【参丞EEL便#015】エディストを読む① by 編工研スタッフ山本

2022/08/03(水)12:03
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  • 歴史を堀りさげると、現在に向き合うための見方やヒントがみえてくる。ウクライナ問題も、掘って掘って掘っていくと、紀元前1000年頃の「スキタイ騎馬文化」という歴象にまでたどり着く。

 

  • 情歴21を読む 佐藤優篇は、『歴史を決して他人事にするな』ということをバチバチと感じた回でした」と編工研スタッフ山本春奈は振り返る。山本は15離を受講している。「これまでの人生では想像もしなかった方法や速度や深度で歴史に向き合う」ことを日夜行いつ、EELでエディターやイベントの裏方(入社前は休日山ガールだった山本は、”お祭り”にワクワクするタイプのようだ)としても活躍している。「事前に佐藤さんからいただいた情歴資料から、このページではどの歴象にスポットが当たるだろう?と予測していたのですが、『スキタイ騎馬文化』『グラゴール文字発明』は全く予測できませんでした。上杉さんのエディスト速報記事で改めて詳細を振り返り、他の歴象との関係性や講義全体での位置づけを考えることができました。イベント中は裏方業務に必死で、中身を追いきれないことが多いですが、自分がリアルタイムに感じたり考えたりしたことが、エディストでの再編集記事に触れてまた広がったり深まったり、新たな気づきに結びついたりします。」
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山本が”歴史は他人事になり得ない”ということを一番最初に感じたのは、15歳のときだったという。「留学先のアメリカで仲良くなった中国人の女の子と一緒にダラダラ芝生に寝そべって日光を浴びていたときのことでした。何気ない会話の延長で、突然『で、例の戦争についてあなたはどう思ってるの?』と聞かれた時に、『来たな!』と思わず体が強ばりました。自分が覚束ない英語で何をどう答えたのかを明確には思い出せませんが、ぼんやりと抱いていた原爆や空襲などの『被害者としての戦争体験』の見方を、全く別の角度から見直さなければならなかった。照りつける西海岸の陽光と一緒にジリジリと記憶に残りました。」海外で自身や日本の歴史的現在性について考え込んだ経験があるスタッフは意外に多い。

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  • EELに入る前、山本は日本企業の海外展開や途上国の支援を行っていた。”歴史は見方によってかわる”ことを強く実感した体験がある。「当時スリランカに一年駐在していましたが、出張先のトリンコマリーで戦没者墓地を訪れたときは、言葉を失いました。インド洋の真珠と称されるほどに美しい海と生態系を誇る島に、かつて、自分の生まれ育った国が戦闘機を送り込み爆撃を仕掛けていた。その事実と、いま自分がそこで受け入れてもらって満たされた経験をしていることとが、簡単には接続しなくて、混乱したことを覚えています。英軍戦没者墓地にインド人やパキスタン人兵士のお墓があることも、実際に目の当たりにすると衝撃を受けました。戦争とは何か、植民地支配とは何を意味するのか、教科書のようなメディアでは知り得ないことを、歴史的な現実として身をもって実感した痛烈な体験でした。話は少し逸れますが、サンフランシスコ講和会議での日本をめぐる議論の中で、スリランカ代表のJ.R.ジャヤワルダナがブッダの言葉を引用してスピーチを行い、それが戦後日本の自立を大きく後押ししたということは、日本でももっと知られて欲しいなと思っています。そのとき引用されたブッダの言葉とは、”Hatred ceases not by hatred but by love” (人はただ愛によってのみ憎しみを越えられる。人は憎しみによっては憎しみを越えられない)というものでした。」

  • 山本がPJ進行をする『情歴21』電子化プロジェクトが、先日大きな節目を迎えた。「なんと、『情歴21』の歴象を全てデータ化するという、とてつもなく壮大で限りなく挑戦的な試みが、総勢32名の情歴電書団の手によって、計画通りに完了しました!!!これはとんでもないことです。この場をお借りして、情歴電書団のみなさまには心からの感謝と感嘆をお届けしたいです!『情歴21』の電子化は、ここからデザイン、校正、PDF化へと進行して参ります。みなさまのお手元に”検索可能な情歴”をお届けすべく、まだまだ頑張って参りますので、応援をどうぞよろしくお願いいたします。」「情歴21を読む」のイベントシリーズは、全6回開催し、次のフェーズを計画中である。

 

[編工研界隈の動向を届ける橋本参丞のEEL便]

//つづく//

 

  • 橋本英人

    函館の漁師の子どもとは思えない甘いマスクの持ち主。師範代時代の教室名「天然ドリーム」は橋本のタフな天然さとチャーミングな鈍感力を象徴している。編集工学研究所主任研究員。イシス編集学校参丞。

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