼前には手つかずの入間。何にでもなれる・できる余白をあなたは発見する。


執筆者:ジャイアン対角線教室師範代・角山祥道
画像作成者:ジャイアン対角線教室学衆・川上鼓太郎

 


 

◆プラン:7 ほろよい麒麟教室

ミュージアム名「めざめる自然ミュージアム」
 自然を敬い畏れるこころを育てる。未来を生きるきみたちへの贈物

 

 

企画者:山本昭子
プロフィール:母が名前を教えてくれた野草が自然好きの原点。動植物や風土に魅かれてボルネオの熱帯雨林やアイルランドの断崖、アフリカのサバンナを旅行した。井戸と小さなビオトープがある庭に囲まれた、太陽熱をそのまま取り込む《パッシブソーラーハウス》に住む。合気道参段。気象を学び、身体性から大気の循環まで幅広くインタースコアしてみたい。

 

<千夜千冊数寄3冊>
1)1499夜『生命の跳躍』ニック・レーン
2)1079夜『アフォーダンス』佐々木正人
3)1736夜『献灯使』多和田葉子

 

<概要と推しポイント>

 ここには「癒し」はない。あるのは自然の生身だ。舞台は郊外の廃校と裏山。歩けば背中にゾワリ、耳元にボソリ。「あのひとたち」の気配がする。古来、夕闇や水辺といったキワに棲んできた物の怪たち。彼らを音で、文で、絵で、モノで、皮膚で感じる時、離れていた「自然とわたし」がつながりだす。 依頼者は幼少期に遊んだ山川で「なにかいる」のを感じた。都内の小学校教師として定年を迎えた今、従来の自然教室では叶わなかった「子どもたちが自然への畏敬にめざめる場」づくりを、かつて親しんだ「あのひとたち」に託そうというのが本プランだ。 さあ、まずは懐中電灯を持って、こちらの教室からどうぞ。


執筆者:ほろきり茶屋亭主 尾島可奈子
画像作成者:ほろきり茶屋ばんとう 今野知

 


 

◆プラン:8 調音ウラカタ教室

ミュージアム名「動くトポシアター(アニメ・映画「ち」の貯蔵庫)」
 今こそ一緒に記憶し、考えよう。アニメ・地方・日本のこと。

 

 

 

企画者:がんちゃん(愛称)
プロフィール:IT企業のマーケティング職。好奇心と学びを止めないスプリンター。軽快な観察眼で周囲を笑顔に。ひたむきさに弱い一面も。

 

<千夜千冊数寄3冊>
1)0427夜『民藝四十年』柳宗悦
2)0545夜『知の考古学』ミシェル・フーコー
3)1171夜『デザインの世紀』原弘

 

<概要と推しポイント>

 スナック感覚で動画を口にする。スマホとネットは必需品。劇場はCGと立体音響が売り文句。そんな世代に、自分が魅了されてきたものの価値をどう伝え残していくか。子どもや若者の未来を後押ししたい。あるアニメ映画監督の想いが、ついに町へと飛び出した。 田園、駄菓子屋、露店、境内、夜の公園、夏休みの学校。場所と共にある思い出たちに、きっと物語の一場面は重なり合う。田舎町に散らばる、ふとしたトポスに触発されたアニメ・映画作品を30本、監督がセレクト。小さな映写機とスピーカーを仮設して上映する。そこにあるのは数人でいっぱいの映画体験だ。作品リストは地図アプリ上に残りつつも、土の匂いのする映像を味わいに来てほしい。


執筆者:調音ウラカタ教室 師範代:石輪洋平
画像作成者:調音ウラカタ教室 師範代:石輪洋平

 


 

◆プラン:9 ゆかりカウンター教室

ミュージアム名「言葉で遊ぶ・文字と遊ぶ・SUGI∞(スギナミ)に遊ぶ」
 郷に入っては郷に従え?いいえ、住む人こそが「郷」になるのです


 

企画者:玉村和子
プロフィール:人の話を聞きながら、相手も自分の幸せになる仕事

 

<千夜千冊数寄3冊>
1)1697夜『日本語はいかにつくられたか?』小池清治
2)0987夜『漢字の世界』白川静
3)0779夜『はじめちょろちょろなかぱっぱ』高柳蕗子

 

<概要と推しポイント>

 杉並区在住プランナーが、行政の大事な連絡や災害情報等が「伝わらない」問題を解決するために構想しました。将来的にめざすのは、さまざまな言語が自由に語られながら、互いに意思疎通ができ、いろんな言語や民族が自然に交じり合う、ボーダーレスな生活区「SUGI∞(スギナミ)」です。「郷に入っては郷に従え」ではなく、住む人こそが「郷」になる。一人ひとりが主人公になり、自分の母語を大切にできる。そんな将来ビジョンに向けて、まずは相互理解のしくみづくりに着手します。児童館・図書館での日本語習得プログラムや、人の関係性をつなぐホストファミリー制度の創設等、杉並区全体を舞台に展開する、街まるごとミュージアム構想です。


執筆者:師範:福田容子
画像作成者:師範代:後藤陽子

 


 

◆プラン:10 王冠切れ字教室

ミュージアム名「ニッポン吟醸蔵」
 「お金」の時代を総括せよ!バブル資本主義から「吟醸の蔵」へ

 

 

企画者:山下雅弘
プロフィール:大学職員、元地方紙記者

 

<千夜千冊数寄3冊>
1)0196夜『夜明け前』島崎藤村
2)0769夜『巨怪伝』佐野眞一
3)0779夜『はじめちょろちょろなかぱっぱ』高柳蕗子

 

<概要と推しポイント>

 バブル崩壊から30年。あの頃芽生えた金銭至上主義がはびこる社会は、もう終わりにしよう。岐阜県大垣市の酒造メーカーが自社の酒蔵をハイパーミュージアム「ニッポン醸造蔵」としてオープンする。日本酒造りの「一麹、二もと、三造り」に依った三部編成だ。

◆一麹:映像や双方向アートで、バブルと資本主義を知る

◆二もと:地図・年表・データベースのデジタルプレゼンテーションにより、格差・地域・言葉の各観点から時代と社会を鳥瞰する」

◆三造り:上質で質素で定常性のある「吟醸社会」を提案する

 澱めば腐敗、澄めば吟醸。同じ発酵でありながら何が明暗を分かつのか。日本酒醸造という本業の知見で「お金」の時代を総括する。


執筆者:師範:福田容子
画像作成者:学衆:今野あすか

 


▼投票はこちら

投票締め切り:2021年8月25日(水)24時


  • 原田淳子

    編集的先達:若桑みどり。姿勢が良すぎる、筋が通りすぎている破二代目学匠。優雅な音楽や舞台には恋慕を、高貴な文章や言葉に敬意を。かつて仕事で世にでる新刊すべてに目を通していた言語明晰な編集目利き。