中二病という言葉があるが、この前後数年間は、”生きづらい”タイプの人にとっては、本格的な試練が始まる時期だ。同時に、自分の中に眠る固有のセンサーが、いっきに拡張し、世界がキラキラと輝きを放ちはじめる時節でもある。阿部共実『月曜日の友達』は、そんなかけがえのない瞬間をとらえた一編。
ついに花伝所が動いた。第78回感門之盟。インタビューという名のタレントスカウト。差し掛かりのキワで尻込みしている“才(タレント)”たちを編集コーチの養成コースである花伝所に呼び込まんとするのは所長田中晶子と深谷もと佳・林朝恵の両花目付だった。
その公開スカウトの場に声をかけられたのは、いずれも師範代からのお墨付きの突破者三名だ。しかし才気あふれる彼らがインタビューで放った言葉はやや意外なものだった。
「自分は突破できないと思っていた」。そう語るのは泉カミーノ教室の鍋島知将。そんな鍋島を支え続けていたのは[守]や[破]の同期や師範、師範代の存在だったという。時たま音だま教室の高本沙耶は自身の編集を「自分は何も持っていない。だから今あるものをどう使えば最大限に面白くなるかを常に意識している」と分析してみせた。師範や師範代から「場にある情報を自分なりに言い換えるのが抜群にうまい」と評される秘訣が垣間見えた瞬間だ。
己の“内”にあるものだけに頼るのではなく、“内”にある不足ごと“外”と繋がることで編集道を突破してきたことが伺える。
恩師の指南における知られざる悩みを知って涙ぐんだ万事セッケン教室の山田環は「学衆と師範代の一番の違いは何か」と花伝所スカウト陣に問う。
深谷花目付は「学衆は問いを与えられるだけ。しかし師範代は問いを相手に“返”していく」のだと言う。その方法を学んでこそのイシスクオリティだと言い切る。また「編集人ならば自分のためではなく、誰かの依り代のような存在になってほしい」と伝えるのは林花目付だ。次世代の学衆のために師範代となって編集を伝えることの重要性を訴える。
「様々な障害のようなものがあればあるほど花伝所をお薦めしたい」という田中所長の想いには、不足から生まれる編集に対する確信が広がっている。
このスカウト陣の熱い想いに背中を押されるように、三名の突破者のうち二人はすでにこの春開講の37花に入伝を決意した。
花伝所は彼らを含むたくさんの“才”と共に歩き出す。「ない」から「成る(なる)」を経て「ある」へ向かっていく。
撮影:後藤由加里
神尾美由紀
編集的先達:手塚治虫。タップダンスにベリーダンス。北海道が生んだ編集的に踊れる師範。感門之盟でも舞台でタップを披露してみせた。ふわっとした見た目だが、リアルワークにも定評あり。自称・お子ちゃまで教室名にピノコを冠する。
【札幌10/13(日)】エディットツアーJapans ~北の伝統文化で編集稽古~時間と自然をカムイする
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コメント
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2025-10-29
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2025-10-28
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