【77感門】初司会の嶋本昌子は、踊る・抱く・惚れる

2021/09/04(土)16:14
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 43[破]の合同汁講の時の話である。まだ本楼で汁講が出来ていた頃の話だ。
 なぜかその場に、まったく関係のない師範代が来ていた。学衆からすると「あなた、誰?」という話である。聞くと、前日、自分たちの汁講があったという。
「みなさんの汁講に興味があったので、つい」
 そんな理由だけで、普通、他の教室の汁講に足を運ばない。

 自分の「数奇」に正直で、少しでも興味があれば未知に踏み出すことを微塵も恐れない。労も苦にしない。誰に何と思われようが構わない。まず体を動かしてみる。フラメンコだって踊ってしまう。 14季[離]を退院した直後に、師範代や錬成師範の経験者ながら、今期、47[守]を再受講して卒門。こんなことを平然とやってのけるのも納得だ。
 誰であろう、本日の司会者、嶋本昌子さんその人である。

 

 実はジャイアンは、33花伝所で錬成師範としてお世話になっている。愛情たっぷりの指導に、何度泣いたことか。嶋本錬成師範の指導は、喩えるなら「ハグ」だ。ギュッと抱きつかれるので、その幸福感に油断すると窒息するのだが……。
 ジャイアンが嶋本錬成師範から学んだことは、その回答を好きになること、学衆を愛することだった。

 今の時代、他者を愛することはムズカシイ。ところが嶋本さんは平然とそれをやってのける。なぜできるのか。ずっと疑問だったのだが、今日の司会ぶりでようやく得心した。

 

「すっかりファンになってしまいました」

 

 この言葉が何度飛び出したことか。隣にいる司会者(至宝)から、「またファンになってしまったんですね」と皮肉を言われても動じない。なぜなら惚れることこそ、嶋本さんのダンゼンだからだ。嶋本さんはその人の「ダンゼン」を瞬時に見つけて、すぐに好きになる。心底、惚れる。きっとこのあと、誰かのために涙するのだろう。
 ああ、「全部」を愛する必要はなかったんだ。「部分」を抱きしめればいいんだ。

 

 指南とはこういうことなのか。
 嶋本昌子さんの司会から、あらためて指南の基礎を教わった。

 

 ……ところで嶋本さん、またハグしてもらえませんか?

  • 角山祥道

    編集的先達:藤井聡太。「松岡正剛と同じ土俵に立つ」と宣言。花伝所では常に先頭を走り感門では代表挨拶。師範代登板と同時にエディストで連載を始めた前代未聞のプロライター。ISISをさらに複雑系(うずうず)にする異端児。角山が指南する「俺の編集力チェック(無料)」受付中。https://qe.isis.ne.jp/index/kakuyama

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コメント

1~3件/3件

若林牧子

2025-07-02

 連想をひろげて、こちらのキャビアはどうだろう?その名も『フィンガーライム』という柑橘。別名『キャ
ビアライム』ともいう。詰まっているのは見立てだけじゃない。キャビアのようなさじょう(果肉のつぶつぶ)もだ。外皮を指でぐっと押すと、にょろにょろと面白いように出てくる。
山椒と見紛うほどの芳香に驚く。スパークリングに浮かべると、まるで宇宙に散った綺羅星のよう。

川邊透

2025-07-01

発声の先達、赤ん坊や虫や鳥に憑依してボイトレしたくなりました。
写真は、お尻フリフリしながら演奏する全身楽器のミンミンゼミ。思いがけず季節に先を越されたセミの幼虫たちも、そろそろ地表に出てくる頃ですね。

川邊透

2025-06-30

エディストの検索窓に「イモムシ」と打ってみたら、サムネイルにイモムシが登場しているこちらの記事に行き当たりました。
家庭菜園の野菜に引き寄せられてやって来る「マレビト」害虫たちとの攻防を、確かな観察眼で描いておられます。
せっかくなので登場しているイモムシたちの素性をご紹介しますと、アイキャッチ画像のサトイモにとまる「夜行列車」はセスジスズメ(スズメガ科)中齢幼虫、「少し枯れたナガイモの葉にそっくり」なのは、きっと、キイロスズメ(同科)の褐色型終齢幼虫です。
 
添付写真は、文中で目の敵にされているヨトウムシ(種名ヨトウガ(ヤガ科)の幼虫の俗称)ですが、エンドウ、ネギどころか、有毒のクンシラン(キョウチクトウ科)の分厚い葉をもりもり食べていて驚きました。なんと逞しいことでしょう。そして・・・ 何と可愛らしいことでしょう!
イモムシでもゴキブリでもヌスビトハギでもパンにはえた青カビでも何でもいいのですが、ヴィランなものたちのどれかに、一度、スマホレンズを向けてみてください。「この癪に触る生き物をなるべく魅力的に撮ってやろう」と企みながら。すると、不思議なことに、たちまち心の軸が傾き始めて、スキもキライも混沌としてしまいますよ。
 
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