後藤由加里と巡るAPAアワード初日レポート

2023/02/26(日)17:40 img
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APAアワード2023の写真展がついにスタートした。

編集学校の師範でもある後藤由加里が撮影した、松岡正剛ポートレートの展示を目撃すべく、開催初日の2月25日、後藤と共に入選作を見に恵比寿の東京都写真美術館におもむいた。後藤の写真ファンでもある原田淳子[破]学匠も忙しい合間をぬって駆けつけた。東京都写真美術館といえば、日本初の写真と映像の専門美術館で、名だたる写真家の作品を展示してきた歴史がある。筆者もかつて、木村伊兵衛や森山大道、アンセル・アダムスやアンリ・カルティエ=ブレッソンなど数々の写真展を見てきただけに、後藤の写真が展示されるのは感慨深い。

 

恵比寿ガーデンプレイスの奥に聳え立つ東京都写真美術館。B1FがAPAアワード2023の会場となる。

 

長いコリドーの壁の裏側には巨大な写真がプリントされており写真鑑賞が楽しめる。この先を抜けると入口だ。

 

広い会場の奥に飾られた松岡ポートレートを見つめる後藤と原田。原田は、「写真自体がちゃんとお題になっている。WHYとHOWを考えたくなる」と語り、愛用のキーボードやタバコから松岡という存在の表れを感じていた。後藤は、「プリントの色が少し赤みがかってしまったかな」と展示を見ながらつぶやいた。データ上で見ている写真とプリントしたモノの間にはどうしたってズレが生じる。これをコントロールするのも写真家が持つべきスキルなのだ。

 

入選・入賞した作品は全て『年鑑 日本の広告写真2023』(玄光社)に納められる。館内2階のミュージアムショップで購入できる。

 

開催は、3月12日(日)まで。珍しい視点の写真も多くあり、比較して見るのも面白いので、ぜひ会場に足を運んで欲しい。

 

入選作「紫煙」の写真は、こちらのエディスト記事でもご覧になれます。
後藤由加里が撮った松岡正剛ポートレートが入選!

 

第51回公益社団法人日本広告写真家協会公募展 APAアワード2023
日 程 2023年2月25日(土)~3月12日(日)
場 所 東京都写真美術館 B1F展示室

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コメント

1~3件/3件

川邊透

2025-06-30

エディストの検索窓に「イモムシ」と打ってみたら、サムネイルにイモムシが登場しているこちらの記事に行き当たりました。
家庭菜園の野菜に引き寄せられてやって来る「マレビト」害虫たちとの攻防を、確かな観察眼で描いておられます。
せっかくなので登場しているイモムシたちの素性をご紹介しますと、アイキャッチ画像のサトイモにとまる「夜行列車」はセスジスズメ(スズメガ科)中齢幼虫、「少し枯れたナガイモの葉にそっくり」なのは、きっと、キイロスズメ(同科)の褐色型終齢幼虫です。
 
添付写真は、文中で目の敵にされているヨトウムシ(種名ヨトウガ(ヤガ科)の幼虫の俗称)ですが、エンドウ、ネギどころか、有毒のクンシラン(キョウチクトウ科)の分厚い葉をもりもり食べていて驚きました。なんと逞しいことでしょう。そして・・・ 何と可愛らしいことでしょう!
イモムシでもゴキブリでもヌスビトハギでもパンにはえた青カビでも何でもいいのですが、ヴィランなものたちのどれかに、一度、スマホレンズを向けてみてください。「この癪に触る生き物をなるべく魅力的に撮ってやろう」と企みながら。すると、不思議なことに、たちまち心の軸が傾き始めて、スキもキライも混沌としてしまいますよ。
 
エディスト・アーカイブは、未知のお宝が無限に眠る別銀河。ワードさばきひとつでお宝候補をプレゼンしてくれる検索窓は、エディスト界の「どこでもドア」的存在ですね。

堀江純一

2025-06-28

ものづくりにからめて、最近刊行されたマンガ作品を一つご紹介。
山本棗『透鏡の先、きみが笑った』(秋田書店)
この作品の中で語られるのは眼鏡職人と音楽家。ともに制作(ボイエーシス)にかかわる人々だ。制作には技術(テクネ―)が伴う。それは自分との対話であると同時に、外部との対話でもある。
お客様はわがままだ。どんな矢が飛んでくるかわからない。ほんの小さな一言が大きな打撃になることもある。
深く傷ついた人の心を結果的に救ったのは、同じく技術に裏打ちされた信念を持つ者のみが発せられる言葉だった。たとえ分野は違えども、テクネ―に信を置く者だけが通じ合える世界があるのだ。

山田細香

2025-06-22

 小学校に入ってすぐにレゴを買ってもらい、ハマった。手持ちのブロックを色や形ごとに袋分けすることから始まり、形をイメージしながら袋に手を入れ、ガラガラかき回しながらパーツを選んで組み立てる。完成したら夕方4時からNHKで放送される世界各国の風景映像の前にかざし、クルクル方向を変えて眺めてから壊す。バラバラになった部品をまた分ける。この繰り返しが楽しくてたまらなかった。
 ブロックはグリッドが決まっているので繊細な表現をするのは難しい。だからイメージしたモノをまず略図化する必要がある。近くから遠くから眺めてみて、作りたい形のアウトラインを決める。これが上手くいかないと、「らしさ」は浮かび上がってこない。