かつて「大人マンガ」というジャンルがあった(詳しくは「マンガのスコア 園山俊二」参照)。この周辺には、ファインアートと踵を接する作家たちが数多く存在する。タイガー立石もその一人。1982年、工作舎から刊行された『虎の巻』は、まさしくオトナのためのマンガの最極北。いいお酒といっしょにちびちび味わいたい。
人間的なるものの源泉はすべて本の中にある、といったのは松岡正剛校長ですが、だとしたら私たちイシス編集学校の稽古の歩みは、「本のパサージュ」の中を進んでいるようなものなのかもしれません。
稽古の傍らにあった本、途中で貪り読んだ本、南を示してくれた本……今期を象徴する13冊の本を、2025年秋開講の[56守][55破][44期花伝所][遊・物語講座18綴]の41人の師範が、「マーキング」と「ヨミトキ」で声を奏であうコラボ企画をスタートします。
3月21日、22日に開催される第90回感門之盟のテーマ「読奏エディストリート」を体現する特別企画の第一回目は、セイゴオ流読書術を余すところなく伝えるこの本、『多読術』(ちくまプリマー新書)です。
本にはたくさんの「人の出入り」があるということで、そこを含めて本が好きになっていったんだと思います。(33ページ)
本や情報、人との出会いを楽しみたいという指導陣の想いから、56[守]では「別院:いとへん書店」がスタートした。読書は、交際だ。だから、私は本に、その時の気配や日付を書き込む。最初の一筆はためらうが、書いた瞬間から本は「私の編集の場」になる。中古本の線や書き込みに出会うと、なぜ、そこに線を引いた? というアブダクションが働く。擦り切れた私の『多読術』もまた、誰かの時間と場所をくぐり抜けてきた痕跡だと妄想する。本はテキスト単体では完結せず、読者同士、読者と著者のインタースコアを重ねながら、読むたびに意味を更新していく編集の場、そのものである。(稲森久純)
著者が送り手で、読者が受け手だと考えてはいけません。(95ページ)
編集稽古は読書である。著者と読者の相互コミュニケーションが読書であるとすると回答と指南、学衆と師範代という編集学校の仕組みと重ねることができる。著者松岡正剛が残したお題を、講座に関わる全員で共読しているとも言える。入れ子のような読書モデルになっているのである。ここに読書のヒントがある。お題に回答するように、また、回答に指南するように本を読んでみる。複数人集まって本から問いを立て回答してみたり、稽古した型や方法を通して読書したりすることで、著者から読者の一方通行にならない読書に向かうことができる。(森本康裕)
やはり誰かに薦められた本は読むべきです。その意味が十年後でもわからずとも、三十年後にわかろうとも。(145ページ)
リコメンド本には、それを薦める誰かの「命」をも宿しているかのようだ。おそらく最期までリコメンド本を手放すことはないだろう。若輩の私に向けた「謎かけ」がこの本に秘められている。何年先に「わかる」と言い得るかの保証はない。仮にほんの少し「わかる」が芽生えたとしても、今度はもっと不可解なことが浮上し、まして悩ましくなるかもしれない。じつはその著者自身がこのことに悩み、そのわからなさを機に執筆する場合が多いらしい。著者と読者が、伏せられた未知を拓きに出立する。主も客も綯い交ぜに、清沢満之のいう「二項同体」のままに世界を語る。『多読術』を薦めたブックショップエディターは著者と私を結ばせるキューピッドだった。(齋藤成憲)
ちくまプリマー新書/2009年4月刊/946円(税込)
■目次
第1章 多読・少読・広読・狭読
第2章 多様性を育てていく
第3章 読書の方法をさぐる
第4章 読書することは編集すること
第5章 自分に合った読書スタイル
第6章 キーブックを選ぶ
第7章 読書の未来
アイキャッチ、レイアウト/阿久津健(56[守]師範)
編集/新井陽大(55[破]評匠)、角山祥道(44[花]錬成師範)
【感門90】読奏エディストリート――師範が読む [バックナンバー]
#01『多読術』(稲森久純、森本康裕、齋藤成憲)
ISIS core project
イシス編集学校[当期師範&学林]チーム
「Pauca sed Matura」の言葉を背負い、守破離花遊の全指導陣が一挙集結する[ISIScore]。感門プランニング、エディットツアー運営、編集知のリバース・エンジニアリング、全てがここで交差する。知を組み立て、知を裏返し、知を書きなおしていく編集分子たちの風姿を垣間見よ。
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コメント
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