週刊キンダイ vol.003 ~マグロワンダフルって何?~

2025/05/28(水)12:00
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 日刊ゲンダイDIGITALに「本屋はワンダーランドだ!」というコラムがある。先日、イシス編集学校師範の植田フサ子が店主をする青熊書店が紹介された。活気ある商店街の横道にあるワンダーランド・青熊書店を見つけるとはお目が高い。


 

 週刊キンダイも負けてられない!編集がボーボーと湧き出るワンダーランドを紹介しよう。

前回紹介した「リアルサポート」だけではなく55[守]には初めての試みがもう一つある。「マグロワンダフル教室」だ。「学衆全員が近大生」というなんともワンダフルな教室である。

 

近大といえばマグロ、イナモリといえば魚
 近大が32年の歳月をかけて不可能と言われたクロマグロの完全養殖に成功したことは近大生なら誰もが知っているはず。しかし、教室名はこれだけが由来ではない。近大生をぐいぐい引っ張る稲森師範代はなんといっても魚を見るのも食べるのも釣るのも大好き。最近ハマっているのがマグロ釣りというのだからこの人に任せるしかない。”近大の取り組み”と”稲森師範代の数寄”が一種合成されたのがマグロワンダフル教室なのだ。

 

編集の型はいつでも動いている
 全員が学生ということは悩みも近い。就職活動やレポートに追われる学生、TVアニメの「チ。」にハマってる!という話など。そうしたことも編集稽古の中に取り込んで指南として返していく。

 

 就職活動に悩む学生には、

 企業ブランドを作ったりするのに、いろいろな発想や気づきが必要になります。企業自身で気がついてない強みの発掘には、注意のカーソルで切り替えましょう。気づきを得るには、視点の切り替えがとても重要なんです。

 

 そして、時には恋愛話もある。

「家族との思い出」《フィルター》を通して、取り出したものは、彼女さんも喜びそうですね。

 

 日常と稽古を分けずに、呼吸をするように型を使い続けて欲しい。稲森師範代の心意気が伝わる指南がシュッと飛んでくる。

 

飛び出せ!センス・オブ・ワンダー
 マグロは速いだけではなく長く泳ぐことでも知られている。15週間の編集稽古ははじまったばかり。クイックなコツをただ知るのではなく、15週間、型をつかい続けることで編集学校を知らない学生とは段違いの編集力が身についていくのだ。
 この教室にはセンス・オブ・ワンダーが潜んでいる。センス・オブ・ワンダーとは「神秘や不思議さに目を見はる感性」のことをいう。注意のカーソルを肌身離さず持ち歩き、ありえないフィルターを何枚も持ち出しながら使い込んでいくことで「目を見はる」体験がこの先に待っている。

 

マグロワンダフル教室のフライヤー

 

 松岡正剛校長が監修したビブリオシアターという編集的トポスを持つ大学の学生だからこそ、近大INDEXをベースにたくさんの編集力を装備していきながら社会に飛び出していってほしい。

 

がんばれ!近大生!


アイキャッチ/稲森久純(55[守]師範代)

文/一倉広美(55[守]師範)

 
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コメント

1~3件/3件

堀江純一

2025-06-20

石川淳といえば、同姓同名のマンガ家に、いしかわじゅん、という人がいますが、彼にはちょっとした笑い話があります。
ある時、いしかわ氏の口座に心当たりのない振り込みがあった。しばらくして出版社から連絡が…。
「文学者の石川淳先生の原稿料を、間違えて、いしかわ先生のところに振り込んでしまいました!!」
振り込み返してくれと言われてその通りにしたそうですが、「間違えた先がオレだったからよかったけど、反対だったらどうしてたんだろうね」と笑い話にされてました。(マンガ家いしかわじゅんについては「マンガのスコア」吾妻ひでお回、安彦良和回などをご参照のこと)

ところで石川淳と聞くと、本格的な大文豪といった感じで、なんとなく近寄りがたい気がしませんか。しかし意外に洒脱な文体はリーダビリティが高く、物語の運びもエンタメ心にあふれています。「山桜」は幕切れも鮮やかな幻想譚。「鷹」は愛煙家必読のマジックリアリズム。「前身」は石川淳に意外なギャグセンスがあることを知らしめる抱腹絶倒の爆笑譚。是非ご一読を。

川邊透

2025-06-17

私たちを取り巻く世界、私たちが感じる世界を相対化し、ふんわふわな気持ちにさせてくれるエピソード、楽しく拝聴しました。

虫に因むお話がたくさん出てきましたね。
イモムシが蛹~蝶に変態する瀬戸際の心象とはどういうものなのか、確かに、気になってしようがありません。
チョウや蚊のように、指先で味を感じられるようになったとしたら、私たちのグルメ生活はいったいどんな衣替えをするのでしょう。

虫たちの「カラダセンサー」のあれこれが少しでも気になった方には、ロンドン大学教授(感覚・行動生態学)ラース・チットカ著『ハチは心をもっている』がオススメです。
(カモノハシが圧力場、電場のようなものを感じているというお話がありましたが、)身近なハチたちが、あのコンパクトな体の中に隠し持っている、電場、地場、偏光等々を感じ取るしくみについて、科学的検証の苦労話などにもニンマリしつつ、遠く深く知ることができます。
で、タイトルが示すように、読み進むうちに、ハチにまつわるトンデモ話は感覚ワールド界隈に留まらず、私たちの「心」を相対化し、「意識」を優しく包み込んで無重力宇宙に置き去りにしてしまいます。
ぜひ、めくるめく昆虫沼の一端を覗き見してみてください。

おかわり旬感本
(6)『ハチは心をもっている』ラース・チットカ(著)今西康子(訳)みすず書房 2025

大沼友紀

2025-06-17

●記事の最後にコメントをすることは、尾学かもしれない。
●尻尾を持ったボードゲームコンポーネント(用具)といえば「表か裏か(ヘッズ・アンド・テイルズ:Heads And Tails)」を賭けるコイン投げ。
●自然に落ちている木の葉や実など放って、表裏2面の出方を決める。コイン投げのルーツてあり、サイコロのルーツでもある。
●古代ローマ時代、表がポンペイウス大王の横顔、裏が船のコインを用いていたことから「船か頭か(navia aut caput)」と呼ばれていた。……これ、Heads And Sailsでもいい?
●サイコロと船の関係は日本にもある。江戸時代に海運のお守りとして、造成した船の帆柱の下に船玉――サイコロを納めていた。
●すこしでも顕冥になるよう、尾学まがいのコメント初公開(航海)とまいります。お見知りおきを。
写真引用:
https://en.wikipedia.org/wiki/Coin_flipping#/media/File:Pompey_by_Nasidius.jpg