自ら編み上げた携帯巣の中で暮らすツマグロフトメイガの幼虫。時おり顔を覗かせてはコナラの葉を齧る。共に学び合う同志もなく、拠り所となる編み図もなく、己の排泄物のみを材料にして小さな虫の一生を紡いでいく。
おしゃべり病理医が、とうとう世界に飛び出した!
遊刊エディストの愛読者なら「おしゃべり病理医」といえば誰を指しているかが、ピンときているだろう。遊刊エディストでは「をぐら離」で、そしてイシス編集学校では[離]世界読書奥義伝や多読ジムでも、しゃべりまくる…いや、大活躍の小倉加奈子さんだ。
小倉さんが出演している「おしゃべり病理医のMEdit Lab ―医学Medicine × 編集Editで世界を読む―」の紹介動画がYouTubeに公開された。
小倉さんは順天堂大学の准教授でもあり、病理医でもあるセンセーなのだが、編集への思いは人一倍。「編集と医学をつなげたい!」と妄想?(構想!)したことを実現させてしまうパワフルウーマンなのだ。
そんなエネルギッシュ加奈子の相談を受けた吉村堅樹林頭がプロジェクトを立ち上げて完成させたのが「おしゃべり病理医のMEdit Lab」だ。
こうして「おしゃべり病理医のMEdit Lab」は、編集⼯学研究所と順天堂⼤学の共同研究で開発となり、経済産業省が展開する「STEAMライブラリーVer.1」で2021年3月1日から公開されている。
「情報編集の『型』」をベースとして、知っておくと便利な医学知識に「バイオ」「歴史」「読書」といった別の分野をかけあわせたインタースコアなデジタル教材として、中高生対象に展開している。
「ふーん、中高生向けかぁ」と思ったら大間違い!
「情報と情報の『アイダ』」にある意味や関係を発見し、新たな価値を見出していく編集を身につけながら、医学知識や医療現場の実際とその他の学問との関連を実感できる、大人にも目から鱗のコンテンツだ。
小倉さんの情熱もたっぷり入る濃密で重層で肉厚なコンテンツで、こだわりまくった映像レクチャーとユニークなワークが特徴だ。その内容を紹介しよう。
医学をベースに、情報の扱い方、考え方、発想の仕方を学ぶ準備運動。新型コロナウイルスをつかった見立てのワークに、病理医が日頃つかう見立てのワザもご紹介。


情報を調べる方法を編集から学び、新たな見方の発見をワークで体感。ウイルスを編集術で調べた後は、免疫のしくみを「免疫劇場」で楽しく解説します。
なかなか難しい免疫のしくみや感染モデル。オリジナルカードゲーム「MEditウイルスバトル」で遊びながら、理解を深めましょう。
その後は、医学の枠にとどまらず、ウイルスと社会現象を比較してモデル思考をワークで体験します。




バナナを病理診断して、様子の変化を区切る意味を知ります。日本の医学や病名の歴史を学びながら「名」についての理解を深め、独自の病名を考えるワークにもチャレンジ。
道具の発見の歴史から、未来のプロセスを考える編集ワークをしたり、病院の歴史と感染症の歴史を学び、差別や死についても考えます。




「医学×読書」はポストワーク。カエルくんの医療面談のあと、医師のカルテの書き方の型を学びます。担任の先生のお悩みカルテにもトライ。
読書は「読むこと」と「書くこと」。ツイート文に情報を凝縮させ、モードを駆使したツイート文や目次読書にチャレンジ。本を読まずに本の紹介コラムを書きましょう。



いかがだろうか。単なる「動画教材」ではない、と感じていただけたのではないだろうか。
まずはYouTube動画で「おしゃべり病理医のMEdit Lab」のモードをつかんでいただこう。
YouTube動画のあとは、そのまま経済産業省の「STEAMライブラリーVer.1」で、それぞれのコンテンツにどっぷり浸かっていただきたい。
コンテンツを視聴した暁には、ぜひ「おしゃべり病理医のMEdit Lab」プロジェクトメンバーとご唱和を!
Let’s MEdit Q!
衣笠純子
編集的先達:モーリス・ラヴェル。劇団四季元団員で何を歌ってもミュージカルになる特技の持ち主。折れない編集メンタルと無尽蔵の編集体力、編集工学への使命感の三位一体を備える。オリエンタルな魅力で、なぜかイタリア人に愛される、らしい。
「典を祭り、問答をひらく夕べ」酒上夕書斎×別典祭スペシャル ―『日本・江戸・昭和』三問答を語り尽くす―
十一月の夕刻、「典(ふみ)」をめぐる風が、編集工学研究所・本楼にひらりと立ちのぼります。 イシス編集学校の新しいお祭――「別典祭」。 多読アレゴリア一周年、そして松岡正剛校長の一周忌に心を寄せ、「典」すなわち“本”そのも […]
田中優子を揺さぶった一冊――石牟礼道子『苦海浄土』を読む夕べ|酒上夕書斎 第五夕[10/28(火)16:30〜 YouTube LIVE]
2か月ぶりに帰ってくる「酒上夕書斎」。 海外出張を経て、田中優子学長の語りの熱も、さらに深まっている。 第五夕で取り上げるのは、石牟礼道子の名作『苦海浄土』。 工場廃水の水銀が引き起こした水俣病――文明の病 […]
玄月音夜會 第五夜|井上鑑 ― 本楼初のグランドピアノ。言葉の余白に音が降る
本楼にグランドピアノが入る――史上初の“事件”が起こる。 井上鑑が松岡正剛に捧ぐ、音と言葉のレクイエム。 「玄月音夜會」第五夜は、“言葉の船”が静かに音へと漕ぎ出す夜になる。 すでにお伝えしていた「玄月音夜會」に、ひとつ […]
夜の深まりに、ひそやかに浮かぶ月。 その光は、松岡正剛が歩んだ「数寄三昧」の余韻を照らし出します。 音とことばに編まれた記憶を、今宵ふたたび呼び覚ますために―― 玄月音夜會、第五夜をひらきます。 夏から秋へ […]
ひとつの音が、夜の深みに沈んでいく。 その余韻を追いかけるように、もうひとつの声が寄り添う。 松岡正剛が愛した「数寄三昧」を偲び、縁ある音楽家を招いてひらく「玄月音夜會」。 第四夜の客人は、邦楽家・西松布咏さんです。 […]
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2025-11-18
自ら編み上げた携帯巣の中で暮らすツマグロフトメイガの幼虫。時おり顔を覗かせてはコナラの葉を齧る。共に学び合う同志もなく、拠り所となる編み図もなく、己の排泄物のみを材料にして小さな虫の一生を紡いでいく。
2025-11-13
夜行列車に乗り込んだ一人のハードボイルド風の男。この男は、今しがた買い込んだ400円の幕の内弁当をどのような順序で食べるべきかで悩んでいる。失敗は許されない!これは持てる知力の全てをかけた総力戦なのだ!!
泉昌之のデビュー短篇「夜行」(初出1981年「ガロ」)は、ふだん私たちが経験している些末なこだわりを拡大して見せて笑いを取った。のちにこれが「グルメマンガ」の一変種である「食通マンガ」という巨大ジャンルを形成することになるとは誰も知らない。
(※大ヒットした「孤独のグルメ」の原作者は「泉昌之」コンビの一人、久住昌之)
2025-11-11
木々が色づきを増すこの季節、日当たりがよくて展望の利く場所で、いつまでも日光浴するバッタをたまに見かける。日々の生き残り競争からしばし解放された彼らのことをこれからは「楽康バッタ」と呼ぶことにしよう。