【エアサックス加藤の三度目の突破10】窓からミュージアムが見える?

2023/01/25(水)20:12
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スニーカーならエアマックス。NBAはエアジョーダン。ダイノジはエアギター。そしてイシスにはエアサックスと呼ばれる男がいる。

感門之盟で音楽を学ぶ卒門学衆としてフィーチャーされたものの、サックスの演奏が未熟だったため、校長から吹かないで持ってるだけにしてとディレクションされたことから、「エアサックス」の愛称がついた。49[破]学衆・ヤマネコでいく教室、加藤陽康。これは3度目の正直ならぬ3度目の突破にかける若者の4ヶ月に渡る編集稽古のドキュメントである。


 

 窓の外アマン 街はたそがれゆく
 二人には時間がとまるイシス

 

 石原裕次郎ばりにブラインドを下げて、外を覗き見るエアサックス加藤。果たして彼には、突破の先が見えたのか。前回、暗黒面から立ち直り、見事?物語AT賞のエントリーを果たした。晴々とした顔で豪徳寺に現れたエアサックスは、開口一番、もうプランニング始めてます!と得意げである。安田晶子師範代に導かれ、コースの力を信じ、締め切りに間に合わせたことが、加藤に自信を纏わせたのかもしれない。

 

 いよいよ、[破]最後のプログラムになるのが、プランニング編集術である。ハイパー・ミュージアムを構想する。ベースとなる千夜千冊の三夜、エアサックス加藤が選んだのは、1769夜デヴィッド・ルイス=ウィリアムズ『洞窟のなかの心』1657夜デービス・ベアード『物のかたちをした知識』、そして850夜の蕪村全句集である。

 

  • ミュージアムとしてはアイテムをリストのアイテムから洞窟壁画に仮に設定し、それを総覧することで交際知とその影に分け入っていきたい。また洞窟壁画は世界と人間のあいだの認知モデルをつくった。今回想定するハイパーミュージアムによって私たちが求めたいのは世界と人間とのあいだの新しい認知モデルだ、とする。影の中の交際というフレーズから愛の巣を連想し、窓に注意のカーソルが向かった。窓のミュージアムは面白そう。窓を打つ雨、窓の曇り、窓とカーテン、窓と借景、窓とPC、窓と乗り物、窓の開閉、窓と覗き魔…。
  •  
     些細なことでも小難しそうに書くのが、エアサックス加藤の真骨頂である。加藤が取り出したミュージアムのテーマは「窓」だった。
     「窓、いいじゃないか。ただし、窓をハイパーにしないといけない。書いていることは、まだまだ全然たいしたことがない」。編集天狗からの指示は、窓を徹底的にコンパイルすること、シソーラスを広げることである。そのためには[守]で学んだ38の型を徹底的に活用しなければならない。窓の要素・機能・属性、窓のオノマトペ、窓っぽいもの、窓のダンドリダントツ、窓の一種合成。その上で、コースの力に乗っていく必要がある。

 

編集天狗と対話するうちに次々に窓のシソーラスが広がっていくエアサックス加藤の窓ノート。編集の型を使って情報を引き出していることがメモの随所から伝わってくる。

 

 缶詰稽古に味をしめた加藤は、このあと立て続けに回答をアップした。プランニングいけます! 言葉が力強い。目指すはP1グランプリ出場である。いやもちろん、その前に突破である。突破締め切りは2/12。エアサックス加藤はこのまま順調に突破ロードを走破できるのか。次回、エアサックス、ハイパー苦闘編にご期待ください。

 


【エアサックス加藤の三度目の突破】バックナンバー

■【エアサックス加藤の三度目の突破10】窓からミュージアムが見える?

■【エアサックス加藤の三度目の突破09】ダース・カトウの再生はなったのか?

■【エアサックス加藤の三度目の突破08】嗚呼!エアサックス母子応援団

■【エアサックス加藤の三度目の突破07】波乗りエアサックスの慢心を諫める

■【エアサックス加藤の三度目の突破06】たくさんの天狗とたくさんのわたし

■【エアサックス加藤の三度目の突破05】歴史的快挙そして新たなる野望(本記事)

■【エアサックス加藤の三度目の突破04】守の型を使い尽くすべし

■【エアサックス加藤の三度目の突破03】心がわりの相手は君に決めた!

■【エアサックス加藤の三度目の突破02】インタビューは天狗さまに

【エアサックス加藤の三度目の突破01】編集天狗と突破を誓う!

  • エディスト編集部

    編集的先達:松岡正剛
    「あいだのコミュニケーター」松原朋子、「進化するMr.オネスティ」上杉公志、「職人肌のレモンガール」梅澤奈央、「レディ・フォト&スーパーマネジャー」後藤由加里、「国語するイシスの至宝」川野貴志、「天性のメディアスター」金宗代副編集長、「諧謔と変節の必殺仕掛人」吉村堅樹編集長。エディスト編集部七人組の顔ぶれ。

コメント

1~3件/3件

川邊透

2025-06-30

エディストの検索窓に「イモムシ」と打ってみたら、サムネイルにイモムシが登場しているこちらの記事に行き当たりました。
家庭菜園の野菜に引き寄せられてやって来る「マレビト」害虫たちとの攻防を、確かな観察眼で描いておられます。
せっかくなので登場しているイモムシたちの素性をご紹介しますと、アイキャッチ画像のサトイモにとまる「夜行列車」はセスジスズメ(スズメガ科)中齢幼虫、「少し枯れたナガイモの葉にそっくり」なのは、きっと、キイロスズメ(同科)の褐色型終齢幼虫です。
 
添付写真は、文中で目の敵にされているヨトウムシ(種名ヨトウガ(ヤガ科)の幼虫の俗称)ですが、エンドウ、ネギどころか、有毒のクンシラン(キョウチクトウ科)の分厚い葉をもりもり食べていて驚きました。なんと逞しいことでしょう。そして・・・ 何と可愛らしいことでしょう!
イモムシでもゴキブリでもヌスビトハギでもパンにはえた青カビでも何でもいいのですが、ヴィランなものたちのどれかに、一度、スマホレンズを向けてみてください。「この癪に触る生き物をなるべく魅力的に撮ってやろう」と企みながら。すると、不思議なことに、たちまち心の軸が傾き始めて、スキもキライも混沌としてしまいますよ。
 
エディスト・アーカイブは、未知のお宝が無限に眠る別銀河。ワードさばきひとつでお宝候補をプレゼンしてくれる検索窓は、エディスト界の「どこでもドア」的存在ですね。

堀江純一

2025-06-28

ものづくりにからめて、最近刊行されたマンガ作品を一つご紹介。
山本棗『透鏡の先、きみが笑った』(秋田書店)
この作品の中で語られるのは眼鏡職人と音楽家。ともに制作(ボイエーシス)にかかわる人々だ。制作には技術(テクネ―)が伴う。それは自分との対話であると同時に、外部との対話でもある。
お客様はわがままだ。どんな矢が飛んでくるかわからない。ほんの小さな一言が大きな打撃になることもある。
深く傷ついた人の心を結果的に救ったのは、同じく技術に裏打ちされた信念を持つ者のみが発せられる言葉だった。たとえ分野は違えども、テクネ―に信を置く者だけが通じ合える世界があるのだ。

山田細香

2025-06-22

 小学校に入ってすぐにレゴを買ってもらい、ハマった。手持ちのブロックを色や形ごとに袋分けすることから始まり、形をイメージしながら袋に手を入れ、ガラガラかき回しながらパーツを選んで組み立てる。完成したら夕方4時からNHKで放送される世界各国の風景映像の前にかざし、クルクル方向を変えて眺めてから壊す。バラバラになった部品をまた分ける。この繰り返しが楽しくてたまらなかった。
 ブロックはグリッドが決まっているので繊細な表現をするのは難しい。だからイメージしたモノをまず略図化する必要がある。近くから遠くから眺めてみて、作りたい形のアウトラインを決める。これが上手くいかないと、「らしさ」は浮かび上がってこない。