「ずいぶん頑張ったけど、もっと高く飛べるはず」
「みなさんの奥にある切実があらわれていない」
「届ける相手のことを考えた?」
10月1日(土)、50[守]の開講に向けた伝習座のフライヤー発表コーナーでのことだ。師範代に指導陣(学匠・番匠・師範・花伝所長・律師・花目付)からの檄が飛んだ。極めつけは、校長、松岡正剛の「創発的な場に臨むリスクをとっていない。Zoom画面の枠の中に留まっている」という言葉だった。
第79回感門之盟の冠界式で、校長から50[守]師範代の銘々に教室名が授けられた。その直後に出されたお題は、まず「教室名フライヤー」をつくるというものだ。与えられた教室名を自身で深め、ひとつの世界として1枚の作品にあらわす。続いて、フライヤーを使って、イシス編集学校の有り様を語るというものだ。
番匠の景山和浩が、制作スタートの号令をかける。与えられたのはたったの7日間。注意のカーソルを研ぎ澄ませ、常に「教室名・編集稽古・イシス」について考える「いつも編集状態」のカマエで、仮留で案を出し続けることが肝だ。受けて立つ景山も容赦ない。「文字と写真、配置している意味に必然性がほしい」「全体がきれいにまとまりすぎ」「教室ならではの言葉にしたい」。23人の師範代に高速に発破をかける。景山と14回もの往復をする者、23枚もの案を出す者、最終稿を出したにも関わらず新案を出す者までも登場。一同が混然一体となってラリーを繰り広げた。
伝習座の本番で、指導陣が目を細めたのは、実現したい教室の世界観を垣間見せた数名の師範代に対してのみだった。
●モモめぐむ教室・中村裕美師範代
中村は、モモと時間泥棒のイメージを本楼のスケッチに託し、教室・勧学会・別院の仮想平面図を重ねた。更に、フライヤー史上初、裏面も作成した。「教室はお金では測れない格別の時間を共にしよう」と未だ見ぬ学衆に語りかけた。幾重も重ねた編集が相手に届けられるのは、間もなくだ。
●悠阿弥アメリ教室・仁禮洋子師範代
手描きとデザインとフォントの三位一体で、教室名の要素を散りばめた仁禮は「10年前の昨日(9月30日)は『松丸本舗』が閉店した日」と切々と話した。教室名のキーワード「悠人・阿弥・アメリ」と『松丸本舗』に共通するのは、徹底的に数寄を遊ぶこと。自分をも編集し尽くすと決意表明した。
イシス編集学校では、あらゆる情報や編集を動的なものと捉える。絶えまないインプットとアウトプットを重ねながら、大きな流れを進んでいくのだ。来し方から行く末の旅の途上で、束の間、形を与えられるのが「作品」と言える。渾身のフライヤー制作も発表も、終えた瞬間に次の編集の与件となり、新たな編集がかけられる。教室を預かる師範代になることは、学衆と共に絶え間ないインとアウトを重ねながら「途上」を歩き続けることなのだ。
伝習座で負った創が、師範代を開講の用意へと掻き立てる。学衆のあらゆる動向に注意のカーソルを当て続け、世界にたった一つしかない教室という世界の編集に臨んでほしい。少し先に「途上」を歩いてきた指導陣の静かなエールを受け、師範代は今この瞬間も道を進む。
■イシス編集学校[守]基本コース 第50期 受付中!
受講期間:2022年10月24日(月)~2023年2月19日(日)
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阿曽祐子
編集的先達:小熊英二。ふわふわと漂うようなつかみどころのなさと骨太の行動力と冒険心。相矛盾する異星人ぽさは5つの小中に通った少女時代に培われた。今も比叡山と空を眺めながら街を歩き回っているらしい。 「阿曽祐子の編集力チェック」受付中 https://qe.isis.ne.jp/index/aso
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