エディッツ – 遊刊エディスト:松岡正剛、編集工学、イシス編集学校に関するニューメディア https://edist.ne.jp Thu, 13 Apr 2023 12:46:34 +0000 ja hourly 1 https://wordpress.org/?v=6.8.1 https://edist.ne.jp/wp-content/uploads/2019/09/cropped-icon-512x512-32x32.png エディッツ – 遊刊エディスト:松岡正剛、編集工学、イシス編集学校に関するニューメディア https://edist.ne.jp 32 32 185116051 イドバタイムズ issue.19 「お題をつくる」を日常する。子どもプランニングフィールドメンバー募集中 https://edist.ne.jp/just/idobatimes19/ https://edist.ne.jp/just/idobatimes19/#respond Fri, 31 Mar 2023 23:19:50 +0000 https://edist.isis.ne.jp/?p=55456  松岡校長が語る情報の構造とお題づくりの核心

 第81回感門之盟・校長校話プログラムの後半、話題は編集稽古の「お題」がつくられたプロセスにむかった。
 野嶋真帆番匠が「人の認知のしくみを生かしたお題に驚いた」と語ると、松岡正剛校長から「情報には、席、人、モノ、場面(文脈)、時間、オブジェクト、位置がある。どれかを動かすと、情報の乗り換え、持ち替え、着替えが起こっていく」という構造の核心が明かされた。
 どこをどうフセて、アケるか。
 どこに「ワカルーカワル」のポイントを置くか。

 お題を受け取った人が、もうちょっとやってみてもいいかな、扉を開けてみようかなと思うには。

 そのためには、コンセプトからアプローチするよりも、普段はしてないことを解放する感覚のほうがいい。
 2000年のイシス編集学校開校前夜、守コースや破コースを作る前に、200から300のリアルな場で行うワークを作った過程で見えてきたことを次の世代に託すように松岡校長は語った。

 「お題をつくる」「お題を遊ぶ」ことを日常にする

 「お題をつくる」ことを日常にしているのが、子ども編集学校を準備している子どもプランニングフィールドである。
 校長校話は、編集かあさん、とうさんが、編集ワークショップ「エディッツの会」づくりやイドバタトークで見えてきたこと、目指したいこととぴったり重なっていた。
 フィールドでは、「子どもたちに出すお題をつくる」だけではなく、「子どもがつくったお題」を遊ぶことやそのモデルの交換も活動の柱としている。
 たとえば、編集かあさん家の長女(9歳)が3月の終わりに「今まで見たことがないけれど、見てみたいなって思うモノを言って」というお題を家族にだした。「テレビや写真で見たことのあるものや、今は見ることができない昔のものはのぞいて、考えてみて」というシバリをつけた。

 「ピラミッド? いやでも、写真で見たことある」
 「ベトナムのハノイがぱっと思い浮かんだけど、テレビで見た」
 「深海。うーん、でもこれもテレビでみたことあるかも」
 出題者の長女の答えは、「ほととぎす」だった。
 うっすら知ってるけど、見たことないものの筆頭だという。
 どうやってこの「お題」を思いついたのかを聞いてみる。朝、通学路で話題がないと辛いけど友だちは待つタイプで、「毎日がんばって話題を考えてる。今日はこれにしてみたの」ということだった。
 編集稽古は、きっと幼な心に埋め込まれている。

 


 

 

■子ども編集学校を作るフィールドメンバーを募っています!

 イシス子ども編集学校は、エディットカフェ内の2つのラウンジで、実践しながら構築途中です。

 

〇守コースを終えたら⇒イシス子どもフィールド(参加無料)

   ・編集ワーク・エディッツの会や千夜千冊共読会の情報をお届けします
   ・イドバタイジング(遊びと学びについてのイドバタトーク)できます

   ※随時参加歓迎。期限なし

 

〇破コースのプランニング編集術を実践したいなら⇒子どもプランニングフィールド(要参加費)

 

   ・お題開発をしています 
   ・ワークショップナビの実践と方法研鑽をしています
   ・メディア化しています

   ※半年ごとに募集しています。詳細は下記へ。

 

 

■「子どもプランニングフィールド2023春秋」概要

ラウンジオープン期間:4月18日(火)~9月中旬

募集対象:破コースのプランニング編集術を「子ども×編集」に生かしてみたい方

活動内容:◎季節ごとにワークショップ企画を行います。(エディッツの会ほか)
     ◎「子ども×編集」をテーマにした冊子を企画×編集します。【NEW!!】
     ◎4月29日(土)にリアル交流会開催予定! 【NEW!!】

参加費:6,600円/半年


◆申し込み(一次募集締切:4/14(金))

https://shop.eel.co.jp/products/detail/528
(プルダウンで「子どもフィールド」または「子どもプランニングフィールド」を選択ください。

 プランニングフィールドお申込みの場合は子どもフィールドにも併せて自動で登録となります。)

 

◆子ども編集学校プロジェクトサイト
 https://es.isis.ne.jp/news/project/2757

 フェイスブックページ
 https://www.facebook.com/kodomo.edit

 

◆お問合せ:kodomo@eel.co.jp

 



活動主体:イシス子ども支局
神尾美由紀、長島順子、景山卓也、上原悦子、得原藍、
浦澤美穂、吉野陽子、松井路代、石井梨香、野村英司
学林局長 佐々木千佳


文:松井路代
アイキャッチ画像作成:吉野陽子

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https://edist.ne.jp/just/idobatimes19/feed/ 0 55456
イドバタイムズ issue.18 3/26開催◆「春のエディッツの会」参加者募集!「たくさんのわたし」で遊ぼう。 https://edist.ne.jp/just/idobatimes18/ https://edist.ne.jp/just/idobatimes18/#respond Mon, 06 Mar 2023 23:10:44 +0000 https://edist.isis.ne.jp/?p=54344 新学期、新年度にむけてワクワクドキドキの、子どものみなさん。
4月に向けてちょっと緊張しているお父さん・お母さん。
守や破で学んだ編集を日常で生かしてみたいみなさん。

 

季節に合わせて、「こどももおとなも本気で遊ぶ」をコンセプトに開催してきたエディッツの会。

2023年春のテーマは、「たくさんのわたしで遊ぶ」です。


ホップ・ステップ・ジャンプ、の3つのお題に取り組むことで、様々な「わたし」が見えてきます。

新しい人間関係がスタートする前に、「わたし」を着替えて、楽しんでみませんか。

 


☆ 2023春のエディッツの会・開催要項 ☆

 

●日時:3月26日(日)
 10:00~11:30 ワークショップ
 11:30~12:00 おとなアフタートーク(希望者のみ)

 

*オンライン開催です。
(Zoomを使用します。大きな画面推奨。リンクは追ってお知らせします。)
*お子さんは画面の前にずっといなくても問題ありません。
 他の遊びをしたり、行ったり来たりしながら参加してください。

 

●参加費
 子どもプランニングフィールドの方:無料
 一般の方:1,100円

*どなたでもご参加いただけます。
 親子でのご参加も、大人のみでのご参加も歓迎です。

 

●ワークショップ内容

「イヤイヤはっぴょうかい」
嫌いなものってなあに?
取り出してみたら、ニガテ仲間が見つかるかも。

 

「ジブン・ロボ」
ピーマンをいつもよけてるキミは「ピーマン取り除きロボ」。
お風呂掃除を手伝ってるキミは「お風呂ピカピカ・ロボ」。
いつも教科書を探してるキミは「教科書とかくれんぼ・ロボ」。
キミはどんなロボット?

 

「3つのお守り」
これがあれば、どこへでもいける!
人生の旅に持っていく四次元リュックに入れるなら。

 

オンラインのナビゲーターがお題を出します。
紙に書いたり、マイクで話したり、チャットに書き込んだりして、ワークショップが進みます。ちょっと苦手なお題はパスしてオーケー!


 


~企画意図~
春は、コドモもオトナも出会いの季節です。
保育園で、幼稚園で、学校で、職場で、「はじめまして」を交し合います。

今回のエディッツは、春の「はじめまして」に、「お題遊び」で備えるというのが裏テーマです。
連想、見立て、三位一体などの「型」をつかって、「たくさんのわたし」を見いだしていれば、思わず緊張してしまう「はじめまして」の時間が、よりリラックスして楽しめる編集機会になると考えています。

メイン企画者である子ども支局メンバーも、家庭では「かあさん」「とうさん」、職場では「上司」「部下」、編集学校では「師範代」。はたまた、飲み会では「酔っ払い」という、たくさんの面を持っています。

子どもたちも、場によってきっといろいろな面を持っていると思います。
ワークを通じて、見えなかった顔がちらりと見えるかもしれません。

そして、今の「わたし」を「型」で見つけると、これからなりたい「わたし」も見えてきそう!

 

▶︎お申し込みは こちら からどうぞ。(3月22日〆切) 

 

文・上原悦子

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https://edist.ne.jp/just/idobatimes18/feed/ 0 54344
イドバタイムズ issue.16 すばしっこくて知恵者!? 1/8お正月エディッツの会 https://edist.ne.jp/post/idobatimes16/ https://edist.ne.jp/post/idobatimes16/#respond Fri, 23 Dec 2022 10:33:39 +0000 https://edist.isis.ne.jp/?p=51397 ◆2023年は卯年!「お正月エディッツの会」

 

 お正月エディッツは今年もオンライン開催。
 日本全国からおとなも子どももいっしょになって“編集あそび初め”ができる。「お題」で遊べばナビや仲間からのコメントが賑やかに飛び交い、「型」を通じてお正月を眺めれば地域や家庭ごとの「ちがい」や「おなじ」が見えてくる。

 いつもの「お正月」の姿がちょっと変わるチャンスだ。

 

 今度のお正月エディッツのテーマは2023年の干支「うさぎ」。
 昔話ならば「因幡の白兎」「かちかち山」「うさぎとかめ」。すばしっこくて知恵者。なのに少々残念な結末が多いのは農作物を食い荒らす害獣のイメージのせいだろうか。


 子どもたちもイメージしやすい身近な動物である「うさぎ」。一体どんな編集が披露されるのだろう。

 

 

◆「型」初めのお題はこちら

 

 今度の「お正月エディッツの会」にはこんなお題が用意されている。


◎ミニ編集ゲーム「卯年だよ!全員集合」

  家のなかからうさぎ「っぽい」ものを探してみよう!

 

◎みんなのお正月写真でオノマトペ

 「お正月」の写真から、みんなでオノマトペを取り出してみよう!

 

◎縁起物絵解き 新年の抱負を大編集

 お正月の縁起物の絵を見ながら、今年の抱負を掛け軸にしちゃおう!

 

 ナビ:石垣島在住の美術の先生、大濱朋子師範代

 

◎子ども俳句 VS おとな俳句

 今年のお正月に感じたことを俳句にしてみよう。

 

◆干支を意識するのはどんなとき?

 

 「お正月エディッツの会」の企画にあたり、子ども支局員と子どもプランニングフィールドのメンバーはそれぞれに「お正月の景色」を思い出し、持ち寄った。
 子ども時代、干支との最初の接点といえばお正月恒例の「年賀状」。
 今ほどパソコンやプリンタが普及していなかった時代、芋版や消しゴム判子、プリントゴッコなどのツールを駆使してオリジナルの意匠を凝らした人も多いだろう。
 年賀状の準備をするたびに「来年のエトってなぁに?」とか「ネーウシトラウーの次はなんだっけ?」という会話をしていたものだ。

 あの頃の父親には電話帳よりも分厚いような年賀状の束が届いていた。それが羨ましくて自分もせっせと友達への年賀状を書いては送っていた。
 現在の自分には残念ながらあれほど大量の年賀状はやってこない。義理の付き合いも紙媒体も多くは電脳世界に溶けていってしまったようだ。
 
 そんな世代ごとの「地」の違いも楽しみながら2023年のエディッツ初めを楽しみたい。

 

 

◆守破遊・受講中の方も歓迎

 

 エディッツの会は、実は家族に「編集ってこんなふうに日常の中で使えるものなんだよ」と編集を体験してもらう絶好の機会でもある。
 守破受講中の方や、身近な人に編集の魅力や活用法をうまく伝えられない方の参加も大歓迎。
 2023年を編集的にしたいならば、この機会を見逃す手はない。

 

 

<お正月エディッツの会2023・開催要項>

●日時
1月8日(日)10:00~11:30

*オンライン(Zoomを使用します。大きな画面推奨です)
*お子さんは画面の前にずっといなくても問題ありません。
 他の遊びをしたり、行ったり来たりしながら参加してください。


●参加費
子どもプランニングフィールドの方:無料
一般の方:1,100円

*お申し込みはこちらからどうぞ。
 1/5(木)〆切
*どなたでもご参加いただけます。
 親子でのご参加も、大人のみでのご参加も歓迎です。


●次第
10:00 
    集合
    ◎ミニ編集ゲーム「卯年だよ!全員集合」
    ◎みんなのお正月写真でオノマトペ
    ◎縁起物絵解き 新年の抱負を大編集

    ◎子ども俳句 VS おとな俳句
    
11:30
    解散
    アフタートーク(希望者のみ)


●企画・ナビ
子ども支局メンバー
(神尾美由紀、長島順子、景山卓也、上原悦子、得原藍、浦澤美穂、吉野陽子、松井路代、石井梨香、野村英司)

 

文:神尾美由紀

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https://edist.ne.jp/post/idobatimes16/feed/ 0 51397
イドバタイムズ issue.7  11人の優しいイシス人による「型り直し」 https://edist.ne.jp/post/idobatimes-7/ https://edist.ne.jp/post/idobatimes-7/#respond Tue, 29 Mar 2022 08:52:35 +0000 https://edist.isis.ne.jp/?p=39213

編集学校の方法を子どもたちのために外へつなぐ。
「イドバタイムズ」は子どもフィールドからイシスの方法を発信するメディアです。

 

学齢期の子を持つ親にとってゲームは常に悩みと共にある。子どもとゲームを編集的につなぐ方法を掴むことは、編集かあさん&とうさんの熱願だ。
昨秋、子どもフィールドで実施したアンケートでは、「編集ゲームづくりをやってみたい」と答えた人が60%に上った。「人気のゲームを編集用語でリバースエンジニアリングすることが、子ども編集学校の新しい編集的ゲームをつくる第一歩になるのでは」という野村英司の着想がきっかけとなり、2月、「子ども×編集×ゲーム」Eトークを開催した。呼びかけに応じた11名が好きなゲームを持ち寄り、そのおもしろさを編集用語で語り直し、実際に「人狼」に興じた。

 

●いまをKATARU

顔合わせからゲーム仕立てとした。カードゲーム『KATARUTA』を使って、まず編集という方法の起点に立つ。ルールは、みなが名乗るなり、ゲームマスター(佐々木千佳・学林局局長)が引いたカードに書かれた「とはいえ」「つまりは」で言を継いで、自身の関心を語っていく。


語りをゲームにする「KATARUTA」

 

トップバッターは神尾美由紀。今回の司会進行で花伝所錬成師範。《とはいえ》学衆側の学ぶ気持ちを忘れずにやっていきたい、と軽快にクリア。48守速習コース師範代の西村彗は、《いつもは》会社員だが、休日に学習塾で子どもたちと遊んでいる。前日には最後の学衆が卒門したばかり!と破顔一笑。放課後教室で見守りを続けている馬場朋子は、《思えば》編集学校への入門は20年前。編集稽古から遠ざかっていたが、子どもフィールドで再び縁を繋いだ――こんな具合に、戸惑いつつもカードがめくられると、みな方法の眼を起動して、偶然をわがものにしていった。これは編集稽古のたまものでもあろう。編集学校には、言葉ひとつを入れ替えて句意をガラリと変えたり、2人の作家の文章を混ぜて創文する稽古がある。すべてを情報とみて、編集可能と考えるスイッチが入るのかもしれない。終わってみると、『KATARUTA』は自己紹介を定番文脈から解放するツールになっていた。

 

●未来への型り直し

次は、好きなゲームを編集用語でリバースエンジニアリングする「型り直し」コーナー。方法を主語にして交わしていく。


トランプの「大富豪・大貧民」を挙げたのは堆奈緒。カードが札束に【見立て】られる、大富豪と大貧民の間がグラデーションになっていて勝負に白黒つかない、【ルール】が【IF-THEN】で分かれて【手続き】が多彩、等々。筆者もかつて熱中した「大富豪」だが、なんと方法に富んだゲームだったのかと見直した。堆が小学生の時は、クラスで流行しすぎて学校にトランプを持ってくるのが禁止になったという。編集力のあるゲームは、外側のルールまで動かしていく。司会の神尾が、大富豪から大貧民まで【ロール】がグラデーションになっているところは、ゲームの終わり方のパターンを考えるヒントになる、とコメント。編集用語でゲームを因数分解することでゲーム再編集のとっかかりがみえてきた気がした。



スクールカウンセラーの原田祥子にとって、「ジェンガ」は【BPT(ベース・プロフィール・ターゲット)】。ジェンガの【ターゲット】は「勝つ」ことだが、その過程で【段取り】が阻まれたりして【地と図】が変わる。▼浦澤美穂は「謎解き脱出ゲーム」をリバースエンジニアリング。街歩きと組み合わせた推理ゲームは、【注意のカーソル】や【フィルター】からこぼれるものの存在を気づかせる。▼将棋クラブの部長だった野村は、下級生のために将棋のルールを簡略化した。当時から学びを遊びにする編集っ子だった。将棋盤で戦艦ゲームもした。将棋の【アーキタイプ】は「戦争」だ。神尾は、将棋盤の方眼という【フォーマット】の可能性に目をつけた。▼馬場は「すごろく」のマスが物語編集の【トリガー】に似ていることを見出した。▼西村は「唯我独尊ゲーム」から【ないもの探し】【やわらかいダイヤモンド】【ミメロギア】+瞬発力、と型を連打。▼ビリヤード歴20年の北村彰規は、【道具(ツール)】の進化と【ルール】の変化が同期することを指摘。ビリヤードで複数の球を動かすのは【プランニング】であり、読み次第では【物語編集】となる。


「型り直し」によって、それぞれのゲームに埋めこまれた「型」が可視化され、新しいゲームを作る素材が集まりだした。

 

「話を聞いて、面白いゲームは時間をかけて上達すると感じた」と松井路代が言った。「私は良きトレーニングの場が持ててないと気づいた」。ゲームが苦手で全然分からないのに今回声を上げたのは、それでもゲームが気になるから、と。ところで、冒頭であげた親の悩みは、子どもがゲームに溺れることへの不安が発火点だ。ゲームへの苦手感覚や不安は、ゲームをやる側、消費者視点と言える。見方を変えれば、変化の激しい現代には、世界をつくる力こそ求められる。ゲームに仕掛けられた手続きを体得して方法の引き出しを豊かにしたり、ゲームをつくる側になることは、子どもフィールドのターゲットとしたいところだ。

 

●鬼と型のあいだに

型り直しに話を戻そう。小学生の息子は大のゲーム好きなのに自身はゲームが苦手な筆者・吉野は、鬼と混ざらないで済むという理由から「だるまさんがころんだ」を選んだ。鬼の【ロール】設定に焦点を当てた。日本では鬼は敗者の役回りのため、みな鬼になりたがらない。一方、海外(英語圏)では鬼がゲームマスターとなるため、鬼になることが目的となっている。ロールの設定によって、鬼の受け入れ方が変わる。
イシスな人々は鬼に目がない。一同しばし鬼を語る。

―鬼って何でいつも少数なんでしょうね…。
―鬼は裏切り者のメタファー? 裏切者が入ると、ゲームが盛り上がる。
―英雄伝説の型なら、裏切り者は目的の察知でしょうかね。本来の敵の存在に気付くという。
―起承転結の「転」かな。
―裏切り者は、両方の秘密・ルールを知るので、ゲームマスター(神)に近づく存在として疎まれるのでは!?

鬼≒裏切り者は編集的には何になるのだろう。

 

さて、この日一番のチャレンジとなったのは、全員参加の人狼ゲームだった。推理ゲームであり、テーブルトークRPGである。ゲームマスターから本人だけに分かるように配役が割り振られ、誰が人狼かを当てる。通常、ゲームは敵味方が目に見える形になっていることが多いが、人狼ゲームでは見えない情報を明らかにしていくところに目的がある。編集的に言えば【アケフセ】が柱になっている。
2チームに分かれ、ゲームに心得のある神尾と浦澤がゲームマスターに立つ。初体験者が多く、ルールを確認し直しながら探り探りの戦いとなった。終了すると、「だますのは難しい」「嘘をつかないといけないのはストレス」「ロールが気恥ずかしい」等の正直な感想が漏れた。メンバーたちの優しさがにじみ出ると同時に、RPGへの抵抗感があることが浮かびあがった。
RPGはロールプレイという型をもってゲームの世界に入る。だましたり嘘をつくことへの抵抗感は、ロール(役割)は理解しているものの、プレイ(演じる)に壁があるのではないだろうか。ゲームへの没頭を妨げるものがロールとプレイのあいだに潜んでいるとしたら、この谷間を探ってみたい。それがゲームをつくる側になるための宝の地図になるかもしれない。そうしたら、子どもたちが“鬼になりたがるゲーム”も作れるのではないか。鬼を演じる幽玄なゲーム。そんなフラジャイルなゲームができるかと思うとワクワクする。

 

 

 

4月、子どもフィールドに「プランニングフィールド」が誕生する。春夏期のプランニングは「子ども×編集×ゲーム」に決まった。編集稽古を踏まえて、チームでゲームについて考え、編集し、新しいゲームを作ってみる。ゲームでの一座建立を目指したい。
子どもフィールド&プランニングフィールドはイシス体験者なら誰でも参加OKの“プランニング開放区”となっている。気になったら、こちら へアクセスを!

編集かあさん&とうさんをはじめ、私塾をひらいている人、学童や放課後教室の見守りをしている人など、子どもの学びに関心がある人たちが待っている。

 

文:吉野陽子

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https://edist.ne.jp/post/idobatimes-7/feed/ 0 39213
イドバタイムズ issue.5 お雑煮を編む~お正月エディッツの会・複眼レポ https://edist.ne.jp/post/idobatimes-5/ https://edist.ne.jp/post/idobatimes-5/#respond Mon, 28 Feb 2022 23:29:49 +0000 https://edist.isis.ne.jp/?p=37468

編集学校の方法を子どもたちのために外へつなぐ。
「イドバタイムズ」は子どもフィールドからイシスの方法を発信するメディアです。

 

1月9日、子どもフィールド主催でオンラインイベント「お正月エディッツの会」を開催した。
テーマはお雑煮。イベントに先立ち、イシス内でお雑煮情報の募集を呼びかけると、全国各地域の特徴と家々に伝わるエピソードとともに22のお雑煮が投稿された。
当日は、親子からイシス未入門の大人まで21人が集った。

日本のお雑煮カルチャーを語り、遊んだ時間をフィールドメンバー4人の眼を通してレポートする。

 

 

    • PLAY 1 あけたのなあに?
      吉野陽子

 

 坊主頭がゆっくり昇ってきた。BGMに「とーしのはじめのためしーとてー」が聞こえてくる。「日の出とともに出てまいりました」とナビゲーターの野村英司(鏡面カレー教室・師範代)が登場した。

 

みんなびっくり「日の出登場」

 

 これから始まるのは「あけましておめでとう」ゲーム。みなさんは、「あけましておめでとう」で何があけたか考えたことはあるだろうか? 当然「年が明ける」のだが、もっと遊んでみたい。他に何かあけるものはないか?と子ども支局は考え、いろんなものをあけてみよう、という遊びに仕立てた。

 

 野村が手本をしめす。ケトルを出し、「ぱかっとあけて、じわ~と湯気が出て、しあわせな気分でおめでとう!」と言う。

 

 1)あけたいものを見せる
 2)あけた音をオノマトペにする
 3)その時の気分で「おめでとう!」と言う

 

 こんなルールを確認し、1分間でそれぞれあけたいものを探しにいった。

 

 子どもたちが選んだ「あける」もの。


名鉄電車の本を「びゅーーん」とあけておめでとう!(4歳男子)
オセロのボードを「かちっ」とあけておめでとう!(6歳男子)
財布を「ちっ」とあけて、いいきもち、おめでとう!(6歳女子)
ふでばこを「じゅじゅじゅっ」とあけておめでとう!(10歳女子)
ボールペン立てを「ぱかっ」とあけて、いろんないろのボールペンがでてきた、おめでとう!(4歳男子)
終了した歯列矯正のケースを「ぱかっ」とあけて、うれしい気持ち、おめでとう!(9歳男子)

 

 野村が子どもたちをフォローする。「どんな音?」「どんな気持ちになる?」
 表情の変化をとらえて「ちっ、かな?」「じゅじゅじゅ?」と声をかける。
 参加者にもっと遊んでもらおうと、編集ナビゲーターとして腕をふるう。

 

 大人も負けていない。


空っぽのお重を「ぱかっ」とあけて、おなかいっぱいおめでとう!
ワインを「かぽっ」とあけておめでとう!
思い出戸棚をあけて、次へ向かっておめでとう!
缶をあけていろとりどりなクッキー、おめでとう!
水筒を「ぱかっ」とあけて、なにげないしあわせをおめでとう!
オルゴールを「そーっ」とあけておめでとう!

 

 編集ゲームはいつもナビゲーターと参加者で作り上げていく。

 

 最後に、全員が揃ってそれぞれの音を出し、あけたいものをあけた。
 はじめは様子をうかがっていた人たちも徐々に場に引っ張られていき、「お正月エディッツ」が幕を開けた。

 

 

 

  • PLAY 2 集まれお雑煮! そして、動け!
    景山卓也

 

 今回のエディッツに先がけて、子どもフィールドの参加者から今年食べたお雑煮を募った。野村からナビゲーターを引き継いだ松井路代(おちこちアーモンド教室・師範代)が各家庭のお雑煮を写真とともに映し出した。

 「はまぐり出汁雑煮」「正月は味噌ではないのだよ雑煮」「広島で食べる佐賀寄り雑煮」。具、味、場所、お雑煮のどこに注目したかでお雑煮のネーミングは変わってくる。どれひとつとして同じお雑煮はない。今回のゲスト講師である野菜ソムリエ・若林牧子守番匠は「中身汁」(沖縄県)が気になったとのこと。なぜ中身なのか、なんとこのお雑煮に丸もちでも角もちでもなく、お餅自体がないのだ。
 参加者の投稿からお雑煮にはいろいろな味付けや作り方があることがわかった。ではお雑煮に何を入れてもいいのかといったらそうではない。そこにはお雑煮という「型」が動いているにちがいない。

 

集まった2022年のお雑煮

 

 次に映し出されたのは、投稿されたお雑煮を日本地図上にマッピングしたスライド。北海道から沖縄まで、地方ごとに色分けされた日本列島から、さきほどの各地のお雑煮の名前が引き出されている。バラバラだったお雑煮たちを日本地図の上で各地域ごとに分けると、学校でクラス替えをしたようにお雑煮という情報が動き出した。

 

<日本地図の一覧>

 

 さらに松井は「ふたつの軸をクロスさせて分類してみました」と続ける。【もちの形状(角もち・丸もち)】と【具の多さ(シンプル・具だくさん)】というタテとヨコの軸に分類した図解を示した。図解のなかの「○○雑煮」の分布には粗密があり「丸もち」や「具だくさん」のイラストの方は人気なのに「角もち」は人気がない。

 

<二軸四方型方>

 

 【具の多さ】の軸を【味つけ(みそ・すまし)】という軸に持ち替えてみると、「みそ」を使っていたのは大阪府と奈良県だけで「すまし」の家庭が多いことがわかった。もちの軸の中間には角もちでも丸もちでもない「ひきな餅」というもちが分布されていることも発見だった。
 二つの軸を掛け合わせてみることは編集学校の[守]ではおなじみの稽古である。材料や調理法が多様なお雑煮も分類してみることで、ちがいやあいだが見えてくる。松井は「この分類方はお雑煮以外のものを研究をするときにもオススメです」と子どもたちに方法を手渡した。

 

 

  • PLAY 3 お椀にぎゅぎゅっと詰めたのはなぜ?
    ~若林牧子守番匠のお雑煮講義~

    浦澤美穂

 

 朱塗りのお盆の上の汁椀・お茶碗・屠蘇器。木桶の中のたくさんの野菜。人参の赤と大根の白、葉物野菜の緑が鮮やかだ。
 若林番匠の「お雑煮講座」は、「お正月っぽい」テーブルコーディネートを背にして始まった。
 導入はなぜお正月にはお餅を食べる?というお話だ。

 

 

 お餅はお米でできている。そのお米のルーツを辿ると、田んぼ→イネ→お米の三間連結になる。そしてお米がご飯とお餅に二点分岐する。ご飯もお餅も田んぼから来た、神様から賜った大切な「ミノリ」なのだ。ゆえにお正月に飾る鏡餅は神様が寄り付く依代で、両側が細くなった柳箸は私達と神様が一緒に使ってごちそうを食べる。少し前のお正月、実は神様と過ごしていたということを子どもたちは新鮮な驚きで受け止めていた。

 

 

 続いてはお雑煮にいれる具の話に移る。「おうちのお雑煮には何が入っていた?」という質問に子どもも大人も楽しく答えた。若林はお雑煮によく入る野菜を木桶から取り出しながら、ひとつひとつその由来を説明する。たとえば菜っ葉は「名(な)をあげられるよう」里芋は「子だくさん」だ。そして野菜の切り方にも意味がある。輪切りは「丸く収めるように」、半月切りは「末広がり」と縁起を担いでいるのだという。
 お椀の蓋をパカッとあけると詰まっているもの、「お雑煮の編集方針」は、食べる人が幸せになりますようにという願いなのだ。

 

 おそらくまだ話のほとんどがわかっていない1歳の娘は、それでも画面の向こうに見入っていた。小さい頃、「自分の周りの大人」はみんなほぼ同じ属性を持った「なんとなく似た人たち」だった。でも「友達の友達」を6人たどると世界中の誰とでも繋がれるのだそうだ。おとうさん・おかあさんの知っている人の中は、自分のまったく知らない人がいる。知らなかった人に会って、初めての話を聞いて、世界が揺れ出す。ときにはそういう経験が必要なのかもしれない。

 

 若林の講義を「ぎゅぎゅっとつめて教えていただきました」と引き取った松井師範代は、お雑煮に入れるものは「だし・もち・具」にわけることができるとまとめた。ひとつひとつはほとんど重なっていないように見えるお雑煮の中身も、わけてみるとわかることがある。お雑煮には「型」があって、写真で見たたくさんのお雑煮も型にあてはめることができる。「お雑煮」の名前の由来は色々な具を似合わせた「煮雑ぜ(にまぜ)」だと講義のなかで解説があった。型に則って、煮合わせられていれば何をどれだけ入れてもいい。お雑煮の新たな可能性を感じながら、プログラムは次のワークへと移る。

 

 

  • PLAY 4 NEOお雑煮、誕生!
    ~マイお雑煮ワークショップ~

    上原悦子

 

 「マイお雑煮を作ってみましょう。」ナビゲーターの得原の声に合わせて、画面上に「おもち」「おだし」「ぐ」と書かれたシートが現れた。「おもち」「おだし」「ぐ」の3つの要素を自由に組み替えて、マイお雑煮を作ってみようという趣向だ。

 

お雑煮ワークシート

 

 マイお雑煮は、好きな食べものをミックスさせてもいいし、「おだし」を決めて「おもち」と「ぐ」を載せてもいい。お雑煮の「ネーミング」から考えてもいい。画面の前から遊びに出かけていた子どもたちも、少しずつ集まってくる。

 

 「ピアノお雑煮」。6歳の少女の回答に、支局の松井が驚いた。白いスープにオレオクッキーが入っているお雑煮だ。スープに浮かんでいるオレオクッキーが白と黒のコントラストを際立たせている。オレオの間に白が挟まっているところも、入れ子のようで面白い。
 「ozouni」というお雑煮も飛び出した。「もち」はきな粉餅、「だし」は豚骨ベース、「ぐ」はほうれん草と鶏肉とチャーシュー。「ラーメンみたい。海外でウケそうですね。」すかさず松井がフィードバックする。回答した9歳の少年はくすぐったそうな顔をした。

 

 

 大人からも、「ぞう」と「ウニ」が入っている雑煮や、菜の花が入っている「春の雑煮」など、<お正月に食べるもの>にとらわれない多様な雑煮が飛び出した。

 

 お雑煮は<お正月の食べもの>とは誰が決めたのだろう。「だし」を餡に変えればぜんざいになるし、名古屋名物の「味噌煮込みうどん(餅入り)」だって味噌ベースのお雑煮に、うどんが入っているだけだ。
 「ぐ」「あじ」「もち」の組み合わせを変える。雑煮の中には、まだまだ新たなバージョンが眠っていそうだ。
 雑煮がラーメンに次ぐnext和食になる日もそう遠くはないのかもしれない。

 

吉野
吉野
総合司会は、上原悦子(よりみちパンセ教室・師範代)さん。明るく凛然とした進行に、佐々木局長から「プロ!」の声があがりました。息子のごう君(4歳)がお母さんの言葉に続けて「どうぞ~」と重ねて呼びかけをお手伝い。「こだま司会」と大評判でした。
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