先人の見立て力にひれ伏すしかないと思って来た「墨流し」。戯れに、Chatさんに「蝶のスミナガシを別の見立てで改名するにはどんな名前がいいですか?」と尋ねてみて、瞬時に現れた名答に打ち拉がれております。
ふつふつ、グツグツ、ぐわんぐわん…。物語講座が音を立てている。
2021年12月4日(土)[遊]物語講座14綴のリアル稽古「蒐譚場(しゅうたんば)」が行われた。いつもはオンラインで編集稽古をしているが、この日だけは違う。叢衆(学衆)と師範代、師範などの指導陣が一堂に会してリアルで編集稽古をする、[遊]講座ならではの1日だ。
「久々の本楼開催。zoomの人も一緒に混じりあいながら充実の1日にしましょう。」
昨年は、新型コロナウイルスの影響で完全リモート開催だったが、今回はリアルとリモートのハイブリット開催。開会メッセージで叢衆に呼びかける木村久美子月匠の顔もほころぶ。
「松岡校長は『物語は編集である』『編集は物語である』『物語する、と、編集するは同義だよ』と常々話しています。物語にとって大事な連想編集のことを念頭に置いて、この蒐譚場の1日を『遊(ゆう)』してください。」
木村月匠のこの言葉から蒐譚場がはじまった。
* * *
「物語とは何かを一言で語ると、それは『力』です。人が感動する意味を考えてください。そして未知の領域、神の領域に向かうのが『遊』。『遊』は完全な自由を目指していきます」と、立ち上げから講座と併走してきた赤羽綴師は、自身の見方をしめして叢衆の背中を押した。
* * *
残念ながら欠席となった小濱創師はメッセージ動画での登場となったが、さらに叢衆の編集エンジンを回していこうと試みた。
*
全教室を見守る小濱創師は、その場に居合わせることができないからこそ、各師範代を通して叢衆に語りかけたのだった。
「植田師範代は叢衆時代からワールドモデルの設定が上手く、この得意手が今の文叢の運営にも活かされています。植田師範代がつくるワールドモデルの中で、叢衆は『たくさんのわたし』をもっと広げ深めてほしいです。」
「裏谷師範代は前綴に続いての師範代ということで、カット編集術がパワーアップしています。指南の入るタイミング、手渡す強さ、順番が絶妙です。この波に乗れていない人はもったいない!何よりもこれに乗ってください。」
「高橋師範代は物語に対する知識量もものすごいですが、何よりキャラクターの妙です。叢衆それぞれのキャラクター、物語の知識に応じたキャラクターをもった手渡しです。みなさんは、このキャラクターの中にグッと入りこんでください。」
「後田師範代は物語の語り部と言われていますが、素晴らしいのは語る中身ではなく緩急です。この緩急が文叢の場の大きな力になっています。この波に乗って深いところに進んでいますが、少し立ち止まってみて振り返ることでもっと物語の闇が深くなるはずです。」
* * *
師範代と共に文叢(教室)に向かい合ってきた師範たちからも言葉があふれる。
お題からやってくる偶然や外部を取り込むことで物語ができる。お題は未知と出会う扉ということを意識してほしい、大きな意味で物語編集の意味を考えてほしいと、物語に向き合う叢衆を後押しする言葉をつないだ。
* * *
約2か月、文叢内で編集稽古を交わしている師範代は伝えたいことが溢れかえっていた。
稽古が途切れがちな叢衆にカメラ目線で呼びかけたり、つくりあげている物語を壊しにかかる指南の意図を表沙汰にしたり、書けなくてもボロボロでも良いから、書こうと思ったものに対して持ったモヤモヤを大事にしてほしいと語ったり…。
編集熱あふれる本楼で、それぞれが紡ぎ出された言葉は叢衆を揺さぶった。蒐譚場の振り返りやその後の稽古でも「参加してよかった」「会えてうれしかった」「物語の意義を知れた」など渦が巻き起こり、あちらこちらで共振している。
叢衆には、今週末、改編されたお題「トリガー・クエスト」の物語を書き上げが待っている。さらに勢いづいた14綴。編集方法の集大成といえる物語編集で、どのような熟成が起きるのか。叢衆自身の、そしてかれらの発酵はまだまだ続く。
衣笠純子
編集的先達:モーリス・ラヴェル。劇団四季元団員で何を歌ってもミュージカルになる特技の持ち主。折れない編集メンタルと無尽蔵の編集体力、編集工学への使命感の三位一体を備える。オリエンタルな魅力で、なぜかイタリア人に愛される、らしい。
田中優子を揺さぶった一冊――石牟礼道子『苦海浄土』を読む夕べ|酒上夕書斎 第五夕[10/28(火)16:30〜 YouTube LIVE]
2か月ぶりに帰ってくる「酒上夕書斎」。 海外出張を経て、田中優子学長の語りの熱も、さらに深まっている。 第五夕で取り上げるのは、石牟礼道子の名作『苦海浄土』。 工場廃水の水銀が引き起こした水俣病――文明の病 […]
玄月音夜會 第五夜|井上鑑 ― 本楼初のグランドピアノ。言葉の余白に音が降る
本楼にグランドピアノが入る――史上初の“事件”が起こる。 井上鑑が松岡正剛に捧ぐ、音と言葉のレクイエム。 「玄月音夜會」第五夜は、“言葉の船”が静かに音へと漕ぎ出す夜になる。 すでにお伝えしていた「玄月音夜會」に、ひとつ […]
夜の深まりに、ひそやかに浮かぶ月。 その光は、松岡正剛が歩んだ「数寄三昧」の余韻を照らし出します。 音とことばに編まれた記憶を、今宵ふたたび呼び覚ますために―― 玄月音夜會、第五夜をひらきます。 夏から秋へ […]
ひとつの音が、夜の深みに沈んでいく。 その余韻を追いかけるように、もうひとつの声が寄り添う。 松岡正剛が愛した「数寄三昧」を偲び、縁ある音楽家を招いてひらく「玄月音夜會」。 第四夜の客人は、邦楽家・西松布咏さんです。 […]
幼な心とワインのマリアージュ ― 酒上夕書斎 第四夕|8月26日(火)16:30~ YouTube LIVE
本を開くたび、知らない景色がひらけていきます。 ときに旅のように遠く、ときに親しい声に導かれるように――。 読書はいつも、新しい道へと私たちを誘います。 「酒上夕書斎(さけのうえのゆうしょさい)」では、石川淳をひもとき、 […]
コメント
1~3件/3件
2025-10-20
先人の見立て力にひれ伏すしかないと思って来た「墨流し」。戯れに、Chatさんに「蝶のスミナガシを別の見立てで改名するにはどんな名前がいいですか?」と尋ねてみて、瞬時に現れた名答に打ち拉がれております。
2025-10-15
『キャラ者』は、”マンガ家”だった頃の江口寿史の、(まとまった作品としては)ほぼ最後の仕事。恐るべきクオリティの高さで、この才能が封印されてしまったのはもったいない。
「来年こそはマンガ家に戻ります!」と言ったのは、2016年の本の帯(『江口寿史KING OF POP SideB』)。そろそろ「来年」が来てもいいだろう。
2025-10-14
ホオズキカメムシにとってのホオズキは美味しいジュースが吸える楽園であり、ホオズキにとってのホオズキカメムシは血を横取りする敵対者。生きものたちは自他の実体など与り知らず、意味の世界で共鳴し続けている。