をぐら離 文巻休信週 ─ 「2020年に突出するための五箇条」振り返り

2020/12/20(日)10:19
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  世界読書奥義伝 第14季[離]、今週は休信週(と書いて追い上げ週と読む)。難問回答に挑む離学衆を見守りつつ、「2020年に突出するための五箇条」を振り返ってみました。
 「をぐら離」では、析匠、小倉加奈子の日常を通した離の姿をお届けしていきます。門外不出の文巻テキストをもとに進められていく離の稽古の様子を少しでも想像いただければと思います。

 

12月13日(日)


 相手にアブダクティブになるとは、先方に対して仮説を共有させることがゼツヒツの骨法になるということです。それには「もっともらしさ」「検証可能性」「取り扱い単純性」「思考の経済性」を相手と一緒に共有するのです。
──千夜千冊1566夜『アブダクション』



 [離]の稽古を見守りつつ山本貴光さんの『記憶のデザイン』の目次読書。白い本に緑と黄緑でマーキング。記憶のデザインとは、想起のための編集工学と言い替えられないか。その極意は3A。アフォーダンス、アナロジーそしてアブダクションである。
 アブダクションの千夜で自分の仕事のプロセスを確認してみる。”思考の経済性”という意味がまだつかめない。

 目が疲れたのでまるちゃんのお散歩小一時間。途中ウッドベリーのアイスを買ったので、帰りは全速力で走ってみた。

 夕方、穂積くんからMEdit LABのアイキャッチ画像ができました!と連絡が来る。ついに穂積くんとコラボ実現♪

 

穂積くんデザインのアイキャッチ画像

「注射器がぶっ刺さるコロナウイルス」と「おしゃべり病理医天使」をオーダーされた。

こんな形で大変身するとは!

 

 

12月14日(月)


 「今年の後半から来年の頭にかけて、編集工学が時熟する可能性が高い。ぼくも色々とコアコンピタンスを明らかにしていくつもりだ」。

──穂積晴明『松岡正剛が語る、2020年に突出するための五箇条』


 

 午後、経産省『未来の教室』の統括リーダーAさんとのZoom面談があり、吉村さん、衣笠さんと出席した。MEdit LABの教材の仕組みと狙いをざっくり説明する。
 「わかりにくい教材、作っています」と思い切って言ってみた。「いいですね~!」と言われた。

 お役所も捨てたもんじゃありません。MEdit LABを時熟した編集工学の具体例としたい。

 

12月15日(火)


 [1]とにかく徹底する
 自らの仕事や実験、表現を追求することはもちろん、他人のどんな可能性についても徹底していくこと。自在・他在を問わず、どんなところでも徹底的にネットワーキングやリンキング、トレーシングを行うことで、創発が起こる。

──穂積晴明『松岡正剛が語る、2020年に突出するための五箇条』


 

 初めて火元組となった12離の時、校長に「蜷川クンから徹底した用意がどんなものか習いなさい」と言われた。実際に、謙虚で一途で過剰すぎる「厳しい知」への徹底とはこういうものなのかということを目の当たりにしてきた。今年は、様々な実験を通し、徹底のヴァリエーションが広がった年だった。 
 夫の誕生日で西荻窪のgraceのカスタードケーキを食べる。油そばとダブルパンチだ。病理診断でカロリー消費(できるわけがない)。

 

 

12月16日(水)


 [2]ハイブリット性を意識する
 非一貫、非純粋、非正当。混じり気のある編集クレオールこそ今必要だ。抱える普遍より、放つ普遍を。異質な普遍性が持つ、動的な速度の中に、一気呵成の編集力が潜んでいる。

――穂積晴明『松岡正剛が語る、2020年に突出するための五箇条』


 

 病理診断のサインアウトに一日追われたが、最後の症例がとても珍しく、興奮して疲れが吹き飛ぶ。

 一貫していて、専門性が高く、正当かつ正統派であることが大学人に求められる資質である。そんなアカデミックな場において、どれだけ異質な”編集クレオール人”でいられるかがこれから試されるだろう。普遍を放つには、想像力と仲間が必要である。利他的であるほど放てる勇気と情熱を持てる。

 夜、病理解剖の予約が入ったと連絡が来る。亡くなった人よりも残された遺族を想う。

 

12月17日(木)


  [3]リアル・ヴァーチャルをつなげる
 VR時代のヴァーチャル・リアリティは面白くない。単なるデジタリゼーションではなく、ヴァーチャルでのもてなし・ふるまい・しつらいを今一度熟慮すべし。

――穂積晴明『松岡正剛が語る、2020年に突出するための五箇条』



 三密を避けるなら面影を追うしかない。あるいは触知感覚を想像力で補う方法を開拓する必要があるだろう。

 ヴァーチャル病理診断は、リアルよりも没入感がある。対物レンズを切り替える操作がなく、連続的なズーム感覚があるからだろう。でも、”顕微鏡わたし”の瞬きのようなレンズ切り替えがあった方が診断における勘はずっと働く。
 朝から病理解剖。CT画像や臨床経過を一緒に確認し、もてなし・ふるまい・しつらいを議論して、後輩を剖検室に送り出す。

 かわいい子にはひとりで解剖させよ。

 

12月18日(金)


 [4]観客を用意する
 全国の師範、師範代の目、遊刊エディスト、外部のメディアなど、ショーイングを見越して何かに晒される状態を維持すること。出来る限り、読む・書く・借りる・描くを連続的にこなしてみると良い。すると自分の得意手が見えてくる。特に「借りる」が重要。
――穂積晴明『松岡正剛が語る、2020年に突出するための五箇条』



 こんなに観客の目に晒されたことはいまだかつてなかったと思う。書きまくって描きまくってしゃべりまくって借りまくった1年だった。たくさん借りたのがいちばんうれしくてワクワクした。来年もつねに誰かとともに誰かのために在りたい。たくさんのわたしというよりたくさんのみんな状態でありたい。

 

12月19日(土)


 [5]本の見方を変える
 本は全人類史の束だ。なのに今だに何もされていない。恐ろしい読書家の小学生が出てきてもいい。百冊読みがゲーム化されてもいい。本のラッパーが出てきてもいい。本をもっとドラマチックにしなさい。


 

 本がメディアのお手本なのだろう。何事も「本っぽい」をハイパーターゲットにしていけば、面白くなるはずだ。とりあえず、百冊読みのゲーム化を目標にしてみたい。文巻をテキストにした[離]は、百冊どころか図書街のゲーム化である。

 

 

【をぐら離】

をぐら離 文巻第0週

をぐら離 文巻第0.5週

をぐら離 文巻第1週

をぐら離 文巻第2週

をぐら離 文巻第3週


  • 小倉加奈子

    編集的先達:ブライアン・グリーン。病理医で、妻で、二児の母で、天然”じゅんちゃん”の娘、そしてイシス編集学校「析匠」。仕事も生活もイシスもすべて重ねて超加速する編集アスリート。『おしゃべり病理医』シリーズ本の執筆から経産省STEAMライブラリー教材「おしゃべり病理医のMEdit Lab」開発し、順天堂大学内に「MEdit Lab 順天堂大学STEAM教育研究会」http://meditlab.jpを発足。野望は、編集工学パンデミック。