始まりがあれば終わりがある。
「一生に残る一週間を」とほろよい麒麟教室師範代 尾島可奈子が焚きつけた46[破]知文ATウイークは、5月16日(日)18時の〆切をも
文章は「ポッと出」で決まる。遊刊エディスト紙上でも強調されたが、もうひとつ忘れてはならないポイントがあった。それは「結び
〆切3日前の深夜2時、師範 福田容子は「もしも限られた推敲の時間をどこに賭けるかとなったら」と推敲の優先順位を伝えていた。ゆかりカウンター勧学会、王冠コロナ勧学会に筆圧高く書き込まれたのは、「迷わず最後。結び一択です」とのガイド。
結びの一文がなぜそこまで重要なのか。それは、書き手のメッセージがそこにこそ結晶するからである。冒頭で仮説をうちたてたならば、それを読者に納得のうえ手渡すのがスジだ。脈絡なくポッとおかれたものに、読み終わるころにはゆるぎない存在感をドンともたせるのが書き手の覚悟である。
福田は、ポッと出コレクションに返歌をつけるように、過去のアリスとテレス大賞作品のなかから優れた「結びの一文」を選んで届けた。名付けて「結構コレクション」。福田の7選とコメントに、一部番記者の編集を加えて紹介しよう。
■知文AT大賞 結構コレクション
▼背後から「ぼくら」のカミソリが狙う。
『悪童日記』アゴタ・クリストフ 第41期 [破] アリスとテレス賞大賞■H.M.(百銭汀食教室)
本と著者と800字を引き取り喉元にカミソリを突きつける切れ味の妙。
▼世界が収まる程に、ひきだしは広い。
『ひきだしにテラリウム』九井諒子 第38期 [破] アリスとテレス賞大賞■S.Y.(玲子組曲教室)
幾重にも重ねたしかけを「ひきだし」で引き受ける結構が巧み。
▼そう、光だ、音楽だ、逃走だ。
『ヘルメスの音楽』浅田彰 第12期 [破] アリストテレス賞大賞■M.N.(下駄ばき遍路教室)
加速して駆け抜け飛び去ってゆく、まさにヘルメスのサンダル!
▼そして、それを飛び越えようとしたのが石牟礼道子だった。
『椿の海の記』石牟礼道子 第37期 [破]アリスとテレス賞大賞■M.K.(ノードチェンジ教室)
本を書くことで、著者が何を成し遂げたのか。発見して言い切る。
▼入門書という名の結納品である。
『稲垣足穂さん』松岡正剛 第39期 [破] アリスとテレス賞大賞■T.S.(南天ささら教室)
一貫したメタファーを凝縮させたニューワード「結納品」がキマる。
▼本作は、想が恐怖を触媒として猿から人間へ至る、切実で健やかな道のりを描いた作品なのだ。
『神の左手悪魔の右手』楳図かずお 第35期 [破]テレス賞大賞■Y.S.(彩月ミシン教室)
独自のヨミを堂々と語りきった意気やよし!
▼「磯椿が咲き残っている」ことに気づきたいのだ。
『椿の海の記』石牟礼道子 第40期 [破] テレス賞大賞■K.A.(サラーム同堂教室)
一貫した隔靴掻痒を託して余さず、切実あふれてなお止まず。
800字の知文の締めくくりは、「100メートル走を駆け抜けるイメージで」と福田は申し添えた。知文ウイークをなりふりかまわず走り抜いた学衆も多いことだろう。ゴール直後、ゆかりカウンター教室学衆Tは「[守]はそよ風、[破]は嵐と言われていましたが、本当でした」と立ち尽くした。
締切後、強風のやんだ今だからこそできる稽古もある。ジャイアン対角線教室学衆Iは、教室仲間の作品に感想を寄せ、アジール位相教室師範代畑勝之は、このプロセスで身についたものを振り返るよう鼓舞した。エントリー翌日、すでに教室にはクロニクル編集術のお題が届けられている。共読で、振り返りで、次なる稽古で、学衆は自分なりのケリをつける。
画像:野嶋真帆
協力:寺平賢司
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●43[破]セイゴオ知文術に向けて 42[破]受賞作の稽古模様
梅澤奈央
編集的先達:平松洋子。ライティングよし、コミュニケーションよし、そして勇み足気味の突破力よし。イシスでも一二を争う負けん気の強さとしつこさで、講座のプロセスをメディア化するという開校以来20年手つかずだった難行を果たす。校長松岡正剛に「イシス初のジャーナリスト」と評された。
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