仮説と師範とカタルトシメス 34[花]入伝式 10shot

2020/11/11(水)08:00
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座組みが一新されて、34[花]がスタートした。深谷花目付の就任を筆頭に、3人の新花伝師範、錬成師範も新たな顔ぶれが4人加わる。入伝式にもリアルの場に師範たちがずらりと揃い、画力が一気にアップした。

新師範とともに10月24日に開催された入伝式の様子を10shotでお届けします。

仮説する二人の花目付

三津田知子 花目付

最近出会った仮説で最も衝撃を受けた本として『人新世の「資本論」』(斎藤幸平/集英社新書)をもって口火を切る。

「新たな世界を再編集していく過程でコミュニティ、コモンの再建が必須になる。その過程でここ花伝所での学ぶ型が絶必になるだろう」

 

深谷もと佳 花目付

「編集稽古は自分事と他人事の中間、お互い事じゃないか。お互い事を実践の場で体験的に学んでいくのが師範代」

編集稽古を仮説的に観察し"お互い事"というニューワードを場に仮置きして入伝生にエールを送る深谷花目付。

コスモスに配色といふ一語あり

竹川智子 花伝師範(くれない道場)

 「指南の根底には同じ型がある。型があるから多様な編集ができる。花伝所では指南だけではなく、型を使うことで究極のコミュニケーション方法を学ぶと思ってもらっていい」

エディスト占いで新たな一面をひらくベテラン花伝師範がくれない道場を率いる。

白川雅敏 花伝師範(やまぶき道場)

 「イニシエーションの場である花伝所。格別な体験をして無事英雄となってリターンをしていきましょう」

[守]師範歴任後、いよいよの花伝師範登板。むかし大判小判の色であったやまぶきを纏い入伝生をキラキラにする。

林朝恵 花伝師範(むらさき道場)

「"今"に差し掛かって編集を起こせるようになるにはその前にルーティンがある」

保険職員だったカフカの1日のルーティンを例えに演習の中で集中できる時間を見つけて欲しいとハヤシ節で入伝生を鼓舞する。

小川玲子 花伝師範(わかくさ道場)

「世界や日本の危機と同じようにイシスもある。その状況のもとでわかくさ道場に5人の入伝生が集まった」

危機的状況の今だからこそ、この道場に集まった5人に必然性を感じると一人一人の背中を押す。

【本楼花図鑑】道場カラーに準えて生けられた井寸房の花。3色の生花に山吹色の自然光が射す。

吉居奈々 錬成師範

山田細香 錬成師範

道場ごとの千夜千冊共読ワークの前に見本をデモンストレーションする錬成師範。茶系の衣装に花伝師範への配慮が感じられる。

吉居錬成師範は『社会システム理論』(1349夜)と『遺伝的乗っ取り』(1621夜)に『無名時代の私』(1202夜)をプラス1し「変化している世界にさらわれそうになったら靴ではなく靴紐、主題ではなく方法。目の前にあるものと違うものから動かしていくとブレークするのではないか」とメッセージを放ち、山田錬成師範は敬愛する寺山修司(413夜)の実験演劇「百年の孤独」を緻密にスコアリングして発見した舞台の"余白"を発表し「編集に向かうための余白を自分で用意せよ」と説いた。

 

才能を解発する編集工学

18人の入伝生は『インタースコア』からキーワードを挙げながらオンラインで自己紹介。新しい才能を見つめる瞬間。

B(ベース)からT(ターゲット)に向かうときに一旦の仮説を置いてみる。仮説状態であるがために間のP(プロフィール)が動いていくときにT(ターゲット)が幾度も変わりうる。別様の可能性を幾つでも持っていられるようにT(ターゲット)をしておくこと。固定化されたビジョンだと自然の摂理とあっていない。

『才能をひらく編集工学』を共読しながら編集工学レクチャーを担当する安藤昭子専務取締役。熱心に耳を傾ける静かな本楼にカツカツカツと板書するチョークの小気味よい音が響く。BPT(ベース、プロフィール、アフォーダンス)と3A(アフォーダンス、アナロジー、アブダクション)を重ねながら編集工学の骨法を柔らかく、深く、解きほぐす。校長をして、師範を含めこの講義の内容を完全にマスターした方がいいと言わしめた。

安藤の講義を受け「花伝所で編集道をどう進んでいったらいいのか話したい」と2枚の黒板を裏返し世阿弥の『至花道』の5つのプロセスとBPTを重ねてメッセージを送る吉村堅樹林頭。

ふたたび7枚の下書き

校長講義では5月の33[花]入伝式で書き下ろした7枚の手書きレジュメをもとに、前回話しきれなかったことも含め「型」についての講義。5ヶ月前のレジュメ、その時話したこと、今日の安藤専務の編集工学レクチャー、師範たちの振る舞い、入伝生の発言、そして『千夜千冊エディション編集力』。それらの間を行ったり来たりしながら話を進めていく。

 アーキタイプ、プロトタイプ、ステレオタイプにもレシピがある。情報処理モデルがある。プロセスまでくるとプレイングスタイル 、印象、イメージになってくる。そうなるとそこに手続きだけではなくその人のブリオやゼストが出てくる。それが古代のアーキタイプから作られてきたコードの変化だとポストモダンの研究者ロラン・バルトが言い出した。コードの変化とみることによっていろんなことを代入できるものになる。編集知はロジカル・シンキングやデータ主義ではなくそこにスタイルを代入できる。

本を読むという行為の中に実は「生命に学ぶ 歴史を展く 文化に遊ぶ」どころかありとあらゆる型の学習が入っている。読書はもっと本質的なんです。本に託してみるということが非常に大きいと(ロラン・バルトは)書いてある。

7枚のレジュメは33[花]から34[花]に向けて持ち替え・着替え・乗り換えを起こし、バルトもヴィトゲンシュタインも引き連れて1時間のカタルトシメスとなった。

 

師範代になるというプロジェクトにも読書行為と同じようにアドレッサンスもロマネスクも多分に孕んでいる。そして師範代になるということは"いろんなことを代入できる"ことであり、"ありとあらゆる型の学習"を知るということだろう。それが快楽になるかどうかは入伝生それぞれのブリオ次第である。

 

第34期[ISIS花伝所]編集コーチ養成コース指導陣

◎校長:松岡正剛

◎花伝所長:田中晶子

◎花目付:三津田知子・深谷もと佳

◎花伝師範:竹川智子・小川玲子・林朝恵・白川雅敏

◎錬成師範:和田めぐみ・岩野範昭・中村麻人・小倉圭吾・加藤めぐみ・山田細香・網口渓太・吉居奈々

  • 後藤由加里

    編集的先達:石内都
    NARASIA、DONDENといったプロジェクト、イシスでは師範に感門司会と多岐に渡って活躍する編集プレイヤー。フレディー・マーキュリーを愛し、編集学校のグレタ・ガルボを目指す。倶楽部撮家として、ISIS編集学校Instagram(@isis_editschool)更新中!

コメント

1~3件/3件

川邊透

2025-07-01

発声の先達、赤ん坊や虫や鳥に憑依してボイトレしたくなりました。
写真は、お尻フリフリしながら演奏する全身楽器のミンミンゼミ。思いがけず季節に先を越されたセミの幼虫たちも、そろそろ地表に出てくる頃ですね。

川邊透

2025-06-30

エディストの検索窓に「イモムシ」と打ってみたら、サムネイルにイモムシが登場しているこちらの記事に行き当たりました。
家庭菜園の野菜に引き寄せられてやって来る「マレビト」害虫たちとの攻防を、確かな観察眼で描いておられます。
せっかくなので登場しているイモムシたちの素性をご紹介しますと、アイキャッチ画像のサトイモにとまる「夜行列車」はセスジスズメ(スズメガ科)中齢幼虫、「少し枯れたナガイモの葉にそっくり」なのは、きっと、キイロスズメ(同科)の褐色型終齢幼虫です。
 
添付写真は、文中で目の敵にされているヨトウムシ(種名ヨトウガ(ヤガ科)の幼虫の俗称)ですが、エンドウ、ネギどころか、有毒のクンシラン(キョウチクトウ科)の分厚い葉をもりもり食べていて驚きました。なんと逞しいことでしょう。そして・・・ 何と可愛らしいことでしょう!
イモムシでもゴキブリでもヌスビトハギでもパンにはえた青カビでも何でもいいのですが、ヴィランなものたちのどれかに、一度、スマホレンズを向けてみてください。「この癪に触る生き物をなるべく魅力的に撮ってやろう」と企みながら。すると、不思議なことに、たちまち心の軸が傾き始めて、スキもキライも混沌としてしまいますよ。
 
エディスト・アーカイブは、未知のお宝が無限に眠る別銀河。ワードさばきひとつでお宝候補をプレゼンしてくれる検索窓は、エディスト界の「どこでもドア」的存在ですね。

堀江純一

2025-06-28

ものづくりにからめて、最近刊行されたマンガ作品を一つご紹介。
山本棗『透鏡の先、きみが笑った』(秋田書店)
この作品の中で語られるのは眼鏡職人と音楽家。ともに制作(ボイエーシス)にかかわる人々だ。制作には技術(テクネ―)が伴う。それは自分との対話であると同時に、外部との対話でもある。
お客様はわがままだ。どんな矢が飛んでくるかわからない。ほんの小さな一言が大きな打撃になることもある。
深く傷ついた人の心を結果的に救ったのは、同じく技術に裏打ちされた信念を持つ者のみが発せられる言葉だった。たとえ分野は違えども、テクネ―に信を置く者だけが通じ合える世界があるのだ。