さまざまな柄がリミックスされたストールが、背広の襟から見え隠れしている。2018年以来、松岡正剛校長が千夜千冊をリミックスして生まれてきた千夜千冊エディションをリ・リミックスしたLPを背景に、校長のオープニングメッセージが始まった。
リミックスで生まれているイシス編集学校
じつにたくさんのマルチスタイルとマルチアクティビティを持っているイシス編集学校は、校長の想像を遥かに超えているという。ではいったい、ほかの学校や組織と何が違うのか。その秘密は、経営陣と雇用人という二項システムではなく、人々の人生と活動がさまざまなポリロールとしてリミックスされているところにあるという。
私たちは世界史を失っている
校長は、私たちを取り巻く社会の奥へと文脈を広げ、ひっ迫したウクライナ情勢の奥にあるものを読み解く。じつは、世界史は教科書で習う四大河川ではなく、黒海の周辺でずっと動いている。そうした世界史を失っているまま、アメリカ、大英帝国、NATOなどによって牛耳られてきた今、その矛盾が噴き出てきているのだというのだ。歴史を展いた校長は、猛威を振るっているCOVID19にも触れながら、生物の領域へとリミックスしていく。人類はずっとウィルスとともに暮らしてきていたにもかかわらず、生物とは、ウィルスとはいったいなんなのか、よく見えていないのだと。
歴史的現在を語る方法を失っている今こそ、編集学校で学ぶいくつかの手法を、身近なところから世界史や微生物を語る方法へと繋げ、仲間へともっていってほしい。これが、第78回感門之盟を「REMIX・編集草子」と名づけた理由だと、校長は明かす。
編集学校のお題の奥にあるもの
ブライアン・ガイシンのカットアップの手法に触れた校長は、「世の中は骰子を振ってから始まる」というマラルメの言葉を引用し、リミックスの意味と重ねながら、既存の哲学、文学、思想といったジャンルを超えた情報へと、私たちを誘う。情報は至るところにこぼれている。私たちは骰子をふるたびに新しい世界に出合えるのだ。この偶然を取り込む骰子が、イシスのお題にあたるのだという。私たちはそれを組み立てて編集草子にしている。それが編集学校であり、インタースコアともインターアクティビティともいうのだと。
最後に校長は、リミックスのコツを伝授してくれた。「4か月間、頑張った仲間を言祝ぎながら、この二日間で体験したことを、ぜひリコールしてエディットしてほしい」
リコール(想起)から再編集へ。私たちのリミックスは続く。
写真:上杉公志
丸洋子
編集的先達:ゲオルク・ジンメル。鳥たちの水浴びの音で目覚める。午後にはお庭で英国紅茶と手焼きのクッキー。その品の良さから、誰もが丸さんの子どもになりたいという憧れの存在。主婦のかたわら、翻訳も手がける。
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