遊刊エディストが変わろうとしている。創刊から4年たったいまでも、イシス編集学校にはまだスクープされていない「事件」がある。この現場に潜入し、記事として届けたい。弥生某日、エディスト編集部・上杉公志の声かけにより、その願いに共鳴する6名の腕利き師範代が集結した。この記事は、キックオフミーティングで行われた特別レクチャーの記録である。
職場で、学校で、家庭で、傾聴の重要性が叫ばれている。「聴く≒インプット」と考えれば、観る、読む、食べるなども同様に大事だ。編集学校でもお題文や回答、指南をどう書くかより、まずどう読むかだ。注意のカーソルの向け方がその後の出来を左右する。
だが、話し手・聴き手双方の世界の見方が変わる「聴く≒観る≒読む」ができる人は少ない。ただ「自分と同じ」を探して「いいねボタン」を押すだけ。これではビッグデータという名の承認印が蓄積されるだけだ。校長松岡正剛は1601夜『ビッグデータを開拓せよ』で、これを「過剰結合状態」と指摘する。
そんな中、遊刊エディスト編集部・上杉公志が立ち上がる。編集学校の価値化されていないネタを救出すべく、JUSTライターチームが結成された。渋谷菜穂子、畑本浩伸、福井千裕、北條玲子、米田奈穂、清水幸江。全員師範代経験者だが、ジャーナリスト未満。デビューは4日後に控えた感門之盟。
足が竦むチームに上杉がプレゼントを投げ込んだ。エディスト記者梅澤奈央によるZoomレクチャーだ。梅澤の本業は企業の話を聴き、社会に示すライター。聴き、問い、結ぶ手腕が『推しメン』にも結実している。
「書く」は難しい。だがその前に立ちはだかる「聴く≒観る≒読む」の壁は高い。虫の目で急所に針を刺し、鳥の目で社会へ広げる梅澤であれば、聴く方法も鋭いはずだ。そう思ってインタビューのコツを質問したら、意外な言葉が返ってきた。
「まずはおしゃべりするかな」
驚いた。が、落ち着いて考えれば当然だ。いきなり針を見せられたら相手は身構えるだけ。すでに急所だとわかっているところを突いても新しくない。だから、まずおしゃべりで氷を溶かし、ガチガチな土に空気を入れるのだ。
レクチャーの冒頭、梅澤は参加者一人一人の顔を見ながら「なにかしらの同期」と共通項を差し出し、「私よりコンパイルもエディットもうまい」と参加者を評価した。話を聴く相手の背景となる《地》と自分の《地》を重ね、自身の温かさで、参加者の地表の氷を「おしゃべり」で溶かしたのだ。
このあと、梅澤はエディストライター的注意のカーソルの使い方を伝授しはじめる。「まず《地》=ソトを見よ」。スターウォーズが宇宙全体の描写から始まるように、地模様を描け、と続けた。
今、社会では何が起きているのか? 読み手の関心はどこにあるのか? 《地》、すなわち舞台設定がよければ良い記事が書ける、と梅澤は豪語する。ワールドモデルの出来が物語の出来を左右する。物語編集術を学んだ読者なら、ことの重要性がわかるだろう。
書くコツは書く前のネタ選び、つまり目利きにある。離総匠太田香保曰く「ダメなネタはどう握ってもダメ」なのだ。ネタを選ぶには、まず相手からネタのタネを引き出さなければならない。そのために「おしゃべり」で《地》を耕すのだ。
聴かなきゃ!と力んでいた参加者の心の地面が、わずか1時間でふかふかに生まれ変わり、芽吹きの準備が整った。そこには猫を抱きながら柔らかく微笑む梅澤の姿があった。
清水幸江
編集的先達:山田孝之。カラオケとおつまみと着物の三位一体はおまかせよ♪と公言。スナックのママのような得意手を誇るインテリアコーディネーターであり、仕舞い方編集者。ぽわ~っとした見た目ながら、ずばずばと切り込む鋭い物言いも魅力。
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