「落語って自分で自分の落語をどのくらい追っかけられるかなんですよ」(立川談志、1793夜)
「ユーミンであってユーミンじゃないユーミンをユーミンが演じていくようなものよ」(松任谷由実、1793夜)
我々は追われなければならない。自分の背から逃げるように、走らねばならない。松岡正剛は、78歳の誕生日の晩、「おっかけ」という方法を自他に刻んだ。『世界制作の方法』のひとつである。
松岡は、20年以上かけて書きためた1800近い千夜を「千夜千冊エディション」として仕立てなおす。その松岡の肩越しに世界を見ようと、千夜坊主吉村堅樹と千冊小僧の穂積晴明が「おっかけ千夜千冊ファンクラブ」を組み、巨人の肩によじ登る。追いつ追われつ、知を紡ぐ。
「ぼくは芸術もそういうものでなきゃいけないと思っている。芸術家がみずから表現するということは、実は同時に自分に矢を向けているという行為なんです」
「みずからがそれを受けて、次の瞬間からはそれごと生き続けなきゃいけないんですよ」
(田中泯、『意身伝心』)
田中泯は33歳のころ、パリへ飛んだ。どうしても踊りを見てもらいたい人がいた。ロジェ・カイヨワだ。ワインの香りが充満する部屋で、踊る彼にカイヨワは言った。「一生、名付けようのない踊りを続けてほしい」。先達を追いかけ、76歳にして踊りつづける田中泯の姿は、いま全国の劇場スクリーンに映されている。その踊りの舞台には、盟友松岡正剛の主宰するブックサロンスペース「本楼」も選ばれた。東京豪徳寺の本棚劇場で、田中泯と松岡は踊りと語りをもって、ドストエフスキーを追っていた。
檄文としての千夜を受け取った、師範代清水幸江は言った。
「今まで『おつ千』面白いよ!とみなさんにお伝えしてきましたが、私は『おっかけ』という方法が数寄だったのだなぁと気づきました。今までずっとおっかけ、おっかけられていたのですね」
「ハイパーミュージアムをプランニング中の八客さん(学衆)も、校長や本楼、角川武蔵野ミュージアムをおっかけているだけでなく、これから入門する学衆さんにもおっかけられているのですよ、きっと」
多くの諸君はあまりにも「継続」から逃げようとしすぎているのではないですか。自分が自分のつまらないヴァージョンであることに嫌気がさしているのではないですか。それはねえ、まちがっているよ。
自分のヴァージョンとヴァージョンの隙間に「世界」を入れ込めることを看過しすぎているのです。
1793夜『世界制作の方法』
イシスの門をくぐった学衆にはひとつの共通点がある。現状を変えたい、ということだ。わたし1.0とわたし2.0のあいだに、世界をいれる。そのための方法として、38番のお題があり、4つの編集術がある。変革のチャンスを逃して、どうして春が迎えられようか。
「遅ればせながら、私儀、只今、やはり参上致しました」。これが大事なのである。準備ができれば、いつだっていい。そこに参上するべきなのだ。(松岡正剛、1207夜)
卒門まで残り10日、突破期限まであと72時間を切った。遅れ遅れて、追って追われて。48[守]140名・47[破]80名の学衆は、区切りの門へ向かう。
写真:梅澤奈央
梅澤奈央
編集的先達:平松洋子。ライティングよし、コミュニケーションよし、そして勇み足気味の突破力よし。イシスでも一二を争う負けん気の強さとしつこさで、講座のプロセスをメディア化するという開校以来20年手つかずだった難行を果たす。校長松岡正剛に「イシス初のジャーナリスト」と評された。
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