自らの体内から這い出したコマユバチの幼虫たちが作った繭の塊を抱きしめるシャクトリムシ。科学者は「ゾンビ化されて繭を守るよう操作されている」と解釈するけれど、これこそ「稜威」の極北の姿ではないだろうか。
松岡正剛いわく《読書はコラボレーション》。読書は著者との対話でもあり、読み手同士で読みを重ねあってもいい。これを具現化する新しい書評スタイル――1冊の本を3分割し、3人それぞれで読み解く「3× REVIEWS」。
歴史学者ユヴァル・ノア・ハラリの最新刊『NEXUS 情報の人類史』(河出書房新社)を読み解く2回目。今回はAI革命をテーマにした「下巻」に挑みます。ハラリは、AIに依存する現代社会の未来をどう予測しているのか。3人の読みを重ねます。
●●●『NEXUS 情報の人類史 下――AI革命』×3× REVIEWS
●1 AI監視社会ではない、別様の社会を想像する
第6章 新しいメンバー──コンピューターは印刷機とどう違うのか
第7章 執拗さ──常時オンのネットワーク
上巻の最後は「AIによるルール・ロール・ツールの変化」が語られた。では、AIの進化が、どのような社会を生み出すのか。
●2 アルゴリズムが自由を阻害する
第8章 可謬──コンピューターネットワークは間違うことが多い
第9章 民主社会──私たちは依然として話し合いを行なえるのか?
AIの脅威は、様々な既存システムを壊していくが、その力は、民主主義というシステムにさえおよぶ。
●3 「離見の見」で世界と自分を更新する
第10章 全体主義──あらゆる権力はアルゴリズムへ?
第11章 シリコンのカーテン──グローバルな帝国か、それともグローバルな分断か?
エピローグ
AIの登場が、歴史に転換点をもたらす。この先がどのような世界になるかは我々の選択次第だ。何が鍵を握るのか。
『NEXUS 情報の人類史 下――AI革命』
ユヴァル・ノア・ハラリ著/柴田裕之訳/河出書房新社/上下各2200円(税込み)◆下巻目次
第Ⅱ部 非有機的ネットワーク
第6章 新しいメンバー──コンピューターは印刷機とどう違うのか
連鎖の環/人間文明のオペレーティングシステムをハッキングする/これから何が起こるのか?/誰が責任を取るのか?/右も左も/技術決定論は無用第7章 執拗さ──常時オンのネットワーク
眠らない諜報員/皮下監視/プライバシーの終わり/監視は国家がするものとはかぎらない/社会信用システム/常時オン第8章 可謬──コンピューターネットワークは間違うことが多い
「いいね!」の独裁/企業は人のせいにする/アラインメント問題/ペーパークリップ・ナポレオン/コルシカ・コネクション/カント主義者のナチ党員/苦痛の計算方法/コンピューターの神話/新しい魔女狩り/コンピューターの偏見/新しい神々?第Ⅲ部 コンピューター政治
第9章 民主社会──私たちは依然として話し合いを行なえるのか?
民主主義の基本原則/民主主義のペース/保守派の自滅/人知を超えたもの/説明を受ける権利/急落の物語/デジタルアナーキー/人間の偽造を禁止する/民主制の未来第10章 全体主義──あらゆる権力はアルゴリズムへ?
ボットを投獄することはできない/アルゴリズムによる権力奪取/独裁者のジレンマ第11章 シリコンのカーテン──グローバルな帝国か、それともグローバルな分断か?
デジタル帝国の台頭/データ植民地主義/ウェブからコクーンへ/グローバルな心身の分断/コード戦争から「熱戦」へ/グローバルな絆/人間の選択エピローグ
最も賢い者の絶滅
■著者Profile
ユヴァル・ノア・ハラリ( Yuval Noah Harar)
1976年生まれ。イスラエルの歴史学者。ヘブライ大学歴史学部教授。石器時代から21世紀までの人類の歴史を概観する著書『サピエンス全史』(2011年)は、2014年に英訳、2016年に日本語訳されるなど、あわせて50か国以上で出版されベストセラーとなった。フェイスブックの創始者ザッカーバーグは、同書を「人類文明の壮大な歴史物語と評した。オバマやビル・ゲイツも同書の愛読者と言われる。巨大AIに関しては一貫して警鐘を鳴らし続けている。
●●●3× REVIEWS(三分割書評)を終えて
複雑な社会に生きていると、正解がわからず、つい何かにすがりたくなる時がある。法律、科学、尊敬する人の言葉など……今後はそれがAIなのかもしれない。だが私たちは、これからも何かひとつに正解を委ねてはいけないのだろう。安易な答えに走ってはならないのだ。「わたし」も社会も、自分たちの手で修正・更新し続ける決意と覚悟が必要とされている。(チーム渦・柳瀬浩之)
●●●『NEXUS 情報の人類史(上巻)』×3× REVIEWS はこちら
■■■これまでの3× REVIEWS■■■
前川清治『三枝博音と鎌倉アカデミア』×3×REVIEWS(勝手にアカデミア)
四方田犬彦編『鈴木清順エッセイコレクション』×3×REVIEWS(勝手にアカデミア)
エディストチーム渦edist-uzu
編集的先達:紀貫之。2023年初頭に立ち上がった少数精鋭のエディティングチーム。記事をとっかかりに渦中に身を投じ、イシスと社会とを繋げてウズウズにする。[チーム渦]の作業室の壁には「渦潮の底より光生れ来る」と掲げている。
編集稽古×合気道×唄&三味線――佐藤賢のISIS wave #70
イシスの学びは渦をおこし浪のうねりとなって人を変える、仕事を変える、日常を変える――。 新年初めての武術、音曲などの稽古を始めることを「稽古始(けいこはじめ)」「初稽古」といい、新年の季語にもなっています。 […]
ミメロギア思考で立ち上がる世界たち――外山雄太のISIS wave #69
イシス編集学校の[守][破][離]の講座で学び、編集道の奥へ奥へと進む外山雄太さんは、松岡正剛校長の語る「世界たち」の魅力に取り憑かれたと言います。その実践が、日本各地の祭りを巡る旅でした。 イシスの学びは […]
【書評】『熊になったわたし』×3×REVIEWS:熊はなぜ襲うのか
熊出没のニュースに揺れた2025年、年末恒例の“今年の漢字”もなんと、熊。そこで年内最後に取り上げるのは、仏のベストセラー・ノンフィクション『熊になったわたし――人類学者、シベリアで世界の狭間に生きる』です。推薦者はチー […]
ロジカルシンキングの外へ――竹廣克のISIS wave #68
曖昧さ、矛盾、くねくね、非効率……。どれもこれも、ビジネスシーンでは否定されがちです。それよりもロジカルに一直線。社会の最前線で闘ってきた竹廣克さんならなおさらのことです。 ところが、イシス編集学校の[守][破]で学んで […]
地域も祭りも「地と図」で編集――大倉秀千代のISIS wave #67
イシスの学びは渦をおこし浪のうねりとなって人を変える、仕事を変える、日常を変える――。 地域の中でリーダーとして長らく活躍してきた大倉秀千代さんは、一方で「このままのやり方を続けていていいのか」とモヤモヤし […]
コメント
1~3件/3件
2026-01-13
自らの体内から這い出したコマユバチの幼虫たちが作った繭の塊を抱きしめるシャクトリムシ。科学者は「ゾンビ化されて繭を守るよう操作されている」と解釈するけれど、これこそ「稜威」の極北の姿ではないだろうか。
2026-01-12
午年には馬の写真集を。根室半島の沖合に浮かぶ上陸禁止の無人島には馬だけが生息している。島での役割を終え、段階的に頭数を減らし、やがて絶えることが決定づけられている島の馬を15年にわたり撮り続けてきた美しく静かな一冊。
岡田敦『ユルリ島の馬』(青幻舎)
2026-01-12
比べてみれば堂々たる勇姿。愛媛県八幡浜産「富士柿」は、サイズも日本一だ。手のひらにたっぷり乗る重量級の富士柿は、さっぱりした甘味にとろっとした食感。白身魚と合わせてカルパッチョにすると格別に美味。見方を変えれば世界は無限だ。