本楼の躙り口を抜けると、南仏のミネストローネ「スープ・オ・ピストゥ」のスパイシーな香りが漂う。12月19日、エディットツアー・クリスマス特別編「編集と音楽の夕べ2024]が、昨年からさらにバージョンアップして開催された。
ナビゲータをつとめたのは、イシス編集学校 師範代で作曲家の上杉公志。今年4月「近江ARS TOKYO」でドリアン・ロロブリジーダさんの歌へのピアノ伴奏も記憶にあたらしい。聴覚に楽しい上杉の演奏を味覚で支えるのは、師範で野菜ソムリエの若林牧子。本楼のコンパクトなカウンターで、パリ仕込みの腕前をふるった。
さらに、今月スタートした多読アレゴリア「音づれスコア」から、師範代でピアニストの瀬尾真喜子と、師範でレコード5万枚を所持する岡村豊彦も駆けつけた。
カウンターからのおいしい香りが気になる中、上杉のソロ演奏でエディットツアーがスタート。参加者から「クリスマスと聞いて思い出す曲」のリクエストが出ると、上杉は軽やかに指を躍らせる。アメリカ、フランス、ロシア、イギリス、そして日本のクリスマス・ソング。さらにクリスマスらしくない曲も、それぞれの記憶の中でクリスマスと関係づけられて、リクエストは止まらない。
ところで「クリスマスらしい曲」って何だと思いますか。歌詞に「サンタ」が出てくる? MVに「雪」が出てくる?
「リンリンリン、シャンシャンシャンという音が入っていると、クリスマスらしく聴こえるはず」と上杉は言う。
▲飛び入りで「シャンシャンシャン」の部分を
担当した藤井さんと上杉
即興で春の曲、夏の曲に「シャンシャンシャン」を重ねると、確かに冬らしく、クリスマスらしく聴こえてくる。参加者からも感嘆の声がもれた。音楽の“超部分”が全体を凌駕する。松岡正剛校長がいつも語ってくれていた編集の醍醐味だ。
牧子シェフが腕を振るったお食事タイムでは、はじめに味の“超部分”を感じてもらいたい。カナッペのピンクペッパーが口の中で広がり、味の印象をガラリを変えた。
▲ピンクペッパーで見た目のクリスマスらしさも演出
今回、牧子シェフが挑んだのは、同じ具材を使って、まったく違うお料理を作っちゃうクリスマス・メニュー。その一部は、手書きのMenu画像をごらんいただきたい。インプットの情報は同じなのに、プロセスの違いで、アウトプットが変わる。少し手を加えるだけで、最後にトッピングを変えるだけで、ドイツらしさ、フランスらしさ、アメリカらしさ、も演出した。さらにグリュワインとデザートで本楼会場はすっかりパーティーモードに包まれた。
▲牧子シェフオリジナル クリスマスプレート 2024
▲視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚、五感フル活用の編集体験
エンディングを飾ったのは、ナビをつとめた上杉とピアニスト瀬尾による連弾で、ルロイ・アンダーソンの「そりすべり」。原曲のオーケストラ演奏では、鈴や鞭、馬の蹄のらしさ、を捉えた打楽器も入って、見立て尽くしの曲でもあるそうだ。
▲「そりすべり」を弾く瀬尾と上杉
軽やかな連弾でシャンシャンシャンのリズムを感じながら、2024年X’masエディットツアー・クリスマス特別編が幕を閉じた。毎年恒例のエディットツアー・クリスマス特別編。ぜひ来年もご期待ください。
八田英子
編集工学を世界に広めるために編集工学研究所に入所した元SE。不適な笑みを湛えながら、問答無用でばさばさと人を斬りまくる。編集的先達は沢田研二。
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