レッツMEdit Q!【おしゃべり病理医67】

2022/11/16(水)08:17
img

 イシス編集学校の[離]を受講してから、ずっと[離]のような学びの場を創りたいと思っていた。その夢に少しだけ近づけたような気がする。順天堂大学内に「MEdit Lab 順天堂大学STEAM教育研究会」を今月、発足した。11月9日には、研究会サイトを正式オープンし、連載コラムもスタートさせた。

 

 STEAM教育は、もともとSTEM教育として、アメリカで誕生した実戦的な理数教育理念である。ソ連のスプートニク一号の打ち上げにショックを受けたアメリカ(スプートニク・ショックと呼ばれている)は、自国民の理数教育強化に乗り出し、国家戦略としてこの教育を推進してきた。日本では、10年以上遅れてゆとり教育の揺り戻しとして注目され、内閣府が主導となって、STEAM教育を推進するようになったのは、ここ4年ほどである。日本は、特にリベラル・アーツの弱体化も問題となっているために、STE「A」M教育と「リベラル・アーツ」の「A」を含んで、理数教育に社会問題などを重ねあわせる教育プログラムが模索されている(STEAM教育の歴史については、MEdit歴史年表もぜひ参照ください)。

 

 STEAM教育を知れば知るほど、ほぼこれは編集工学ではないか!と私は本気で思った。学際的な取り組みでもあり、リベラル・アーツとエンジニアリングが融合するとなれば、まさにである。「E」はEngineeringに加えて、Editorialの略でもあるだろうし、「M」はMathmaticsではなく、Medicineだっていいはずである。どんな学問分野も横断していける情報編集の方法こそが注目されるべきだし、“学び方を学ぶ”ということがSTEAM教育の本質だろう。実際、経済産業省「未来の教室」STEAMライブラリー事業にアプライした際は、「EはEditのEで、MはMedicineのMだから、MEdit Labなんです」と、胸を張って企画書を提出した。

 

 幸い母校の順天堂大学は、とても懐深く私のやや強引な主張を受け入れ、それならば好きに活動してみなさいと、研究会発足をサポートしてくれた。順天堂大学は今年、臨床検査技師や臨床工学技士を育てる医療科学部をスタートさせ、来年度以降には健康データ・サイエンス学部や薬学部を創る構想もあり、医療系あるいは健康総合大学として発展していこうとする中、学部を横断して様々な取り組みを始める土台作りをしないといけないという機運も盛り上がっていたのも大きいと思う。

 

 MEdit Labは、職種や立場の垣根を超え、医学や医療と編集工学を共に考えるコミュニティである。今後は、学部を横断し、受験生と在校生と教員が混じり合うイベントやワークショップを開催してインタラクティブな場も創っていきたいが、一方、つねにサイトからも様々な”編集医学情報”を提供しようと思っている。すでに研究会サイトには、前述のように連載コラムの第一弾が公開されている。以下、金宗代さんのキャッチコピーと佐伯亮介さんデザインのバナーとセットでご紹介したいと思う。

 

■レッツMEdit Q!
MEditってなんだろう? 五臓さんって誰のこと? MEditなテーマのいろいろを「Q」の形で発信します。「Q」にはクエスチョンだけでなく、クォーテーションも、クエストやクオリティーの意味も重ねているんですよ。

 

■おしゃべり病理医スタンプ図鑑

おしゃべり病理医こと、小倉加奈子先生はMEdit特製のLINEスタンプをつくっています。とってもかわいい細胞スタンプやウイルススタンプのその一つ一つには、実は深~い深~い意味が込められています。スタンプで遊びながら、ついでに医学の知識も磨いちゃおう!

 

■おでかけしんしん 診療すごろく

“しんしん“こと發知詩織先生といっしょに「診療すごろく」で遊びませんか。しんしんがツアーガイドとなって、病院のこと、検査のこと、そして専門職のことをすごろくのコマを辿りながら、ご案内します。

 

■医学に効くほん!

「ほん!」って、そう、“本”のことです。医学部受験に役立つ本の紹介かなと思ったアナタ! はい、その通りです(笑)。でも、ごっほん! いいですか、科学、恋愛、戦争、ITなどなど本のテーマは全方位、縦横無尽に駆けめぐります。

 

■ふしぎな医学単語帳

医学単語にはふしぎなネーミングがたくさんあります。たとえば、「もやもや病」なんて病名もあるんです。いったいどんな症状なのか、病気のルーツもたどりながら、ときには“ふしぎなネーミング“を飛び越えて、“ネーミングのふしぎ“にさえ迫ります。

 

■ハンガリーで医者になりました

医学部は国内だけじゃない! いまや医学留学も当たり前? ハンガリーの医学部を卒業した「てるくん」が、海外医学部のサバイバル術を伝授する。読みながら英語学習もできる、いろいろお得な日英対訳コラム。

 

■ミカタの東洋医学

ごくりと「読む漢方薬」。チクリと「読む鍼灸」。読めば、ココロもカラダもととのうこと、請け合いです。東洋医学を“味方“につけると、世界の“見方“もガラリと変わる。華岡センセイのツボ押し指南にお任せあれ。

 

■言語聴覚士  コトバト通信

大阪生まれ、趣味は宝塚観劇。とってもマイペースな性格の竹岩直子先生は言語聴覚士。言語聴覚士はリハビリ専門職の一つで、なかでも「話す」「聞く」「食べる」という機能をサポートするお仕事です。コトバやカラダにまつわるお話をたのしくお届けします。

 

以上、現在開始されている連載コラムでした! これからも様々な職種のコラムニストが続々登場の予定。どうか、御贔屓に! 今後、イシス編集学校とのコラボもあるかもしれません~!

 

●MEdit Lab 順天堂大学STEAM教育研究会 https://meditlab.jp

●MEdit Lab 順天堂大学STEAM教育研究会のポスター

MEditLab_poster_omote
MEditLab_poster_ura


  • 小倉加奈子

    編集的先達:ブライアン・グリーン。病理医で、妻で、二児の母で、天然”じゅんちゃん”の娘、そしてイシス編集学校「析匠」。仕事も生活もイシスもすべて重ねて超加速する編集アスリート。『おしゃべり病理医』シリーズ本の執筆から経産省STEAMライブラリー教材「おしゃべり病理医のMEdit Lab」開発し、順天堂大学内に「MEdit Lab 順天堂大学STEAM教育研究会」http://meditlab.jpを発足。野望は、編集工学パンデミック。