【このエディションフェアがすごい!39】ジュンク堂書店岡島甲府店(山梨県甲府市)

2021/08/31(火)08:22
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 「このエディションフェアがすごい!」シリーズ、第33弾は山梨県のジュンク堂書店岡島甲府店フォトレポートを届けてくれるのは開催店舗の多い山梨県内の取材を一手に引き受けられたイシス編集学校師範代の内田文子さんです。

 

◇◇◇

 

甲府駅から南東に8分ほど歩いた先にある甲府の中心街。江戸時代は甲州街道の柳町宿と甲府勤番士の屋敷などがあり、現在も市役所や裁判所といった官公庁と銀行の本店と縦横に伸びる商店街で構成されている。エディションフェアでご紹介した柳正堂書店と朗月堂書店も、もとはこのエリアに本店をかまえ、切磋琢磨していたと聞く。甲府の中心街は知の中心街でもあったのだ。

 

「皆様の岡島百貨店」として地元住民に愛されている

 

岡島百貨店周辺は、碁盤の目のように張り巡らされた通りが広がり個性を演出している

 

「皆様の岡島」というキャッチコピーは、山梨にゆかりのある者なら誰でも耳にしたことがあるだろう。ジュンク堂が入る岡島百貨店は、甲府の中心街における商業の中心プレイヤーであり、現在は県内唯一のデパートである。

 

車社会において、江戸時代からつづく細い路地が連なる甲府の中心街は少々敷居が高い。それでも何かがあると期待して、甲府市民は中心街を訪れる。2011年に岡島百貨店6階にオープンしたジュンク堂書店岡島甲府店は、その期待に応えてくれるお店のひとつだ。

 

6階のほぼワンフロアに広がるジュンク堂書店。広さに圧倒される

 

フェアは、レジ横の特設コーナーで展開されている。松岡校長のファンが少なくないのか、記念冊子がさっそく売れたそうだ。

 

レジ横の特設スペースにエディションフェアが展開される。

向かいの通路には新刊やおすすめ本のコーナーが並ぶ

 

高木店長と人文芸術ご担当の古屋さんは、「エディション本はお客様がすでに持っていらっしゃるのかもしれない」と語られ、関連本の動きに注目される。

 

テキパキとした語り口が印象的な高木店長

 

人文芸術ご担当の古屋さん

 

おふたりからは「松岡さん、カッコいいですね~。アニメに出てきそう♪」というチャーミングなコメントもいただいた

 

地元資本の書店がそれぞれのアイディアで棚を個性的につくっていける自由を持つのに対し、ジュンク堂書店は山梨における本のデパートであり続けることを運命づけられている。山梨では圧倒的に広い面積を誇る大型書店といわれても、今日の出版点数からみたら面積も顧客もぜんぜん足りないのかもしれない。

 

多くの地元プレイヤーが去った後に山梨に来たジュンク堂書店は、重心があちこちに広がった山梨の知の中心を今日も守ってくれている。

 

文・写真:内田文子

 

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コメント

1~3件/3件

堀江純一

2025-06-20

石川淳といえば、同姓同名のマンガ家に、いしかわじゅん、という人がいますが、彼にはちょっとした笑い話があります。
ある時、いしかわ氏の口座に心当たりのない振り込みがあった。しばらくして出版社から連絡が…。
「文学者の石川淳先生の原稿料を、間違えて、いしかわ先生のところに振り込んでしまいました!!」
振り込み返してくれと言われてその通りにしたそうですが、「間違えた先がオレだったからよかったけど、反対だったらどうしてたんだろうね」と笑い話にされてました。(マンガ家いしかわじゅんについては「マンガのスコア」吾妻ひでお回、安彦良和回などをご参照のこと)

ところで石川淳と聞くと、本格的な大文豪といった感じで、なんとなく近寄りがたい気がしませんか。しかし意外に洒脱な文体はリーダビリティが高く、物語の運びもエンタメ心にあふれています。「山桜」は幕切れも鮮やかな幻想譚。「鷹」は愛煙家必読のマジックリアリズム。「前身」は石川淳に意外なギャグセンスがあることを知らしめる抱腹絶倒の爆笑譚。是非ご一読を。

川邊透

2025-06-17

私たちを取り巻く世界、私たちが感じる世界を相対化し、ふんわふわな気持ちにさせてくれるエピソード、楽しく拝聴しました。

虫に因むお話がたくさん出てきましたね。
イモムシが蛹~蝶に変態する瀬戸際の心象とはどういうものなのか、確かに、気になってしようがありません。
チョウや蚊のように、指先で味を感じられるようになったとしたら、私たちのグルメ生活はいったいどんな衣替えをするのでしょう。

虫たちの「カラダセンサー」のあれこれが少しでも気になった方には、ロンドン大学教授(感覚・行動生態学)ラース・チットカ著『ハチは心をもっている』がオススメです。
(カモノハシが圧力場、電場のようなものを感じているというお話がありましたが、)身近なハチたちが、あのコンパクトな体の中に隠し持っている、電場、地場、偏光等々を感じ取るしくみについて、科学的検証の苦労話などにもニンマリしつつ、遠く深く知ることができます。
で、タイトルが示すように、読み進むうちに、ハチにまつわるトンデモ話は感覚ワールド界隈に留まらず、私たちの「心」を相対化し、「意識」を優しく包み込んで無重力宇宙に置き去りにしてしまいます。
ぜひ、めくるめく昆虫沼の一端を覗き見してみてください。

おかわり旬感本
(6)『ハチは心をもっている』ラース・チットカ(著)今西康子(訳)みすず書房 2025

大沼友紀

2025-06-17

●記事の最後にコメントをすることは、尾学かもしれない。
●尻尾を持ったボードゲームコンポーネント(用具)といえば「表か裏か(ヘッズ・アンド・テイルズ:Heads And Tails)」を賭けるコイン投げ。
●自然に落ちている木の葉や実など放って、表裏2面の出方を決める。コイン投げのルーツてあり、サイコロのルーツでもある。
●古代ローマ時代、表がポンペイウス大王の横顔、裏が船のコインを用いていたことから「船か頭か(navia aut caput)」と呼ばれていた。……これ、Heads And Sailsでもいい?
●サイコロと船の関係は日本にもある。江戸時代に海運のお守りとして、造成した船の帆柱の下に船玉――サイコロを納めていた。
●すこしでも顕冥になるよう、尾学まがいのコメント初公開(航海)とまいります。お見知りおきを。
写真引用:
https://en.wikipedia.org/wiki/Coin_flipping#/media/File:Pompey_by_Nasidius.jpg