草むらで翅を響かせるマツムシ。東京都日野市にて。
「チン・チロリン」の虫の音は、「当日は私たちのことにも触れてくださいね」との呼びかけにも聴こえるし、「もうすぐ締め切り!」とのアラートにも聞こえてくる。

分かりやすさを遠ざけることは容易ではない。半知半解も、心地のよいものではないだろう。方法日本の核心に向かい編集臨戦態勢へといざなうのが、ここ花伝所である。入伝生は先達のふるまいをイメージメントの糧にして、手さぐりのまま師範代というモデルへ向かう。
モンテーニュの一節も なるほどとなりました。 「懐疑や疑念をもつことは、それが晴れるまでの時間をすべて引き受けるということ」 むらさき道場 A.K.
見えていることも見えてないことにも“知覚の全面開花”で臨むこと。道場開きの前夜、本楼の劇場空間から38[花]一座に放たれた、校長口伝のメタメッセージである。それぞれの蝕知感覚を呼び醒ましながら、記憶の前景へと個から類へと継承の歴史を想起させながら、朧げで半生な自身にひそんでいる母語のおおもとを擦過してゆく。
変化すればいいというものではなく、その根底にある考え方や方法には普遍的なものもある。それは継承して行く事として、その適用性を変化で得るともいえるだろう。 くれない道場 Y.T.
式目演習の初発は「型」。模倣と共読によって、教えるモデルと学ぶモデルを往来し相互互換システムを擬えながら道場演習は進む。継承は方法である。多くの伝統芸能や伝承工芸がそうであるように、受け手の「感」は見所と客間のあいだでうごき、ときに間髪なしの相槌によって更新されモデル化されていく。花目付の深谷もと佳は継承は遅延すると説いた。そのために、道場には礼節と技巧が注がれる。
自分の中に「ふせられている」ものが、相互編集や宴という場で「あく」。…異質を取り込み、変容を恐れないこと やまぶき道場 M.Y
「わからない」をそのままに、生まれる問いが共同知を宿す。思考と知覚のアイダでエディティングモデルの存在が明らかにされていく。対話とフィードバック・ループによって自他の境界は薄れ自己が消失されるのだろう。ためらいの中で覚悟が決まっていく。心の疼きは自らを変容へと向かわせる。
「生物は情報変換体」というとらえかたもあるので、編集は情報変換そのものではないか、という気がしております。 わかくさ道場 T. T.
たくさんのわたしは生物である。生命進化の過程で機能を更新するたび半分以上の既知を捨てて現在に至っている。19世紀のヨーロッパを生きたベンヤミンによれば、パリのパッサージュとは遊歩者が街の記憶の断片を拾い集める場所であった。写真や映画などの新しい芸術を単なる「複製」をこえた意味の再生産だと定義づけている。見えないものを掴むメタホドス。集団の夢は無意識から何を浮上させるだろうか。偶然性を迎え入れながら、本来から将来へと編集パッサージュは「型」に始まっている。
文・平野しのぶ
アイキャッチ・阿久津健
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イシス編集学校 [花伝]チーム
編集的先達:世阿弥。花伝所の指導陣は更新し続ける編集的挑戦者。方法日本をベースに「師範代(編集コーチ)になる」へと入伝生を導く。指導はすこぶる手厚く、行きつ戻りつ重層的に編集をかけ合う。さしかかりすべては花伝の奥義となる。所長、花目付、花伝師範、錬成師範で構成されるコレクティブブレインのチーム。
Break by itself. 自分の殻を内側から壊す。これが破れだ。破るとは決意するということだ。 6月28日、[花]キャンプでの「ハイパー茶会プラン」のグループワークが始まった。開幕して38分後、道場 […]
花伝所のキャンプに地図やガイドは用意されていない。あるのは与件のみ。 既成概念に捉われず多様な触発を引き起こし、よくよく練られた逸脱に向かうカマエが重視される。 43[花]のクライマックスは、2日間にわたる […]
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マッチが一瞬で電車になる。これは、子供が幼い頃のわが家(筆者)の「引越し」での一場面だ。大人がうっかり落としたマッチが床に散らばった途端、あっという間に鉄道の世界へいってしまった。多くの子供たちは、「見立て」の名人。それ […]
43[花]特別講義からの描出。他者と場がエディティング・モデルを揺さぶる
今まで誰も聴いたことがない、斬新な講義が行われた。 43花入伝式で行われた、穂積晴明方源による特別講義「イメージと編集工学」は、デザインを入り口に編集工学を語るという方法はもちろん、具体例で掴み、縦横無尽に展開し、編 […]
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2025-07-15
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2025-07-13
『野望の王国』原作:雁屋哲、作画:由起賢二
セカイ系が猖獗を極める以前、世界征服とはこういうものだった!
目標は自らが世界最高の権力者となり、理想の王国を築くこと。ただそれだけ。あとはただひたすら死闘に次ぐ死闘!そして足掛け六年、全28巻費やして達成したのは、ようやく一地方都市の制圧だけだった。世界征服までの道のりはあまりにも長い!
2025-07-08
結婚飛行のために巣内から出てきたヤマトシロアリの羽アリたち。
配信の中で触れられているのはハチ目アリ科の一種と思われるが、こちらはゴキブリ目。
昆虫の複数の分類群で、祭りのアーキタイプが平行進化している。