「子どもにこそ編集を!」
イシス編集学校の宿願をともにする編集かあさん(たまにとうさん)たちが、
「編集×子ども」「編集×子育て」を我が子を間近にした視点から語る。
子ども編集ワークの蔵出しから、子育てお悩みQ&Aまで。
子供たちの遊びを、海よりも広い心で受け止める方法の奮闘記。
近づく惑星
「土星と木星がこんなに接近するのは400年ぶりなんだよ」と長男(12)、12月5日からほぼ毎日、マンションの5階にカメラと三脚を持って上がって観察し始める。
時々、長女(7)もついていく。南西の空にひときわ明るく木星が光っている。斜め上にあるのが土星だと指さすと長女も「わかるよ!」 そのあと「土曜日でも木曜日でもないのに、土星も木星も見えるんだね」と続けたので意表をつかれた。このアブダクションから、長男は「各曜日に名前が同じ惑星を撮ることってできるのかな?」と考えをめぐらせていた。もしできたら愉快な企画になりそうだけど、一晩中起きてないといけないかも、という。
肉眼でも、日々近づいているのが分かる。惑星の動きがこれほどドラマチックだったとは。
最接近の夜
最接近の12月21日、晴れ。「ああ、今年の運をぜんぶ使い果たしたかも!」 長男、浮き立ちながら超望遠カメラを構える。私の目には一つの星にしか見えない。星占いの時代なら大変な騒ぎになったのではと想像する。
階段を下りながら、まったく一つの星に見えて驚いたと話すと「えっ、自分には一つには見えなかった。二つの星がくっついて見えた」と息せききってしゃべり始めた。
「それ、すごくおもしろい。コンピューターのシミュレーションでどんな星がどこに現れるかということは予想できるんだけど、本当にどう見えるかというのはプログラムでは出せない。だから実際に起こってから、見て確かめるのが大事とされてるんだ」。
天文サイトには特設アンケートコーナーがあるという。回答すれば結果が見られるからぜひ参加してみてと勧められた。
部屋に帰って、真っ先に回答する。400人ぐらいが答えている。見え方には意外とばらつきがある。離れて見えていたという人も少なくない。「気象条件や視力の問題があるからね。そういうものだと思う」という。
そのあと、写真をPCのモニターで開き、いくつも撮った中でどれが一番写りのいい写真かを検討する。ガリレオ衛星(ガリレオが発見したイオ、エウロパ、ガニメデ、カリスト)が4つとも写っていて、木星を挟んで二個ずつの配置になっていること、衛星と同じぐらいの距離のところに土星が写っていることを確認でき、「こんなことはめったにない!」とふたたび興奮する。
前の最接近は1623年だった。『情報の歴史』を開いてみると、ガリレオ・ガリレイ『黄金計量者』出版とある。次のページ、1632年に地動説の文字があった。
2021年最初の天文観測
翌日、もっとも写りの良い写真をペイントソフトで開き、『星ナビ』1月号と見比べながら、天体の名前を書きこんでいた。ホームエデュケーション家庭をつないで作っている掲示板にもアップする。(※アイキャッチ画像)
撮ったままの写真をただ貼り付けるだけじゃ、おもしろさが伝わらないというのに気づいたのはインタースコアの「場」の賜物だ。
22日以降も、離れていく土星と木星を折々に撮りつつ、天文投稿サイトをチェックして、自分よりももっと木星の模様や土星の環が鮮明な写真を見て、すごいなあと唸る。
クリスマスの翌日が誕生日で、13歳となる。夫が「ティーネイジャーだ」というといかにも嫌そうな顔をしたので、簡単にお祝いする。
2021年1月1日午後6時、天体観測初めと称し5階に上がる。が、南西にだけ雲が浮かんでいて土星と木星は見えず。「これも、天体観測会の“あるある”らしい」。笑って次の晴れを待てるようになっていた。
〇〇編集かあさん家の本棚
『星ナビ』1月号
http://www.astroarts.co.jp/hoshinavi/
松井 路代
編集的先達:中島敦。2007年生の長男と独自のホームエデュケーション。オペラ好きの夫、小学生の娘と奈良在住の主婦。離では典離、物語講座では冠綴賞というイシスの二冠王。野望は子ども編集学校と小説家デビュー。
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