【このエディションフェアがすごい!28】ジュンク堂書店 三宮店(神戸市)②

2021/07/25(日)09:00
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 「このエディションフェアがすごい!」シリーズ、第28弾は兵庫県神戸市のジュンク堂書店三宮店の続報です。(第1弾はこちらへ)ライターはイシス編集学校師範代の辻井貴之さんです。フェアは8月31日まで。

 

◇◇◇

 

ジュンク堂発祥の地、神戸・三宮店で始まった「知祭り」もスタートから三週間。燃え上がる夏の太陽に呼応するかのように勢いを増している。

 

■時を忘れる魅惑の空間

フェア会場は5階。自然科学系から人文系まであまねく取りそろえられた専門書の海の中、異質な存在感を放つ「知祭り棚」。

 


「知祭り」は一人一人のお客様の滞在時間が長いですね。普通のフェアだとさらっと流れるのですけど、今回は結構じっくりとみなさん見ていかれます。そこだけ異なる時間が流れているような。

(ジュンク堂三宮店店長 堀内理さん)


 

「とてもいい時間が流れている」堀内店長は今回のフェアをそう評価する。

 

 

広々とした空間で誰にも邪魔されずじっくりと本に向き合える。

 

■玄人集う三宮

三宮店は2~5階までの売り場総面積が1,364坪と、兵庫県で一番大きな店舗だ。「他の店舗にはない本もここなら手に入る」県下の読書人たちの期待を一身に引き受けてきた。

 


最初はお客様の絶対数は少ないという印象でしたが、徐々に売り上げも伸びており、今、確実に増えてきています。特に松岡正剛さんのファンの方をはじめとする読書熱の高いお客様にしっかり来て頂いていると実感しています。

(フェア担当 小寺啓史さん)


 

 

売れ筋は『情報の歴史21』。キーブックではアルベルト・マングェルの『読書の歴史』が売れているという。いずれも重量感抜群。熱量の高い読書家たちがフェアに訪れていることがうかがえる。

 

 

エディションは『仏教の源流』と新刊の『資本主義問題』がツートップ。特に『仏教の源流』が売れているのは意外だったとのこと。「奥に仏教書の棚があるのでその流れで足を止められたのではないか」と堀内店長は分析。

 

物語カテゴリーも好調。中でもヘルマン・ヘッセ『デミアン』の売れ行きが芳しい。普段以上に売れているとのことで「知祭り」効果が垣間見える。2冊の『人間人形時代』は新しく追加。本棚の様相も刻々と移り変わっていく。

 

■改造計画進行中

魅惑の空間はジュンク堂三宮店とイシス編集学校のコラボレーションで生まれた。現在も堀内店長、フェア担当の小寺さんの多大なる協力のもと、棚のリニューアル計画が進行中だ。

 

キーワードをもっと目立たせてはどうか?エディションの配置を動かすのは?等々、打ち合わせでは双方から意見が飛び交った。

 

棚の前でアイデアを出し合う堀内店長、小寺さんと編集学校のメンバー。

 

■いよいよ後半戦!

7/1に始まったエディションフェアも残り1ヶ月。抜群のタイミングで『資本主義問題』が投入され、ますます盛り上がりを見せている。堀内店長、小寺さんが後半戦へ向けて力強く意気込みを語ってくださった。

 


売り上げも客数もまだまだ伸びる余地はあると思っています。本の追加や入れ替えを随時行い、1回買っていただいた方にも、もう1回、2回と来店して頂けるような空間づくりを心がけていきたいと思います。(小寺)


 


今回のフェアはここまで想定以上できています。お客様の数も売り上げもいい感じに伸びてきているので、後半戦もフックになるようなものを投入し客数、売り上げ共に伸ばしていきたいです。(堀内)


 

(左)堀内店長、(右)小寺さん 最新エディション『資本主義問題』を手に。

 

 

書店入り口のエレベーター正面には鋭い眼光で来店者を射抜く松岡校長が。

 

ジュンク堂三宮店のエディションフェアは8月31日まで。あなただけの宝物に出会えるチャンスがここに。だんだんと変化していく「知祭り屋台」を見逃すな!

 

(左)マンガのスコアで活躍中、堀江さんのお気に入りは『サブカルズ』と『観念と革命』

(右)取材を担当した辻井のお気に入りは『宇宙と素粒子』と『デザイン知』

 

今回の打ち合わせに参加した編集学校メンバー(左から堀江、吉野、辻井、写真撮影は木藤)

 

文:辻井貴之

写真:木藤良沢

 

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  • エディスト編集部

    編集的先達:松岡正剛
    「あいだのコミュニケーター」松原朋子、「進化するMr.オネスティ」上杉公志、「職人肌のレモンガール」梅澤奈央、「レディ・フォト&スーパーマネジャー」後藤由加里、「国語するイシスの至宝」川野貴志、「天性のメディアスター」金宗代副編集長、「諧謔と変節の必殺仕掛人」吉村堅樹編集長。エディスト編集部七人組の顔ぶれ。

コメント

1~3件/3件

川邊透

2025-06-30

エディストの検索窓に「イモムシ」と打ってみたら、サムネイルにイモムシが登場しているこちらの記事に行き当たりました。
家庭菜園の野菜に引き寄せられてやって来る「マレビト」害虫たちとの攻防を、確かな観察眼で描いておられます。
せっかくなので登場しているイモムシたちの素性をご紹介しますと、アイキャッチ画像のサトイモにとまる「夜行列車」はセスジスズメ(スズメガ科)中齢幼虫、「少し枯れたナガイモの葉にそっくり」なのは、きっと、キイロスズメ(同科)の褐色型終齢幼虫です。
 
添付写真は、文中で目の敵にされているヨトウムシ(種名ヨトウガ(ヤガ科)の幼虫の俗称)ですが、エンドウ、ネギどころか、有毒のクンシラン(キョウチクトウ科)の分厚い葉をもりもり食べていて驚きました。なんと逞しいことでしょう。そして・・・ 何と可愛らしいことでしょう!
イモムシでもゴキブリでもヌスビトハギでもパンにはえた青カビでも何でもいいのですが、ヴィランなものたちのどれかに、一度、スマホレンズを向けてみてください。「この癪に触る生き物をなるべく魅力的に撮ってやろう」と企みながら。すると、不思議なことに、たちまち心の軸が傾き始めて、スキもキライも混沌としてしまいますよ。
 
エディスト・アーカイブは、未知のお宝が無限に眠る別銀河。ワードさばきひとつでお宝候補をプレゼンしてくれる検索窓は、エディスト界の「どこでもドア」的存在ですね。

堀江純一

2025-06-28

ものづくりにからめて、最近刊行されたマンガ作品を一つご紹介。
山本棗『透鏡の先、きみが笑った』(秋田書店)
この作品の中で語られるのは眼鏡職人と音楽家。ともに制作(ボイエーシス)にかかわる人々だ。制作には技術(テクネ―)が伴う。それは自分との対話であると同時に、外部との対話でもある。
お客様はわがままだ。どんな矢が飛んでくるかわからない。ほんの小さな一言が大きな打撃になることもある。
深く傷ついた人の心を結果的に救ったのは、同じく技術に裏打ちされた信念を持つ者のみが発せられる言葉だった。たとえ分野は違えども、テクネ―に信を置く者だけが通じ合える世界があるのだ。

山田細香

2025-06-22

 小学校に入ってすぐにレゴを買ってもらい、ハマった。手持ちのブロックを色や形ごとに袋分けすることから始まり、形をイメージしながら袋に手を入れ、ガラガラかき回しながらパーツを選んで組み立てる。完成したら夕方4時からNHKで放送される世界各国の風景映像の前にかざし、クルクル方向を変えて眺めてから壊す。バラバラになった部品をまた分ける。この繰り返しが楽しくてたまらなかった。
 ブロックはグリッドが決まっているので繊細な表現をするのは難しい。だからイメージしたモノをまず略図化する必要がある。近くから遠くから眺めてみて、作りたい形のアウトラインを決める。これが上手くいかないと、「らしさ」は浮かび上がってこない。