37[花] 花林頭・阿久津がゆく、アートとデザインのAIDA

2022/05/26(木)23:54
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モデルからモードへ渡る2週目に突入。稽古は式目演習だけにとどまらない。AIDAを住処としミディエーターを担う師範もまた、それぞれ闊達にその表象へと向かう。

デザイナーを生業とする、くれない道場・錬成師範の阿久津健は、花エディストのアイキャッチビジュアル制作を一手に引き受け、ヴァーヴァルからノンヴァーヴァルへメタメッセージを描出する。32[花]からはじまった花林頭(かりんとう)ロールに着替えれば、禅問答モードに肖り道場稽古を内外から揺らす。モードを変えるたびに多重視点がうまれ、ポリロールによって多様な編集的自己を体現する、旬の[花]らしいJustな一人である。

 

◆デザインワーク#1

プレワークの10夜タイトルから棟梁を貫く。ビジュアルイメージからアナロジカルな一種合成によって連想の先をデザインで示す。テキストからデザインへ、リテラルからモードへ往還し、象徴するツールの見立てからも影絵のようにターゲットが暗示される。

◆デザインワーク#2

方法日本といえば型、抜き型を擬いた大胆でモダンなモチーフの奥にも注目だ。藍色を背景に反物の寸法図もコラージュされている。テキストとテキスタイルの関係線も浮かびあがってくる。

 ”そもさん!”

「型は、なにを隠している?」

花林頭・阿久津によってM1(モデル)演習を終えたばかりの入伝生に渡された問いは、シンプルで深い。

一休さんと和尚が交わしたとされる、作麼生(ソモサンとよむ)・説破(セッパ)は禅道のスタイルである。リバースモードではぐくむ師弟関係は、方法日本には多数在る。

 ” せっぱ!”

からたち道場のハヤシは、その人の「らしさ」が型に表象されるのだと応じ、やまぶき道場のタカモトは「変化」と読んだ。既知とのズレや重なりをトリガーに変容力を託したのだろう。同じくやまぶき道場の二シムラは明治維新以前の日本人がもっていた「ミッシング・リンク(失われた環/鎖)」への接続だとテーゼする。

 

大いに編集思考を働かせ、共読が進みIF/THENの往来で再編集がかかると無意識のうちに多重視点がもたらされる。たくさんのわたし状態が、意識の自己を解放していく。外部モデルから自身の内部に取り込んだ情報によって、モードが創出される。

 

アート(ART)の語源がアルス(ARS)だと、編集学校に携わるものなら知るところだ。アルスとは技巧であり、方法使いの術ともいえる。

学衆から入伝生を経て師範代に成る、わずか7週間のメタモルフォーゼは急進的で深い。師範阿久津から放たれる「応」もまた技巧である。魔術のように次々と入伝生の執着に火をつける。

 

文 平野しのぶ(錬成師範)

アイキャッチデザイン・写真 阿久津健(錬成師範)

 

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コメント

1~3件/3件

川邊透

2025-06-30

エディストの検索窓に「イモムシ」と打ってみたら、サムネイルにイモムシが登場しているこちらの記事に行き当たりました。
家庭菜園の野菜に引き寄せられてやって来る「マレビト」害虫たちとの攻防を、確かな観察眼で描いておられます。
せっかくなので登場しているイモムシたちの素性をご紹介しますと、アイキャッチ画像のサトイモにとまる「夜行列車」はセスジスズメ(スズメガ科)中齢幼虫、「少し枯れたナガイモの葉にそっくり」なのは、きっと、キイロスズメ(同科)の褐色型終齢幼虫です。
 
添付写真は、文中で目の敵にされているヨトウムシ(種名ヨトウガ(ヤガ科)の幼虫の俗称)ですが、エンドウ、ネギどころか、有毒のクンシラン(キョウチクトウ科)の分厚い葉をもりもり食べていて驚きました。なんと逞しいことでしょう。そして・・・ 何と可愛らしいことでしょう!
イモムシでもゴキブリでもヌスビトハギでもパンにはえた青カビでも何でもいいのですが、ヴィランなものたちのどれかに、一度、スマホレンズを向けてみてください。「この癪に触る生き物をなるべく魅力的に撮ってやろう」と企みながら。すると、不思議なことに、たちまち心の軸が傾き始めて、スキもキライも混沌としてしまいますよ。
 
エディスト・アーカイブは、未知のお宝が無限に眠る別銀河。ワードさばきひとつでお宝候補をプレゼンしてくれる検索窓は、エディスト界の「どこでもドア」的存在ですね。

堀江純一

2025-06-28

ものづくりにからめて、最近刊行されたマンガ作品を一つご紹介。
山本棗『透鏡の先、きみが笑った』(秋田書店)
この作品の中で語られるのは眼鏡職人と音楽家。ともに制作(ボイエーシス)にかかわる人々だ。制作には技術(テクネ―)が伴う。それは自分との対話であると同時に、外部との対話でもある。
お客様はわがままだ。どんな矢が飛んでくるかわからない。ほんの小さな一言が大きな打撃になることもある。
深く傷ついた人の心を結果的に救ったのは、同じく技術に裏打ちされた信念を持つ者のみが発せられる言葉だった。たとえ分野は違えども、テクネ―に信を置く者だけが通じ合える世界があるのだ。

山田細香

2025-06-22

 小学校に入ってすぐにレゴを買ってもらい、ハマった。手持ちのブロックを色や形ごとに袋分けすることから始まり、形をイメージしながら袋に手を入れ、ガラガラかき回しながらパーツを選んで組み立てる。完成したら夕方4時からNHKで放送される世界各国の風景映像の前にかざし、クルクル方向を変えて眺めてから壊す。バラバラになった部品をまた分ける。この繰り返しが楽しくてたまらなかった。
 ブロックはグリッドが決まっているので繊細な表現をするのは難しい。だからイメージしたモノをまず略図化する必要がある。近くから遠くから眺めてみて、作りたい形のアウトラインを決める。これが上手くいかないと、「らしさ」は浮かび上がってこない。