仮想教室名があるから自由になれる 43[花]

2025/06/11(水)08:08
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通りを歩けば紫陽花を見かける季節がやってきた。

土の酸性度によって色が変わるこの花は、現在進行形で変化を続ける入伝生の姿にも重なる。

 

6月になり錬成期間に入った入伝生は師範代になりきって指南を書きまくる日々を送っている。旅行の予定を変更して錬成にどっぷり浸る人、海外出張で飛び回りながら時差を乗り越え指南を書く人、仕事・子育て・花伝所の隙間を行き来する人。それぞれの場で地殻変動を起こしながら編集を続ける彼らを支えているのが、教室名だ。本番では教室名は授けられるものだが、花伝所はまだリハーサルの段階なので、仮の教室名を入伝生が自作して、その世界観を纏いながら指南を書く。今日は特別に29名の仮想教室名を披露しよう。

 


◆放浪に遊ぶ
 小径よりみち教室
 てくてく♪マンボ教室
 歩いてロケハン教室
 遊覧オデッセイ教室
 露草シフターズ教室

 

◆おいしく遊ぶ
 前回り受け身りんご教室
 砂漠にりんご教室
 刻々夏みかん教室
 泳げソーメン教室
 なると追加で教室
 夢見るグルメ猫教室

 

◆秘密基地で遊ぶ
 路地裏けんけんぱ教室
 新緑かくれんぼ教室
 スイスイ燕子花教室
 上燗ミラーボール教室
 マイナス二畳教室
 イマジナリー河川敷教室
 月に仏像教室
 くれない星キラキラ教室

 

◆コンセプトに遊ぶ
 電解トロール教室
 影観マーヒーヤ教室
 官能感応教室
 【侘・踊・縁】教室
 波羅蜜多るんるん教室
 ぽっとキワキワ教室
 ジャストFUN教室
 虚実デスティーノ教室
 ティンク・トング教室
 あふぉう傳トイシ教室


 

わかるようでわからない。一体どんなことが起きるのだろう?と想像が枝葉を伸ばす教室名ばかりだ。学びの場でありながら、思いっきり遊ぶことが示唆されている。もしも編集学校以外の人に「教室名をつけてみて」と頼んだとして、こんなユニークな教室名が並ぶだろうか。ISIS co-missionメンバーでDOMMUNEの主宰でもある宇川直宏さんは編集学校の教室名を見て「なんてナンセンスで面白いんだ」と絶賛していたほどだ。でも、これは、たまたまできた名前ではない。漢字、ひらがな、カタカナ、英語を使った絶妙でナンセンスな言葉の組合せを作り出せるのは、ネーミング編集術があってこそ。型があるから生み出せる自由な言葉の世界であり、言葉の方から編集を自由にするのだ。その型を模倣する入伝生の中には、きっと松岡正剛校長の編集ミームが継承されているのだろう。

 

アイキャッチ・文 林朝恵

 

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  • 林朝恵

    編集的先達:ウディ・アレン。「あいだ」と「らしさ」の相互編集の達人、くすぐりポイントを見つけるとニヤリと笑う。NYへ映画留学後、千人の外国人講師の人事に。花伝所の花目付、倶楽部撮家で撮影・編集とマルチロールで進行中。

コメント

1~3件/3件

堀江純一

2025-06-20

石川淳といえば、同姓同名のマンガ家に、いしかわじゅん、という人がいますが、彼にはちょっとした笑い話があります。
ある時、いしかわ氏の口座に心当たりのない振り込みがあった。しばらくして出版社から連絡が…。
「文学者の石川淳先生の原稿料を、間違えて、いしかわ先生のところに振り込んでしまいました!!」
振り込み返してくれと言われてその通りにしたそうですが、「間違えた先がオレだったからよかったけど、反対だったらどうしてたんだろうね」と笑い話にされてました。(マンガ家いしかわじゅんについては「マンガのスコア」吾妻ひでお回、安彦良和回などをご参照のこと)

ところで石川淳と聞くと、本格的な大文豪といった感じで、なんとなく近寄りがたい気がしませんか。しかし意外に洒脱な文体はリーダビリティが高く、物語の運びもエンタメ心にあふれています。「山桜」は幕切れも鮮やかな幻想譚。「鷹」は愛煙家必読のマジックリアリズム。「前身」は石川淳に意外なギャグセンスがあることを知らしめる抱腹絶倒の爆笑譚。是非ご一読を。

川邊透

2025-06-17

私たちを取り巻く世界、私たちが感じる世界を相対化し、ふんわふわな気持ちにさせてくれるエピソード、楽しく拝聴しました。

虫に因むお話がたくさん出てきましたね。
イモムシが蛹~蝶に変態する瀬戸際の心象とはどういうものなのか、確かに、気になってしようがありません。
チョウや蚊のように、指先で味を感じられるようになったとしたら、私たちのグルメ生活はいったいどんな衣替えをするのでしょう。

虫たちの「カラダセンサー」のあれこれが少しでも気になった方には、ロンドン大学教授(感覚・行動生態学)ラース・チットカ著『ハチは心をもっている』がオススメです。
(カモノハシが圧力場、電場のようなものを感じているというお話がありましたが、)身近なハチたちが、あのコンパクトな体の中に隠し持っている、電場、地場、偏光等々を感じ取るしくみについて、科学的検証の苦労話などにもニンマリしつつ、遠く深く知ることができます。
で、タイトルが示すように、読み進むうちに、ハチにまつわるトンデモ話は感覚ワールド界隈に留まらず、私たちの「心」を相対化し、「意識」を優しく包み込んで無重力宇宙に置き去りにしてしまいます。
ぜひ、めくるめく昆虫沼の一端を覗き見してみてください。

おかわり旬感本
(6)『ハチは心をもっている』ラース・チットカ(著)今西康子(訳)みすず書房 2025

大沼友紀

2025-06-17

●記事の最後にコメントをすることは、尾学かもしれない。
●尻尾を持ったボードゲームコンポーネント(用具)といえば「表か裏か(ヘッズ・アンド・テイルズ:Heads And Tails)」を賭けるコイン投げ。
●自然に落ちている木の葉や実など放って、表裏2面の出方を決める。コイン投げのルーツてあり、サイコロのルーツでもある。
●古代ローマ時代、表がポンペイウス大王の横顔、裏が船のコインを用いていたことから「船か頭か(navia aut caput)」と呼ばれていた。……これ、Heads And Sailsでもいい?
●サイコロと船の関係は日本にもある。江戸時代に海運のお守りとして、造成した船の帆柱の下に船玉――サイコロを納めていた。
●すこしでも顕冥になるよう、尾学まがいのコメント初公開(航海)とまいります。お見知りおきを。
写真引用:
https://en.wikipedia.org/wiki/Coin_flipping#/media/File:Pompey_by_Nasidius.jpg