【このエディションフェアがすごい!37】知遊堂上越国府店(新潟県上越市)

2021/08/25(水)07:00
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 「このエディションフェアがすごい!」シリーズ、第37弾は新潟県の知遊堂上越国府店です。フェア開催は8月31日まで。

 

◇◇◇

 

親鸞が念仏弾圧のため流された先で身を寄せた草庵跡地に建てられた本願寺国府別院(写真左)。小川未明の代表作『赤い蝋燭(ろうそく)と人魚』にちなんだ人魚像(写真右上)。そして、未明の父が上杉謙信を祀るために創建した春日山神社(写真右下)。

 

浄土真宗の開祖、童話作家、そして、戦国時代の武将の3人をつなぐ関係線は新潟県上越市です。

小学生のときに通っていた日曜学校は浄土真宗のお寺、中学のときの理科の先生は小川未明のお孫さん、そして、正月の初詣は春日山神社と、まるで“上越の縮図”のような私にとって、気になる書店があります。

知遊堂(上越国府店)

 

知遊堂(上越国府店)です。民族学者、宮本常一が佐渡島に足繁く通う際に、降り立った直江津駅、本願寺国府別院、春日山神社、それぞれ車で数分の立地にあります。

「情報を動かせる形にすることを知という」、そして、「編集は遊びから生まれる」と説く松岡正剛を校長とするイシス編集学校に携わる私にとって、イシス直営店のような店名の知遊堂さんは、気になって仕方がない存在でした。

 

この知遊堂上越国府店で、「千夜千冊エディション」フェアが開催されている、と聞きお話をうかがうことに。

 

「知遊堂という店名は社内公募で決まりました。

「知」=あふれる知識・情報に触れることができる

「遊」=趣味・娯楽など人生を豊かにする情報に出会える

「堂」=そんなすべてを一堂に。

読書好きの社員からの提案で、書店の持つ可能性、魅力を名前に込めています」。

 

そう教えてくれたのは、上越国府店で文芸書、文庫・新書、人文書、ビジネス書を担当する野池裕輔さん。今回、書店歴12年のベテラン書店員である野池さんの提案でフェア開催が決まりました。

 

「当店は、平日の日中はご年配の方が、健康実用書や社会評論、時代小説を求めに来店されます。文具の品揃えも充実しているため、夕方からは学生さんやビジネスマンの姿が増えます。カフェを併設しているので、じっくりと読み込まれるお客様も多いです。休日には、家族連れや若者が訪れ、児童書や学習参考書をお求めになられます。何と言っても上杉謙信や親鸞聖人の縁の地なので、関連書籍も強いです。例年行っていたフェアがあるんですけれど、その代わりに、棚スペースに合った規模の、それでいて読み手を満足させる、しっかり芯の通った“硬派”なフェア企画が欲しかったんです」。

上杉謙信や親鸞聖人の関連書籍

 

ゆっくりと読書ができる併設カフェ

 

なるほど、棚の上から睨みをきかす松岡正剛は“硬派”にぴったりです。

知遊堂上越国府店の千夜千冊エディションBEST 3は、1位『面影日本』、2位『宇宙と素粒子』、3位『本から本へ』とのこと。『本から本へ』は千夜千冊エディションのキーブックとしてランキング入りは当然として、『面影日本』は雪よけの屋根、雁木(がんぎ)がいまに残る上越らしく、『宇宙と素粒子』は“硬派”なフェアを仕掛けた野池さんにとってシメシメ、といったところでしょうか。

 

エディションフェア棚

 

「私は『ことば漬』が好きなんです。ことばの種類や背景、日本語の難解さと表現力など、その魅力が読み手に存分に伝わってくるんです」と、野池さんがご自身のお気に入りエディションを教えてくれました。

 

知遊堂の創業者は、先人の智恵から影響を受けた自身の読書体験をもとに、自らの手で書店を展開したい、と異業種から参入して書店の創業を志したそうです。人生を豊かに育む知的読書体験を、との創業者の願いが野池さんの棚づくりの思想にもつながっているのを感じます。

 

「千夜千冊エディション」フェアのキャッチフレーズは、「知祭り」。夏季に知遊堂で開催されるフェアとして、これ以上ふさわしいフェアはなかったのかもしれません。

 

 

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