X’masエディットツアー・クリスマス特別編で世界旅行

2024/12/25(水)07:20
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本楼の躙り口を抜けると、南仏のミネストローネ「スープ・オ・ピストゥ」のスパイシーな香りが漂う。12月19日、エディットツアー・クリスマス特別編「編集と音楽の夕べ2024]が、昨年からさらにバージョンアップして開催された。

 

ナビゲータをつとめたのは、イシス編集学校 師範代で作曲家の上杉公志。今年4月「近江ARS TOKYO」でドリアン・ロロブリジーダさんの歌へのピアノ伴奏も記憶にあたらしい。聴覚に楽しい上杉の演奏を味覚で支えるのは、師範で野菜ソムリエの若林牧子。本楼のコンパクトなカウンターで、パリ仕込みの腕前をふるった。

さらに、今月スタートした多読アレゴリア「音づれスコア」から、師範代でピアニストの瀬尾真喜子と、師範でCD5万枚を所持する岡村豊彦も駆けつけた。

 

カウンターからのおいしい香りが気になる中、上杉のソロ演奏でエディットツアーがスタート。参加者から「クリスマスと聞いて思い出す曲」のリクエストが出ると、上杉は軽やかに指を躍らせる。アメリカ、フランス、ロシア、イギリス、そして日本のクリスマス・ソング。さらにクリスマスらしくない曲も、それぞれの記憶の中でクリスマスと関係づけられて、リクエストは止まらない。

 

ところで「クリスマスらしい曲」って何だと思いますか。歌詞に「サンタ」が出てくる? MVに「雪」が出てくる?

 

「リンリンリン、シャンシャンシャンという音が入っていると、クリスマスらしく聴こえるはず」と上杉は言う。

 

▲飛び入りで「シャンシャンシャン」の部分を

 担当した藤井さんと上杉


即興で春の曲、夏の曲に「シャンシャンシャン」を重ねると、確かに冬らしく、クリスマスらしく聴こえてくる。参加者からも感嘆の声がもれた。音楽の“超部分”が全体を凌駕する。松岡正剛校長がいつも語ってくれていた編集の醍醐味だ。

 

牧子シェフが腕を振るったお食事タイムでは、はじめに味の“超部分”を感じてもらいたい。カナッペのピンクペッパーが口の中で広がり、味の印象をガラリを変えた。

 

▲ピンクペッパーで見た目のクリスマスらしさも演出

 

今回、牧子シェフが挑んだのは、同じ具材を使って、まったく違うお料理を作っちゃうクリスマス・メニュー。その一部は、手書きのMenu画像をごらんいただきたい。インプットの情報は同じなのに、プロセスの違いで、アウトプットが変わる。少し手を加えるだけで、最後にトッピングを変えるだけで、ドイツらしさ、フランスらしさ、アメリカらしさ、も演出した。さらにグリュワインとデザートで本楼会場はすっかりパーティーモードに包まれた。

 

▲牧子シェフオリジナル クリスマスプレート 2024

 

 

▲視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚、五感フル活用の編集体験

 

エンディングを飾ったのは、ナビをつとめた上杉とピアニスト瀬尾による連弾で、ルロイ・アンダーソンの「そりすべり」。原曲のオーケストラ演奏では、鈴や鞭、馬の蹄のらしさ、を捉えた打楽器も入って、見立て尽くしの曲でもあるそうだ。

 


▲「そりすべり」を弾く瀬尾と上杉

 

軽やかな連弾でシャンシャンシャンのリズムを感じながら、2024年X’masエディットツアー・クリスマス特別編が幕を閉じた。毎年恒例のエディットツアー・クリスマス特別編。ぜひ来年もご期待ください。

  • 八田英子

    編集工学を世界に広めるために編集工学研究所に入所した元SE。不適な笑みを湛えながら、問答無用でばさばさと人を斬りまくる。編集的先達は沢田研二。

コメント

1~3件/3件

川邊透

2025-07-01

発声の先達、赤ん坊や虫や鳥に憑依してボイトレしたくなりました。
写真は、お尻フリフリしながら演奏する全身楽器のミンミンゼミ。思いがけず季節に先を越されたセミの幼虫たちも、そろそろ地表に出てくる頃ですね。

川邊透

2025-06-30

エディストの検索窓に「イモムシ」と打ってみたら、サムネイルにイモムシが登場しているこちらの記事に行き当たりました。
家庭菜園の野菜に引き寄せられてやって来る「マレビト」害虫たちとの攻防を、確かな観察眼で描いておられます。
せっかくなので登場しているイモムシたちの素性をご紹介しますと、アイキャッチ画像のサトイモにとまる「夜行列車」はセスジスズメ(スズメガ科)中齢幼虫、「少し枯れたナガイモの葉にそっくり」なのは、きっと、キイロスズメ(同科)の褐色型終齢幼虫です。
 
添付写真は、文中で目の敵にされているヨトウムシ(種名ヨトウガ(ヤガ科)の幼虫の俗称)ですが、エンドウ、ネギどころか、有毒のクンシラン(キョウチクトウ科)の分厚い葉をもりもり食べていて驚きました。なんと逞しいことでしょう。そして・・・ 何と可愛らしいことでしょう!
イモムシでもゴキブリでもヌスビトハギでもパンにはえた青カビでも何でもいいのですが、ヴィランなものたちのどれかに、一度、スマホレンズを向けてみてください。「この癪に触る生き物をなるべく魅力的に撮ってやろう」と企みながら。すると、不思議なことに、たちまち心の軸が傾き始めて、スキもキライも混沌としてしまいますよ。
 
エディスト・アーカイブは、未知のお宝が無限に眠る別銀河。ワードさばきひとつでお宝候補をプレゼンしてくれる検索窓は、エディスト界の「どこでもドア」的存在ですね。

堀江純一

2025-06-28

ものづくりにからめて、最近刊行されたマンガ作品を一つご紹介。
山本棗『透鏡の先、きみが笑った』(秋田書店)
この作品の中で語られるのは眼鏡職人と音楽家。ともに制作(ボイエーシス)にかかわる人々だ。制作には技術(テクネ―)が伴う。それは自分との対話であると同時に、外部との対話でもある。
お客様はわがままだ。どんな矢が飛んでくるかわからない。ほんの小さな一言が大きな打撃になることもある。
深く傷ついた人の心を結果的に救ったのは、同じく技術に裏打ちされた信念を持つ者のみが発せられる言葉だった。たとえ分野は違えども、テクネ―に信を置く者だけが通じ合える世界があるのだ。