全員集合が事件だ!49[破]第2回伝習座

2022/11/29(火)00:08
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日本にちりばめられた師範代が本楼にむかって移動中、物語のようです。とは、11月26日(土)朝の白川雅敏師範の言葉である。セイゴオ知文術課題本『地球にちりばめられて』の多彩な登場人物たちが、いろんな国からアルルに大集合したことに準えている。13:00、ついに念願の49[破]全員集合が実現した。10人の師範代が北海道、栃木、長野、関西各地、首都圏各所からやってきた。師範、番匠、評匠、学匠も揃っている。それだけで何かを達成した気分になるくらい、久しぶりのことだった。

 

コロナ禍でリモート開催・リモート併用を余儀なくされつづけた伝習座は、すでに11回を数える。でもこれが本来なのだ。昼から夜まで、ブビンガの周りに集まって、新たな方法の束を受け取り、互いの表情を見ながら問感応答返を交わし続ける。横顔や後ろ姿、声と姿勢、服装とノート、お菓子に雑談、そんな超部分からも相互編集は起こっている。師範代がここまで約2カ月の手ごたえを語り、師範のアドバイスをもらう。野嶋真帆番匠による物語編集術のレクチャーが始まる頃に、松岡校長がゆったりと登場した。


「書く冒険と読む冒険のための物語編集術」と題した講義に、校長が折々「それはね」「もっというとね」と奥義を重ねる。物語編集術のためのワークや、プランニング編集術のためのディスカッションで、師範代と師範に番匠も評匠も入り混じって膝詰めでQ&Eする。いっときも休まず編集を回し続ける一日であった。すべてのプログラムを終えたあとの振り返りでは、自らぐんと遠いターゲットを設定しなおす師範代の発言がつづく。校長から個別にディレクションが飛ぶこともあり、まさに格別であって本来である伝習座となった。

 

校長からのアドバイスは、いつもタイムリーに世界とつながっている。サッカーW杯初戦で、大胆なメンバーチェンジによって金星をあげた日本代表にあやかって、「自分の中でメンバーチェンジせよ!」。師範代の自己イメージを一瞬で書き換えた。師範代たちは「たくさんの私」のオーダーを入れ替えて後半戦に臨むことだろう。伝習座で集まったお互いの面影もしっかりメンバー入りして待機している。

 

スチール写真:森本研二

 

  • 原田淳子

    編集的先達:若桑みどり。姿勢が良すぎる、筋が通りすぎている破二代目学匠。優雅な音楽や舞台には恋慕を、高貴な文章や言葉に敬意を。かつて仕事で世にでる新刊すべてに目を通していた言語明晰な編集目利き。

コメント

1~3件/3件

堀江純一

2025-06-20

石川淳といえば、同姓同名のマンガ家に、いしかわじゅん、という人がいますが、彼にはちょっとした笑い話があります。
ある時、いしかわ氏の口座に心当たりのない振り込みがあった。しばらくして出版社から連絡が…。
「文学者の石川淳先生の原稿料を、間違えて、いしかわ先生のところに振り込んでしまいました!!」
振り込み返してくれと言われてその通りにしたそうですが、「間違えた先がオレだったからよかったけど、反対だったらどうしてたんだろうね」と笑い話にされてました。(マンガ家いしかわじゅんについては「マンガのスコア」吾妻ひでお回、安彦良和回などをご参照のこと)

ところで石川淳と聞くと、本格的な大文豪といった感じで、なんとなく近寄りがたい気がしませんか。しかし意外に洒脱な文体はリーダビリティが高く、物語の運びもエンタメ心にあふれています。「山桜」は幕切れも鮮やかな幻想譚。「鷹」は愛煙家必読のマジックリアリズム。「前身」は石川淳に意外なギャグセンスがあることを知らしめる抱腹絶倒の爆笑譚。是非ご一読を。

川邊透

2025-06-17

私たちを取り巻く世界、私たちが感じる世界を相対化し、ふんわふわな気持ちにさせてくれるエピソード、楽しく拝聴しました。

虫に因むお話がたくさん出てきましたね。
イモムシが蛹~蝶に変態する瀬戸際の心象とはどういうものなのか、確かに、気になってしようがありません。
チョウや蚊のように、指先で味を感じられるようになったとしたら、私たちのグルメ生活はいったいどんな衣替えをするのでしょう。

虫たちの「カラダセンサー」のあれこれが少しでも気になった方には、ロンドン大学教授(感覚・行動生態学)ラース・チットカ著『ハチは心をもっている』がオススメです。
(カモノハシが圧力場、電場のようなものを感じているというお話がありましたが、)身近なハチたちが、あのコンパクトな体の中に隠し持っている、電場、地場、偏光等々を感じ取るしくみについて、科学的検証の苦労話などにもニンマリしつつ、遠く深く知ることができます。
で、タイトルが示すように、読み進むうちに、ハチにまつわるトンデモ話は感覚ワールド界隈に留まらず、私たちの「心」を相対化し、「意識」を優しく包み込んで無重力宇宙に置き去りにしてしまいます。
ぜひ、めくるめく昆虫沼の一端を覗き見してみてください。

おかわり旬感本
(6)『ハチは心をもっている』ラース・チットカ(著)今西康子(訳)みすず書房 2025

大沼友紀

2025-06-17

●記事の最後にコメントをすることは、尾学かもしれない。
●尻尾を持ったボードゲームコンポーネント(用具)といえば「表か裏か(ヘッズ・アンド・テイルズ:Heads And Tails)」を賭けるコイン投げ。
●自然に落ちている木の葉や実など放って、表裏2面の出方を決める。コイン投げのルーツてあり、サイコロのルーツでもある。
●古代ローマ時代、表がポンペイウス大王の横顔、裏が船のコインを用いていたことから「船か頭か(navia aut caput)」と呼ばれていた。……これ、Heads And Sailsでもいい?
●サイコロと船の関係は日本にもある。江戸時代に海運のお守りとして、造成した船の帆柱の下に船玉――サイコロを納めていた。
●すこしでも顕冥になるよう、尾学まがいのコメント初公開(航海)とまいります。お見知りおきを。
写真引用:
https://en.wikipedia.org/wiki/Coin_flipping#/media/File:Pompey_by_Nasidius.jpg