週刊キンダイvol.002 ~4日間のリアル~

2025/05/23(金)20:43
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「来週の会議、リアルですか?」
 そんな会話が交わされるようになったのはコロナ以降のこと。かつて会議といえば“会議室に集まる”のが当たり前で、わざわざ「リアル」などと断る必要はなかった。
だが、Zoomなどでのオンライン会議が日常となった今、従来の「会って話す」スタイルがむしろ特別なものになっている。

 イシス編集学校は創立時より「会って話す」より「会わずに話す」から始まるインターネット学校だ。しかし、ソーシャルメディアネイティブの近大生にはあえて、そうじゃない方の稽古から始めた。
近大・東大阪キャンパスで、開講2日目から4日間のリアルサポートを実施した。初めての試みだ。

 

Day1 リアルサポート 始めます

「ビブリオシアター2階のACT-421でお待ちしています~」
 稽古Dayを終えた翌日、模造紙や付箋を用意して学林局の衣笠純子は近大生に呼びかけた。しかし来たのはたった1人。「編集力で差をつけろ」と書いたポスターが泣いているようだ。

 

「編集力で差をつけろ」とかっこいポスターが(写真は3日目の様子)

 

 編集相談はいつの間にか就活相談!思考のクセに気づくことは、編集力にも就活力にもよく効きます♪

 

Day2 編集の館 誕生!
 002番のお稽古が出題され6名が訪れた。大盛況!通常のお稽古は回答した後、師範代から指南が届くのに数時間かかる。しかし、ここはリアルサポート。回答を見ながらその場で回答を分析して、アドバイスをくれる。占い師さながらの編集カウンセラー★衣笠に行列ができた。

 

Day3 マーキング読書法に注目
 お笑いの構成作家や、企画に興味がある今日の2人はマーキング読書法に興味しんしん。

 

スマホ・PCと異なるツールで『マーキング読書法』閲覧中

 

 

松岡正剛「マーキング読書法」long ver.

 松岡校長は動画でこう述べている。

書物というものは、どうやってつきあっていくのか、それは人とおんなじなんですね。あるいは洋服、食べ物と同じです

 

 本を読んだり書いたりするのに編集は欠かせないが、書物も着物も食物も同じ!?生活のすべてに通じる編集力とは、社会で生きぬく力そのものなのだ。

 

Day4 エディットはいつでもリアル
 最終日は4人が訪れた。003番が出題されフィルターという型に近大生たちは「おもしろそう」「なんかつかえそう」とすこしずつ稽古のペースをつかんできたようだった。4日間のリアルサポートは終了。ここからはリアルな生活をしながらエディットカフェ上での稽古が続く。

 

私は、その何かによって〝保存〟され、何かによって〝関係〟を続行させている当体を、私の造語で〈エディトリアリティ〉(editoreality)とよんでいる。すなわち「編集的現実感」というものだ  『知の編集工学増補版』松岡正剛

 

 

 言葉を使って他者に見せる自分はいつだってリアル。6月の稽古Dayまでは、エディットカフェでたくさんのエディトリアリティに出会おう!

ビブリオシアター2階のACT-421

 

アイキャッチ/稲森久純(55[守]師範代)

文/一倉広美(55[守]師範)

 

週刊キンダイ 連載中!

週刊キンダイ vol.001 ~あの大学がついに「編集工学科」設立?~

 

  • イシス編集学校 [守]チーム

    編集学校の原風景であり稽古の原郷となる[守]。初めてイシス編集学校と出会う学衆と歩みつづける学匠、番匠、師範、ときどき師範代のチーム。鯉は竜になるか。

  • オンラインに広がる「珠玉の一滴」~55守創守座~

    第2回創守座の特徴は、なんと言っても学衆のオブザーブだ。指導陣が一堂に会する場を、半分、外に開いていくというこの仕組み。第1回の創守座が師範代に「なる」場だとすると、この回では師範代になることを「見せる」場にもなる。オ […]

  • 週刊キンダイ vol.006 ~編集ケイコが行く!~

    かつて「ケイコとマナブ」というスクール情報誌があった。習い事である”稽古”と資格取得にむけた”学び”がテーマごとに並んでおり、見ているだけで学んだ気分になれたものだ。  今や小学生の約3人に2人は習いごとをしているが、 […]

  • 教室運営の頂をめざす師範代の挑戦 ~55[守]創守座~

    「山の山頂、ピークの先にある見たこともない風景を、みんなで見たい」。6月7日に開催された55[守]「第2回創守座」で山派レオモード教室の田中志穂師範代が熱を込めて語った。  「創守座」はイシス編集学校で教室をあずかる師 […]

  • 週刊キンダイ vol.005 ~ ハンシがゆく ~

    乱世には理想に燃える漢が現れる。    55[守]近大番に強い味方が加わった。その名もハンシ。「伴志」と書く。江戸時代の藩を支えた武士のようであり、志高く新時代を切り開いた幕末の志士のようでもある。近大番が、 […]

  • 週刊キンダイ vol.004 ~近大はマグロだけじゃない!~

    マグロだけが、近大ではない。  「近大マグロ」といえば、全国のスーパーに並び、飲食店で看板メニューになるほどのブランド。知名度は圧倒的だ。その名を冠した近大生だけの「マグロワンダフル教室」が、のびのびと稽古に励むのもう […]

コメント

1~3件/3件

堀江純一

2025-06-20

石川淳といえば、同姓同名のマンガ家に、いしかわじゅん、という人がいますが、彼にはちょっとした笑い話があります。
ある時、いしかわ氏の口座に心当たりのない振り込みがあった。しばらくして出版社から連絡が…。
「文学者の石川淳先生の原稿料を、間違えて、いしかわ先生のところに振り込んでしまいました!!」
振り込み返してくれと言われてその通りにしたそうですが、「間違えた先がオレだったからよかったけど、反対だったらどうしてたんだろうね」と笑い話にされてました。(マンガ家いしかわじゅんについては「マンガのスコア」吾妻ひでお回、安彦良和回などをご参照のこと)

ところで石川淳と聞くと、本格的な大文豪といった感じで、なんとなく近寄りがたい気がしませんか。しかし意外に洒脱な文体はリーダビリティが高く、物語の運びもエンタメ心にあふれています。「山桜」は幕切れも鮮やかな幻想譚。「鷹」は愛煙家必読のマジックリアリズム。「前身」は石川淳に意外なギャグセンスがあることを知らしめる抱腹絶倒の爆笑譚。是非ご一読を。

川邊透

2025-06-17

私たちを取り巻く世界、私たちが感じる世界を相対化し、ふんわふわな気持ちにさせてくれるエピソード、楽しく拝聴しました。

虫に因むお話がたくさん出てきましたね。
イモムシが蛹~蝶に変態する瀬戸際の心象とはどういうものなのか、確かに、気になってしようがありません。
チョウや蚊のように、指先で味を感じられるようになったとしたら、私たちのグルメ生活はいったいどんな衣替えをするのでしょう。

虫たちの「カラダセンサー」のあれこれが少しでも気になった方には、ロンドン大学教授(感覚・行動生態学)ラース・チットカ著『ハチは心をもっている』がオススメです。
(カモノハシが圧力場、電場のようなものを感じているというお話がありましたが、)身近なハチたちが、あのコンパクトな体の中に隠し持っている、電場、地場、偏光等々を感じ取るしくみについて、科学的検証の苦労話などにもニンマリしつつ、遠く深く知ることができます。
で、タイトルが示すように、読み進むうちに、ハチにまつわるトンデモ話は感覚ワールド界隈に留まらず、私たちの「心」を相対化し、「意識」を優しく包み込んで無重力宇宙に置き去りにしてしまいます。
ぜひ、めくるめく昆虫沼の一端を覗き見してみてください。

おかわり旬感本
(6)『ハチは心をもっている』ラース・チットカ(著)今西康子(訳)みすず書房 2025

大沼友紀

2025-06-17

●記事の最後にコメントをすることは、尾学かもしれない。
●尻尾を持ったボードゲームコンポーネント(用具)といえば「表か裏か(ヘッズ・アンド・テイルズ:Heads And Tails)」を賭けるコイン投げ。
●自然に落ちている木の葉や実など放って、表裏2面の出方を決める。コイン投げのルーツてあり、サイコロのルーツでもある。
●古代ローマ時代、表がポンペイウス大王の横顔、裏が船のコインを用いていたことから「船か頭か(navia aut caput)」と呼ばれていた。……これ、Heads And Sailsでもいい?
●サイコロと船の関係は日本にもある。江戸時代に海運のお守りとして、造成した船の帆柱の下に船玉――サイコロを納めていた。
●すこしでも顕冥になるよう、尾学まがいのコメント初公開(航海)とまいります。お見知りおきを。
写真引用:
https://en.wikipedia.org/wiki/Coin_flipping#/media/File:Pompey_by_Nasidius.jpg