師範は「伏せて、開ける」もの【47[守]week2】

2021/05/13(木)18:00
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知のミステリーとしてのイシス

イシス編集学校の稽古模様はミステリーのようだ。

 

ミステリーでは何らかの事件や犯罪が発生し、その謎が最終的に解き明かされていく。一見シンプルだが、犯人は巧妙なトリックを仕掛け、著者は最後にどんでん返しを用意し、読み手の想像をやすやすと超えていく。このように読者を引き込み、既知の想定を超えていくミステリーには、「伏せて、開ける」「開きそうなものを、伏せる」という編集が多重多層に仕組まれている。

 

これはイシスの編集稽古プロセスにも共通している。そもそも「お題→回答→指南」の流れが「伏せて、開ける」の繰り返しになっている。他の学衆の回答や指南プロセスを互いに読みあうことで、自分一人では思いつかない新しい見方が開かれていく。イシスには何気ないルールやしつらえひとつにも編集の意図がある。このような編集によって教室では知の事件が連鎖し、今までにない見方や視野が広がり、既知の見方が破られていく。

 

 

師範と師範代の「ダブル・コーチング・システム」

開講2週目の「師範」の登場も、「伏せて、開ける」を象徴するような事件だった。

イシスには師範代だけでなく、師範というロールがあり、開講当初から教室の様子を眺めていた。

 

『インタースコア』にあるように、師範の「範」という漢字は、「車を浄めて出掛けるときの姿や礼」であり、「前に進もうとする者たちの格好」を指す。

 

師範は全員が師範代経験者であり、編集道の先を歩む者。編集学校という情報に「師範」という要素が加わり、イシス編集学校が「ダブル・コーチング・システム」でもあることがあかされた。

 

 

「伏せて、開ける」師範陣

師範の登場の仕方にも「伏せて、開ける」がある。

 

吉居奈々師範は、「ファンレターのお届けです」(カンテ・ホンド教室)、「別冊びいどろ愛読してます~」(本達ビードロ教室)と、担当教室名や稽古の様子に肖ったタイトルをつけ、開講から学衆と師範代の編集稽古を見守ってきたことをあかした。

 

三津田恵子師範は、稲垣景子師範代(オブザぶとん教室)と桑田惇平師範代(極性アンバンドル教室)とタッグを組み、事前に師範代が新しい客人(師範)の到来を予感させる謎の投稿をした上で、その正体をあかした。登場そのものに「伏せて、開ける」が込められていた。

 

渡辺恒久師範は、学衆一人ひとりの稽古ぶりへのエールをおくりつつ、「編集稽古は『動く障子』や『進む襖』なんです。」という松岡校長のメッセージを差し入れた。このメタファーは新たな「伏せ」でもあり、今後の編集稽古のどこかであかされていくことだろう。

 

師範は複数の教室を担当し、稽古ぶりを見つつ、編集工学や編集学校などについて、勧学会に差し入れをしていく。師範の「伏せて、開ける」編集が、勧学会や編集稽古にどのような新たな知の事件が起こすのだろうか。

 

 

【第47期[守]基本コース 師範陣】

 ◆井ノ上裕二
 ◆梅澤光由
 ◆齋藤幸三
 ◆武田英裕
 ◆中村麻人
 ◆三國紹恵
 ◆三津田恵子
 ◆吉居奈々
 ◆若林牧子
 ◆渡辺恒久

  • 上杉公志

    編集的先達:パウル・ヒンデミット。前衛音楽の作編曲家で、感門のBGMも手がける。誠実が服をきたような人柄でMr.Honestyと呼ばれる。イシスを代表する細マッチョでトライアスロン出場を目指す。エディスト編集部メンバー。

コメント

1~3件/3件

若林牧子

2025-07-02

 連想をひろげて、こちらのキャビアはどうだろう?その名も『フィンガーライム』という柑橘。別名『キャ
ビアライム』ともいう。詰まっているのは見立てだけじゃない。キャビアのようなさじょう(果肉のつぶつぶ)もだ。外皮を指でぐっと押すと、にょろにょろと面白いように出てくる。
山椒と見紛うほどの芳香に驚く。スパークリングに浮かべると、まるで宇宙に散った綺羅星のよう。

川邊透

2025-07-01

発声の先達、赤ん坊や虫や鳥に憑依してボイトレしたくなりました。
写真は、お尻フリフリしながら演奏する全身楽器のミンミンゼミ。思いがけず季節に先を越されたセミの幼虫たちも、そろそろ地表に出てくる頃ですね。

川邊透

2025-06-30

エディストの検索窓に「イモムシ」と打ってみたら、サムネイルにイモムシが登場しているこちらの記事に行き当たりました。
家庭菜園の野菜に引き寄せられてやって来る「マレビト」害虫たちとの攻防を、確かな観察眼で描いておられます。
せっかくなので登場しているイモムシたちの素性をご紹介しますと、アイキャッチ画像のサトイモにとまる「夜行列車」はセスジスズメ(スズメガ科)中齢幼虫、「少し枯れたナガイモの葉にそっくり」なのは、きっと、キイロスズメ(同科)の褐色型終齢幼虫です。
 
添付写真は、文中で目の敵にされているヨトウムシ(種名ヨトウガ(ヤガ科)の幼虫の俗称)ですが、エンドウ、ネギどころか、有毒のクンシラン(キョウチクトウ科)の分厚い葉をもりもり食べていて驚きました。なんと逞しいことでしょう。そして・・・ 何と可愛らしいことでしょう!
イモムシでもゴキブリでもヌスビトハギでもパンにはえた青カビでも何でもいいのですが、ヴィランなものたちのどれかに、一度、スマホレンズを向けてみてください。「この癪に触る生き物をなるべく魅力的に撮ってやろう」と企みながら。すると、不思議なことに、たちまち心の軸が傾き始めて、スキもキライも混沌としてしまいますよ。
 
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