本楼をおおった折句の星空~風韻講座presents 20周年感門之盟折句企画

2020/09/27(日)10:35
img

 「折句」といえば「かきつばた」を折り込んだこの和歌を思い出す人も多いだろう。

 

 からころもきつつなれにしつましあれば

          はるばるきぬるたびをしぞおもふ  在原業平

 

 折句とは句頭なら句頭、句末なら句末、詩句のある位置にある言葉を一字ずつ折り込む編集技法だ。20周年感門之盟では「イシス折句」なるお題が風韻講座から出された。「イシス」の三文字を句頭において、これまでのイシスライフを振り返る、これからのイシスライフを振り仰ぐ一句を詠んでみようという趣向だ。

 

 実は折句に加えてさらにしばりが加えられた。上五に「イシ」、中七に「シス」を使ってはならないというルールだ。「イシス」「システム」を使った句がわんさか届くであろうことを想定して、キュキュッとしばりを強くしたのだが、さすが編集学校! みな、しばりがあればあるほど燃えるらしい。締切までに延べ119句が投稿された。なかには二度、三度と投稿する猛者もいて、折句はみなの風韻魂に火をつけたようだ。

 

 集まった句は、風韻講座宗匠である小池純代師範と大武、福澤の両連雀の三人が高速で選考、評価をした。上位入選作を21日の感門之盟風韻講座のコーナーでお披露目するためだ。三人それぞれが「☆彡:すばらしい」「◎:とってもいい」「○:いいね」などのマークを付けて集計し、風韻十八座の座名「夕星(ゆうづつ)座」にあやかって、星に関する賞名でまとめた。

 

 感門之盟折句コーナーでは上位五句をごく簡単に紹介したが、ここで改めて上位入選作を選評“ダークマターのささやき”とともに挙げてみよう。(作者名は敬称略としました)


・・・・・・・・・イシス折句上位入選作・・・・・・・・・

 

☆彡 金星賞 ☆彡  

 

イメージの滴る銀河掬ひ取り  丸洋子

 ◆天空から知恵の水のおすそ分け。

 *イシスの世界観をぴったりの季語で映した。言葉の流れも見事。

 ♪星の数ほどある想像力の種。

 

☆ 遊星賞 ☆

 

いざ放て! 締切迫る スケジュール  吉田麻子

 ◆共有最大臨場感!

 *あざやかによみがえるキワキワの熱気。

 ♪締切りこそ編集力アップのツール。千夜千冊1654夜で応援したい。

 

意図綰かす知る多を垂る師姿問い  裏谷惠子

 ◆折り込み超絶回文。

 *折句と回文の合わせ技で技能賞。

 ♪千夜千冊739夜に迫る技巧派。

 

いただきます守破離稽古と据り鯛  小原昌之

 ◆鯛のお頭をありがとう!

 *開講時のアラタマル気分と「据り鯛」がベストマッチ。

 ♪おめでたい20周年祝いにぴったり♪ 思わず笑みがこぼれます。

 

幾千の指南の夜の澄みにけり  松井路代

 ◆透明な幾千夜を通貫して届く珠玉の指南。

 *365日、24時間眠らないイシス。すべての師範代に贈りたい。

 ♪星降るように、降りてくる指南。透明な想いが瞬く。


◎ 星河賞 ◎

 

意伝子のしくむインタースコアかな  天野陽子

 ◆句またがりもすいすい快適。

 *今度はミームを手渡していく人に。

 ♪新しい教室が誕生するのも、意伝子のしわざ。

 

いつまでも 師にあこがれて 忍冬  北原ひでお

 ◆「忍冬:スイカズラ」が新鮮です。

 *あこがれは全ての原動力。

 ♪あこがれの気持ちは永遠に。

 

いわし雲情報の群れ数寄の群れ  二村典子

 ◆秋の空に編集を思う。

 *秋の空を見上げるのが楽しくなります。

 ♪情報はひとりではいられない。

 

いずまいの 静かなること 忍冬  川田淳子

 ◆なんて端麗なイシスライフでしょう!

 *本と花を友にする夜をたくさん持てますように。

 ♪花の色が変化するスイカズラは、まるで師範代。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

                        

 

 金星賞は最優秀句、遊星星は優秀句、星河賞は秀句といったところだろうか。その他の良句佳句にも星雲賞、流星賞、星のゆりかごなどがふるまわれ、締切以後の投句に対しては、小池師範の温情で「ビッグバン(締切)以後」の席が設けられた。

 

 さて、“ダークマターのささやき”はその名の示す通りほめてばかりではない。「ん、なんだこれ?」「うーむ、意味不明だ」「この発想は私にはない」といった句には「●」をつけている。句会で言うところの逆選の扱いと思っていただきたい。逆選イコールダメな句、というわけではなく、いわば選者の数寄フィルターになんらかのひっかかりを残しながら外にこぼれた句…とでも言おうか。119句のなかには○と●が両方ついたものもあり、逆選はいろいろな意味で選者に強いインパクトを与えた句なのだ。

 

 今回○は一切つかず●のみ獲得した句は「隕石賞」としてその果敢な句作姿勢を讃えることにした。隕石賞…地上に堕ちた星、星と同列では語れない、でも唯一私たちが手にとることのできる星、である。(この辺の定義づけは各自ご自由に)。ここでは●一個の11句から頭一つ突出して●二個を獲得したダントツの隕石賞を、イシス20周年の記憶として刻んでおきたい。


★ 隕石賞 ★

 

いいかげん シガー隣りで 吸わないで        萩原雄三


 ◆まさに校長の薫陶を受け、謦咳に触れたのですね!

 *校長の健康を気遣ってとのことだが、校長から逆選が入りそう…。

 ♪勇気ある一句。


 感門之盟のコーナー企画を盛り上げるためにも、一応「賞」というランク付けをしたわけだが、学衆、師範代、師範、番匠、学匠とあらゆるロールから参加してもらったことが選者一同何より嬉しく、全句に綺羅星賞をさしあげたいくらい。とりわけ守学衆、破学衆から寄せられた句は、いきいきとイシスライフや稽古の楽しさ、そして師範代への感謝を詠んでいてすばらしかった! こうした感謝の句にはきらきら光る星のピンブローチをつけて、師範代にお贈りしたいと思う。投稿くださったみなさん、本当にありがとうございました。


             … ★ … ★ …

 

 風韻講座では編集を「地」に、折句はもちろん回文に都々逸、五言絶句などさまざまな定型詩を「図」に置きながら、言葉と戯れ、ときに闘い、また添い寝したりもして遊び尽くす。三カ月間の稽古で、小池師範がいくつものポケット、引き出し、玉手箱から多彩に繰りだすアヤの詞は連衆にとって生涯の宝物となるはずだ。まだ受講していない方は、次回の風韻十九座へぜひ!


  • 大武美和子

    編集的先達:まどみちお。ピリッとのなかにクスッとがある。編集知性とともに方法日本がある。「イシスの女将」はさばきもいなしも切れ味抜群。誰にも出せない達人の味は、俳句でも講評でもコメントでも指南でも、小ささにキラリが光る。