中二病という言葉があるが、この前後数年間は、”生きづらい”タイプの人にとっては、本格的な試練が始まる時期だ。同時に、自分の中に眠る固有のセンサーが、いっきに拡張し、世界がキラキラと輝きを放ちはじめる時節でもある。阿部共実『月曜日の友達』は、そんなかけがえのない瞬間をとらえた一編。
 
                                                                                 
        
        
         
                         
                感門之盟での心づくしの「もてなし・しつらい・ふるまい」を支えているのが、編集学校の有志による「イシス感門団」だ。
(『インタースコア』253ページ)
「感門団」をご存知だろうか。
2012年に村井宏志師範を中心に発足し、感門之盟やイシスフェスタなどのイベントでもてなし、しつらい、ふるまい、と様々な活動を続けてきたイシス有志のボランタリー集団だ。受付、結餉・おやつの準備や説明、誘導、落札市などのプチイベント…感門団の活動の場は多様。
師範・師範代などといったロールは関係なく、それぞれが意見や気付きを交わし、率先して準備や当日の担当を務めあげる柔軟な組織である。

オンラインになる前の感門団、会場のあちこちで大活躍
コロナ禍により感門之盟がオンラインになってから、感門団の活動内容は大きく変わったが、ハレ舞台を支え続けていることは変わらない。
「イーてれチーム」「Zoomチーム」「リアル感門団」と形態を変えた感門団。彼らの活躍にぜひ注目してほしい。
感門之盟がオンライン配信になって新設されたのが「イーてれチーム」だ。配信とほぼリアルタイムに、次第の詳細や、感門される師範代の感門表や先達文庫などプラス情報をEditcafeから届ける。
チーム編成はリアルとオンラインのデュアル。チームリーダーの豊田香絵師範代はゴートクジ本楼の片隅にスタンバイし、時間通り進まないことが多い次第に合わせて、投稿の指示「Q」を出す。
本楼にはいるものの舞台自体を見ることができない場所から、耳から入る音とPCに映る配信画面を頼りにして「Q」を的確に出す姿は何とも頼もしい。
「机も電源もあるし、意外と落ち着くんですよ」と薄明りの中、笑う豊田リーダー。この落ち着きあってこそのリーダーロールだ。

本楼の暗がりから配信Q出しをする豊田リーダー
そして配信は、全国各地にいる約15名ほどのメンバーが担っている。
感門之盟2日間の配信担当を決め、当日のやり取りはSNSを利用。豊田リーダーからのQ出しを受けたり、登壇者順の変更連絡をしたり、事前に渡された「配信元ネタ台本」の修正確認を行っている。
「配信元ネタ台本」は、感門団統括をする学林局の衣笠純子が事前に作成し、イーてれチームに渡す「はず」だった。準備が遅れに遅れ、衣笠が台本を書きあげるのが本番前日の夜中。豊田リーダーも配信するメンバーも、当日の朝に最終台本を目にするのだ。
だがここからがイーてれチームの本領発揮だ。自分の配信担当の文章を確認し、その上で全体を読み「ここが直っていない」「これって、○○ということですよね?」「この部分、こうします!」とチャットが飛び交う。全員の編集力が結集し、ほぼリアルタイムの配信が行われた。
短時間でのダントツ編集は日頃の学びの成果。しかも台本の仕上がりが遅いことすら受容し、オンライン上で活動する。イシス編集学校だからこそ生まれた、ぬくもりいっぱいの編集集団だ。
オンラインになっても、数百名の参加者がかわらず感門之盟に集う。
Zoomホストは学林局の運営側で担うが、配信の安定や演出に関わる部分も担っており、ホストが参加者への細やかな応答をしきれない。そこをサポートするのがZoomチームだ。
事前に案内されたZoom会議室に入れないという問い合わせ、Zoomに入った後のZoom表示名の変更、ブレイクアウトルームのオンラインとリアルでのフォロー、ミュート対応、登壇者のアクセス確認…。
Zoomチームが対応する場面は多岐にわたる。

ゴートクジ2階の学林局の居室から手厚いサポート
今回の感門之盟では、統括でもある衣笠がテクニカルでの担当もあり、感門団への目配りが休憩時間しかできない状態だった。
「Zoomチームを全面的にお願いしたい」という衣笠の懇願を引き取ったのは、チームリーダー後田綾乃師範代。

手前がチームリーダーの後田師範代。奥は花伝所の錬成師範ながらZoomチームも担った加藤めぐみ師範
後田リーダーは、「物語シャーマン」という異名を持つほど、やると決めたら徹底してのめり込む。これまで2回、Zoomチームリーダーをした経験をもとに、当日はもちろんのこと、事前にマニュアルやチェックリストを作成し、チームメンバーとオンラインミーティングを開催したりと大車輪の活躍をみせた。
メンバーは「後田さんがこんなにやっているのだから!」と奮い立ち、オンラインツールが足手まといにならないように、気持ちよく参加できるように、と一丸となってPCに目を凝らし、イヤホンから聞こえる音に全集中。
Zoomチームは、感門之盟参加者が次第に集中できる場をつくるだけでなく45[破]P1グランプリの投票も対応し、わき目もふらず現場編集をし続けていた。
オンライン感門之盟では、主に各講座の指導陣がゴートクジISIS館に集まる。感門の次第を配信するために必須なメンバーだけが集まる、というものだ。
リアル感門団は、このように集まった方をもてなす。
そう聞くと、「これまでと変わらないじゃないか」と思われるかもしれないが、そこについてくるのが「コロナ禍」だ。

受付やクロークから笑顔でお出迎え
受付では検温が、そして次第進行中は館内の手すりなどの消毒といった工程がプラスされる。しかも、今までの感門団は、このリアル感門団だけであったが、オンラインになったため他のチームにも人員が必要になる。
そのためにリアル感門団の人数がごくわずかとなり、作業負荷が高まっている。
しかし「もてなし・しつらい・ふるまい」を無くさないのが感門団の素晴らしさだ。
感門之盟初日、しかも最初のバニーメンを引き受けた新井陽大師範に「リアル感門団」リーダーの白羽の矢が立つ。「ほぼ遊軍的な動きです」という、衣笠の無茶ブリにも「頑張ります」と笑顔の応接。新井リーダーとリアル感門団は、2日間、常ににこやかで動きも軽やかにゴートクジISIS館を動き回っていた。
後日、感門之盟の振り返りを見て衣笠は愕然とした。
登壇者の中には出番直前に来て出番が終えると帰宅する人もいた、掃除用具やテープが実は必要だった、受付や傘立ての場所が移動していた、雨なのに受付が屋外…。
予想外のことや伝え忘れていたことが山積していた。だが誰も感門之盟の最中も、振り返りでもそれに文句を言わず、「次回は確認するようにする」と前向きな姿勢なのだ。
衣笠は、振り返りが寄せられているEditcafeの前で手を合わせた。
感門団の編集力は回を重ねるごとに増している。
「イーてれチーム」「Zoomチーム」「リアル感門団」それぞれが、自ら考え動くことができる唯一無二の集団になっている。
感門団は、単なる縁の下の力持ちではない。彼ら無しには感門之盟はできないのだ。
そして衣笠は心に誓った。「次こそは、もっと前から準備します…」。この誓いが果たされたかは半年後の結果を待たれたい。
                            
衣笠純子
編集的先達:モーリス・ラヴェル。劇団四季元団員で何を歌ってもミュージカルになる特技の持ち主。折れない編集メンタルと無尽蔵の編集体力、編集工学への使命感の三位一体を備える。オリエンタルな魅力で、なぜかイタリア人に愛される、らしい。
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