『キャラ者』は、”マンガ家”だった頃の江口寿史の、(まとまった作品としては)ほぼ最後の仕事。恐るべきクオリティの高さで、この才能が封印されてしまったのはもったいない。
「来年こそはマンガ家に戻ります!」と言ったのは、2016年の本の帯(『江口寿史KING OF POP SideB』)。そろそろ「来年」が来てもいいだろう。

分かりやすさを遠ざけることは容易ではない。半知半解も、心地のよいものではないだろう。方法日本の核心に向かい編集臨戦態勢へといざなうのが、ここ花伝所である。入伝生は先達のふるまいをイメージメントの糧にして、手さぐりのまま師範代というモデルへ向かう。
モンテーニュの一節も なるほどとなりました。 「懐疑や疑念をもつことは、それが晴れるまでの時間をすべて引き受けるということ」 むらさき道場 A.K.
見えていることも見えてないことにも“知覚の全面開花”で臨むこと。道場開きの前夜、本楼の劇場空間から38[花]一座に放たれた、校長口伝のメタメッセージである。それぞれの蝕知感覚を呼び醒ましながら、記憶の前景へと個から類へと継承の歴史を想起させながら、朧げで半生な自身にひそんでいる母語のおおもとを擦過してゆく。
変化すればいいというものではなく、その根底にある考え方や方法には普遍的なものもある。それは継承して行く事として、その適用性を変化で得るともいえるだろう。 くれない道場 Y.T.
式目演習の初発は「型」。模倣と共読によって、教えるモデルと学ぶモデルを往来し相互互換システムを擬えながら道場演習は進む。継承は方法である。多くの伝統芸能や伝承工芸がそうであるように、受け手の「感」は見所と客間のあいだでうごき、ときに間髪なしの相槌によって更新されモデル化されていく。花目付の深谷もと佳は継承は遅延すると説いた。そのために、道場には礼節と技巧が注がれる。
自分の中に「ふせられている」ものが、相互編集や宴という場で「あく」。…異質を取り込み、変容を恐れないこと やまぶき道場 M.Y
「わからない」をそのままに、生まれる問いが共同知を宿す。思考と知覚のアイダでエディティングモデルの存在が明らかにされていく。対話とフィードバック・ループによって自他の境界は薄れ自己が消失されるのだろう。ためらいの中で覚悟が決まっていく。心の疼きは自らを変容へと向かわせる。
「生物は情報変換体」というとらえかたもあるので、編集は情報変換そのものではないか、という気がしております。 わかくさ道場 T. T.
たくさんのわたしは生物である。生命進化の過程で機能を更新するたび半分以上の既知を捨てて現在に至っている。19世紀のヨーロッパを生きたベンヤミンによれば、パリのパッサージュとは遊歩者が街の記憶の断片を拾い集める場所であった。写真や映画などの新しい芸術を単なる「複製」をこえた意味の再生産だと定義づけている。見えないものを掴むメタホドス。集団の夢は無意識から何を浮上させるだろうか。偶然性を迎え入れながら、本来から将来へと編集パッサージュは「型」に始まっている。
文・平野しのぶ
アイキャッチ・阿久津健
【第38期[ISIS花伝所]関連記事】
38[花]膜が開く。四色の道場
松岡校長メッセージ「イシスが『稽古』である理由」【38[花]入伝式】
イシス編集学校 [花伝]チーム
編集的先達:世阿弥。花伝所の指導陣は更新し続ける編集的挑戦者。方法日本をベースに「師範代(編集コーチ)になる」へと入伝生を導く。指導はすこぶる手厚く、行きつ戻りつ重層的に編集をかけ合う。さしかかりすべては花伝の奥義となる。所長、花目付、花伝師範、錬成師範で構成されるコレクティブブレインのチーム。
【書評】『アナーキスト人類学のための断章』×4× REVIEWS 花伝所 Special
松岡正剛いわく《読書はコラボレーション》。読書は著者との対話でもあり、読み手同士で読みを重ねあってもいい。これを具現化する新しい書評スタイル――1冊の本を数名で分割し、それぞれで読み解くシリーズです。今回は、9月に行われ […]
3000を超える記事の中から、イシス編集学校の目利きである当期の師範が「宝物」を発掘し、みなさんにお届けする過去記事レビュー。今回は、編集学校の根幹をなす方法「アナロジー」で発掘! この秋[離]に進む、4人の花伝錬成師 […]
纏うものが変われば、見るものも変わる。師範を纏うと、何がみえるのか。43[花]で今期初めて師範をつとめた、錬成師範・新坂彩子の編集道を、37[花]同期でもある錬成師範・中村裕美が探る。 ――なぜイシス編集学 […]
おにぎりも、お茶漬けも、たらこスパゲッティーも、海苔を添えると美味しくなる。焼き海苔なら色鮮やかにして香りがたつ。感門表授与での師範代メッセージで、55[守]ヤキノリ微塵教室の辻志穂師範代は、卒門を越えた学衆たちにこう問 […]
ここはやっぱり自分の原点のひとつだな。 2024年の秋、イシス編集学校25周年の感門之盟を言祝ぐ「番期同門祭」で司会を務めた久野美奈子は、改めて、そのことを反芻していた。編集の仲間たちとの再会が、編集学校が自分の核で […]
コメント
1~3件/3件
2025-10-15
『キャラ者』は、”マンガ家”だった頃の江口寿史の、(まとまった作品としては)ほぼ最後の仕事。恐るべきクオリティの高さで、この才能が封印されてしまったのはもったいない。
「来年こそはマンガ家に戻ります!」と言ったのは、2016年の本の帯(『江口寿史KING OF POP SideB』)。そろそろ「来年」が来てもいいだろう。
2025-10-14
ホオズキカメムシにとってのホオズキは美味しいジュースが吸える楽園であり、ホオズキにとってのホオズキカメムシは血を横取りする敵対者。生きものたちは自他の実体など与り知らず、意味の世界で共鳴し続けている。
2025-10-07
「ピキッ」という微かな音とともに蛹に一筋の亀裂が入り、虫の命の完結編が開幕する。
美味しい葉っぱをもりもり食べていた自分を置き去りにして天空に舞い上がり、自由自在に飛び回る蝶の“初心”って、いったい…。