編集かあさん相談室◎575はすぐ作れますか?

2020/01/26(日)12:09
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「子どもにこそ編集を!」
イシス編集学校の宿願をともにする編集かあさん(たまにとうさん)たちが、
「編集×子ども」「編集×子育て」を我が子を間近にした視点から語る。
子ども編集ワークの蔵出しから、子育てお悩みQ&Aまで。
子供たちの遊びを、海よりも広い心で受け止める方法の奮闘記。


 

Q:「動物園に俳句をプラス! おやこ吟行隊が行く」を読みました。地元の動物園でもやってみたいのですが、子どもたちは俳句をいきなり作れるものでしょうか? (Mさん・山梨県)

 

A:
記事を読んでいただき、ありがとうございます。
こちらの疑問、ごもっともです。お察しのとおり、俳句をいきなり作るのは少し難しいと思います。ある程度家庭でやっておく、または一度ワークしておくことをおすすめします。

 

絵本ワークショップでは、動物園吟行の前に一度、『なつの575』と題したワークショップを行いました。その時のプログラムをご紹介し、回答に代えたいと思います。

 

次のような順序で進めました。

 

[1]じゅんびうんどうとしての絵本の読み聞かせ

『ことばのえほん かっきくけっこ』
(谷川 俊太郎・さく、堀内 誠一・え、くもん出版)

五十音の「らしさ」をポップな絵で表した絵本です。“かっきくけっこ”、“ささししすせせそ”、“なーに ぬねーの”。読むだけで、日本語の音の多様なイメージを体感できます。ことばと音の関係を感じ、俳句づくりにむかう「じゅんびうんどう」に最適です。

 

[2]俳句にしたしむ絵本の読み聞かせ

『どうぶつ句会 オノマトペ』
(あべ弘士・作絵、学研)

動物たちがオノマトペの俳句をつくるというユーモアたっぷりの俳句絵本。フクロウ、キジバト、キツネ、ゾウなどが登場し、それぞれのらしさと自然をミックスした句を披露します。ゆかいな俳句を聞きながら、575のリズムに親しめます。ちなみに著者は旭山動物園の元・飼育係。

 

読み聞かせの様子

 

ここまでの俳句づくりに入る前の準備はけっこう大事だと感じています。

 

[3]ようやく俳句づくり

  1. 「575」のリズムと仲良くなる。
     …手をたたいて575のリズムを確認。
  2. 「季節の言葉」をいれる。
     …「夏」の言葉をいれるため、夏の写真を6枚用意。
  3. ワークシートとメモ用の白い紙を使う。
     …いきなり作らないのが大事。メモ用の白い紙に浮かんだ言葉をメモしながらつくる。

 

夏の写真を入れたワークシート

 

[4]困っている子どもに対して

  • 音の数がつかみにくい子どもの場合、丸いシールを5・7・5にならべて、視覚的に見えるようにしました。
  • 言葉につまっている子どもには、「何色かな? どんな音がする?」と問いかけて、言葉を組みあわせるようにヒントを出し、完成までに細かいステップを入れました。

 

シールを貼って音の数を見えるようにしたもの(左)
できあがった“575絵本”の表紙(右)

 

俳句づくりに奮闘する親子たち

 

 

実は、子どもには自由型の短い詩のほうが作りやすいのですが、「できた!」感がもちにくい、評価しにくいという面があります。そうした面からも、しっかりした型がある「575ワーク」はおすすめです。

 

もし、お近くの動物園で開催されましたら、ぜひご様子をお聞かせくださいね。

 

  • 吉野陽子

    編集的先達:今井むつみ。編集学校4期入門以来、ORIBE編集学校や奈良プロジェクトなど、18年イシスに携わりつづける。野嶋師範とならぶ編集的図解の女王。子ども俳句にいまは夢中。

コメント

1~3件/3件

川邊透

2025-06-30

エディストの検索窓に「イモムシ」と打ってみたら、サムネイルにイモムシが登場しているこちらの記事に行き当たりました。
家庭菜園の野菜に引き寄せられてやって来る「マレビト」害虫たちとの攻防を、確かな観察眼で描いておられます。
せっかくなので登場しているイモムシたちの素性をご紹介しますと、アイキャッチ画像のサトイモにとまる「夜行列車」はセスジスズメ(スズメガ科)中齢幼虫、「少し枯れたナガイモの葉にそっくり」なのは、きっと、キイロスズメ(同科)の褐色型終齢幼虫です。
 
添付写真は、文中で目の敵にされているヨトウムシ(種名ヨトウガ(ヤガ科)の幼虫の俗称)ですが、エンドウ、ネギどころか、有毒のクンシラン(キョウチクトウ科)の分厚い葉をもりもり食べていて驚きました。なんと逞しいことでしょう。そして・・・ 何と可愛らしいことでしょう!
イモムシでもゴキブリでもヌスビトハギでもパンにはえた青カビでも何でもいいのですが、ヴィランなものたちのどれかに、一度、スマホレンズを向けてみてください。「この癪に触る生き物をなるべく魅力的に撮ってやろう」と企みながら。すると、不思議なことに、たちまち心の軸が傾き始めて、スキもキライも混沌としてしまいますよ。
 
エディスト・アーカイブは、未知のお宝が無限に眠る別銀河。ワードさばきひとつでお宝候補をプレゼンしてくれる検索窓は、エディスト界の「どこでもドア」的存在ですね。

堀江純一

2025-06-28

ものづくりにからめて、最近刊行されたマンガ作品を一つご紹介。
山本棗『透鏡の先、きみが笑った』(秋田書店)
この作品の中で語られるのは眼鏡職人と音楽家。ともに制作(ボイエーシス)にかかわる人々だ。制作には技術(テクネ―)が伴う。それは自分との対話であると同時に、外部との対話でもある。
お客様はわがままだ。どんな矢が飛んでくるかわからない。ほんの小さな一言が大きな打撃になることもある。
深く傷ついた人の心を結果的に救ったのは、同じく技術に裏打ちされた信念を持つ者のみが発せられる言葉だった。たとえ分野は違えども、テクネ―に信を置く者だけが通じ合える世界があるのだ。

山田細香

2025-06-22

 小学校に入ってすぐにレゴを買ってもらい、ハマった。手持ちのブロックを色や形ごとに袋分けすることから始まり、形をイメージしながら袋に手を入れ、ガラガラかき回しながらパーツを選んで組み立てる。完成したら夕方4時からNHKで放送される世界各国の風景映像の前にかざし、クルクル方向を変えて眺めてから壊す。バラバラになった部品をまた分ける。この繰り返しが楽しくてたまらなかった。
 ブロックはグリッドが決まっているので繊細な表現をするのは難しい。だからイメージしたモノをまず略図化する必要がある。近くから遠くから眺めてみて、作りたい形のアウトラインを決める。これが上手くいかないと、「らしさ」は浮かび上がってこない。