宮谷一彦といえば、超絶技巧の旗手として名を馳せた人だが、物語作家としては今ひとつ見くびられていたのではないか。
『とうきょう屠民エレジー』は、都会の片隅でひっそり生きている中年の悲哀を描き切り、とにかくシブイ。劇画の一つの到達点と言えるだろう。一読をおススメしたい(…ところだが、入手困難なのがちょっと残念)。

『日本問答』から三年。松岡正剛校長と田中優子先生の『江戸問答』(岩波新書)がついに刊行された。本は31ページ増え、1ミリ厚くなった。帯は1.7センチ高くなり、帯文字は横書きから縦書きになった。松岡校長は腕組みの時に左腕を上にすることは変わっていないようだが、本の眼力は一段とアップしている印象を受ける。一際目を引く今回の帯。過日の撮影現場の一幕を10shotでお届けします。
撮影は11月22日に法政大学で開催された「朝日教育会議2020」の直後に行われる。
終了後、控室に戻るとそこはすでに撮影スタジオになっていた。異世界の出現にスタッフ一同モードが一気に変わる。
今回の帯撮影はプロカメラマン川本聖哉さんが担当。撮影とともに演出も行う。
「視線はこちらに。意識だけを交差させるように」二人の表情と関係性を撮るべく気持ちを引き出すディレクションを重ねていく。
シャッターを押す度にストロボの音がボシュッと響き、強い光りで室内がほんの一瞬晴天になる。聴覚と視覚をもって川本さんの押すシャッターを体感。この空間は隅々までカメラマンが演出していることを思う。
画像は即時パソコンでチェック。出来上がりを確認しながら立ち位置や体の向きなど細かく調整していく。
立ったり座ったり。視線を合わせたり逸らしたり。数パターンを限られた時間内で次々と撮影。カメラマンの指示通りに動く役者二人。少しずつ呼吸が馴染み、先程のイベント時よりも和やかな雰囲気。
自分の目で見ている姿と、自分のファインダー越しに見えている被写体と、川本さんの写真に映る二人。全部があまりにも違うことに驚きが止まらない。「見えているものが真実だったら、こんなつまらないものはない」という十文字美信氏の言葉が頭をよぎる。
撮影から二ヶ月後、出来上がった帯はこちら。写真に吹き出しがつき、イメージが躍動的になっている。実は裏面にも仕掛けが施されているが詳しくはセイゴオちゃんねるでご覧頂きたい。そして現物を手に取って見て欲しい。
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後藤由加里
編集的先達:石内都
NARASIA、DONDENといったプロジェクト、イシスでは師範に感門司会と多岐に渡って活躍する編集プレイヤー。フレディー・マーキュリーを愛し、編集学校のグレタ・ガルボを目指す。倶楽部撮家として、ISIS編集学校Instagram(@isis_editschool)更新中!
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コメント
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2025-09-18
宮谷一彦といえば、超絶技巧の旗手として名を馳せた人だが、物語作家としては今ひとつ見くびられていたのではないか。
『とうきょう屠民エレジー』は、都会の片隅でひっそり生きている中年の悲哀を描き切り、とにかくシブイ。劇画の一つの到達点と言えるだろう。一読をおススメしたい(…ところだが、入手困難なのがちょっと残念)。
2025-09-16
「忌まわしさ」という文化的なベールの向こう側では、アーティスト顔負けの職人技をふるう蟲たちが、無垢なカーソルの訪れを待っていてくれる。
このゲホウグモには、別口の超能力もあるけれど、それはまたの機会に。
2025-09-09
空中戦で捉えた獲物(下)をメス(中)にプレゼントし、前脚二本だけで三匹分の重量を支えながら契りを交わすオドリバエのオス(上)。
豊かさをもたらす贈りものの母型は、私欲を満たすための釣り餌に少し似ている。