「痛みを抱えて進め」
10月初めに行われた50[守]第1回伝習座、師範の相部礼子の言葉を覚えている50[守]新師範代は多いだろう。むしろ、教室が始まったからこそ、その意味を噛みしめているのかもしれない。
伝習座での用法語りを相部はフライヤー発表で生まれた新師範代の「創(きず)」への言及から始めた。発表前の緊張から解放されたのも束の間、本楼の指導陣からの厳しいエールに新師範代は背筋を伸ばした。そこに、前期49[守]速修コースでの師範代登板経験を持つ相部の言葉。近視眼に陥っていた新師範代のアテンションはグッと4ヵ月後に向かった。
イシス編集学校の[守]基本コースの用法1の基本は「注意のカーソル」だと相部は言い切った。日頃、「注意のカーソル」は無意識に動き回り、情報をあつめていく。無意識とはいえ、「注意のカーソル」には好奇心や興味関心がまとわりついているものだ。だからこそ、編集稽古の回答には学衆それぞれの数寄が垣間見えるのだ。001番の「コップは何に使える?」でも同様。シンプルなお題ながら、多種多様な回答が集まり、無色透明だった教室が色づいていく様子に声をあげる師範代も多い。
情報を「わける・あつめる」ことを学ぶ[守]の冒頭のお題では、この「注意のカーソル」を意識的に動かしていくことを学ぶ。そうすることで、学衆は情報の見え方が変わることを実感し、イメージの広げ方を知る。私たちの「注意のカーソル」はマーケティングなどを通じて実は「誰かに乗っ取られている」と言える。「奪われた注意のカーソル」を取り戻し、束縛のない自由な状態に自らを置くためには、「注意のカーソル」の動きに意識的になることが大前提だ。そのために、師範代たちが回答にくまなく目を通し、「注意のカーソル」の動きの痕跡を探し、指南を通じて学衆に返していくのだ。
学衆の回答から見える注意のカーソルの動きを感じ取ることは002番の指南だけではない。全ての編集稽古に通ずる。目先のことに捉われず、全体を見て進め。相部の用法語りは教室が始まり、指南を届け始めた今こそ味わい直したい。前に進むためにこそ、振り返る。50[守]を加速させていくためにも新師範代たちはフィードバックループを回し始めている。
佐藤健太郎
編集的先達:エリック・ホッファー。キャリアコンサルタントかつ観光系専門学校の講師。文系だがザンビアで理科を教えた経歴の持ち主で、毎日カレーを食べたいという偏食家。堀田幸義師範とは名コンビと言われ、趣味のマラソンをテーマに編集ワークを開催した。通称は「サトケン」。
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