2012年10月、ノーベル生理学・医学賞を京都大学山中伸弥教授が受賞。体のあらゆる細胞になる能力を持つ人工多能性幹細胞(iPS細胞)が生命の進化を予感させ、時の話題となった頃、29[守]は開講した。
石原師範代は、当時なかでも冨澤陽一郎学匠に育てたいと思わせた“冨澤イチオシ師範代”のひとりだった。大学職員という職業イメージにぴったりな、実直で手堅いところをしっかり押さえていく指南がさえた。しかし、石原師範代はそれだけにはとどまらなかった。感門之盟でのファッションやスピーチに気を配り、師範代であることを自覚するなかで、穏やかさの奥に潜む“かっこよさ”を発揮する方向に、開花していったことが印象深い。
さらに[離]にすすむことで、その成長ぶりが一層際立った。無口で温厚なイメージを逸脱したその進化に、学林局メンバーは驚きを覚えたものだ。教室名に使われた「バーテン」と「六法」の一種合成のように、軟派と硬派をあわせもつイメージへと、石原師範代自身が近づいているのだろう。現在も、新聞に掲載される書評を製作するプロジェクトに、メンバーとして参加。16期花伝所で自らの師範だった浅羽登志也師範によるプロジェクト・リードのもと、日々かかんに編集に関わり続けている。