1800夜記念★千夜一撃帖選2 雷鳴轟くクロニクル

2022/06/21(火)23:00 img
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松岡正剛に渡される千夜一撃帖

 1800夜達成を記念して、松岡正剛に贈呈された「千夜一撃帖」。イシス編集学校の師範、師範代からAIDAの座衆、編集工学研究所、松岡正剛事務所のスタッフたちまでが、それぞれ1800夜から雷鳴に撃たれた一夜とワンフレーズを選び、いかにわたしは千夜千冊に直撃されたかを吐露したものである。速報記事「祝1800夜! 松岡正剛を囲む千夜一撃帖の夕宴」で祝宴の一部を紹介したが、あらためて130名がどんな千夜を選んだのかをご紹介しよう。前回は選択に重複があった千夜を紹介したが、今回は千夜がアップされた順、クロニクルで2回に渡って紹介していく。3人3列を1ブロックごと案内していく。

 

1夜『雪』から213夜『かくれた次元』まで

 

①中谷宇吉郎『雪』で千夜千冊という歴史的かつ個人的事業は始まった。意外にもただ一人、阿曽が果敢に選んだ。石川のドクターKこと華岡はルネ・デュボスの「トピア」「インスピレーション」をキーワードに抜粋。いつもは雷を落とす側の[離]総匠・太田香保はサンテグジュペリの「精神の飛行」で感電体験を告白。

②カメラマンとして開眼中の「藤木藤」の木藤、いまだ闇は深そうだ。探し物はなんですか? 八段プラモ小松原はお約束の「田宮模型」でこだわりを見せた。「編集の官能」を体現する着物の森山智子は世阿弥の別紙口伝に痺れた。

③10年以上に渡って「青い花」を探し続けているのはMOT勿体の岩橋。北原翁は『ブリキの太鼓』。永遠の少年を宿し続けている。モーラもらもら中尾は[離]で絶賛網羅中。「ゆめゆめあきらめてはいけない」ときっと離中で自分に言い聞かせ続けているだろう。

 

256夜『放浪記』から483夜『いのちとかたち』まで

 

①妖艶なメイクを施したマリリン三苫はエディット・ピラフを片手に放浪宣言。『うたかたの国』(工作舎)を編集した米山が選んだのは『形而上学』。松岡のアリストテレス遊びに仰天した。建築女子のB面細香は、この千夜で形こそが命だと再確認した。

②イシス に7人ほしいと松岡にいわしめた「ふくよ」こと福田容子。ラディカルな市場からの遁走宣言である。チェリスト松永は『水滸伝』。九州支所・九天玄氣組、千離衆などを梁山泊に想定していることだろう。ふくよとともに[破]番匠を務める図解の女王・野嶋は、ベイトソンに撃たれた。学習1・2・3ではない選んだ箇所がさすが図解派。「かたち」の裏沙汰に目配りした。

③奇しくも、IT業界ののドリアングレイ桂大介が、編集工学研究所のミセス二人を魅了する絵図になった。桂の目線は失われた原郷を見つめている。6月に編集工学研究所の新社長に就任した安藤はヘッセ。松岡への恋情にデミアン的なるものがあることを告白している。総務を長年守ってきた渡辺文子は「触れるなかれ、なお近うよれ」の奥義の一節を選んだ。さすが選択にもそつがない。

 

492夜『世のはじめから隠されていること』から879夜『一千一秒物語』まで

 

①図らずも左右に原田[破]学匠、鈴木康代[守]学匠が並んだ。挟まれる名古屋支所・曼那加組の小島真吾組長がかっこいい。面影座主宰として納得のフレーズだ。原田学匠はジラール、康代学匠はシュテフィター。文明の奥を見る原田・ピアニッシモに耳を澄ます康代。

②重厚な千夜千冊が並んだ。平野が抱える書には「Shinobu/Seigow/Sontag」の文字。運命の女・平野は編集に向かう志を刻む。[離]右筆として鼻息の荒い梅澤は『荘子』。離学衆たちに「遊」の極意を伝えてくれるだろう。子どもフィールドでも活躍する吉野は『ゲシュタルトクライス』。初雷撃以降も雷に打たれ、自らを更新し続けている。

③俳句の名手でもある女将・大武は助詞一つで世界を動かすことを体得している。AIDA座衆でもある丸善大熊はデスメタル愛好者。地味派手の五木寛之と共通点はあるか。セイゴオAIを構想する方師小坂は稲垣足穂に撃たれた。いまもタルホのごとく小さなモデルを作り続けている。

 

884夜『津軽三味線ひとり旅』から943夜『鈴木いずみコレクション』まで

 

①ピアソラ北條は、バンドネオンではなく津軽三味線を選んだ。コメントでは竹山との出会いを紹介してくれている。復活したシーザー井ノ上は最近禅にハマっているようだ。なぜ康代学匠との写真を選んだのかは不明。久しぶりに守師範に復帰した大澤は土門拳の「鬼」に共振した。動じないぶれない師範の真骨頂を感じる。

②プロジェクトのリサーチ力に定評がある10[離]典離の小澤が選んだのは『聖杯と剣』。「いま好きなもの、それをこそに全哲学を投じるべきである」。うん、その通り! 百間代表・和泉はラカン『テレビジョン』をセレクトした。松岡も意外だったようだが、あらゆる松岡正剛との仕事を成し遂げてきた和泉の快速仕事ぶりを考えるとなるほどの抜粋だった。裏方文学派の石輪はカルヴィーノで決めた。石輪の中にはまっぷたつの子爵も木のぼり男爵もいるようだ。

③苦み走った3人の男が揃った。松田優作もどきの佐土原はゲニウス・ロキに、場ぢからを生みたいという決意を込めた。離の顔とも言える方師田母神はプルーストを選択。時間に関してのコラムもエディストで絶賛連載中。支度天という名を持つ電三武田が選んだのは鈴木いづみ。武田はいつも仲間を助けて仁義を通している。

 

948夜『絶え間なき交信の時代』から1018夜『書物の出現』まで

 

①いま旬の男たち3人。千夜編集部の大泉、[離]新別当師範代の寺田、[守]師範代の齋藤。大泉は親指ケータイ一発文化への問題意識からリバースして新たな方法の萌芽を仮説した。ドストエフスキー千夜の雷鳴から20年で、寺田はいよいよ別当師範代へ。斎藤は赤いランドセルを背負い、指南を続けながら、意のままに幼年期を取り戻そうとしている。

②続いて古典的名作の3夜が並んだ。風韻講座からスピンアウトし、連句三昧の小原はやはり芭蕉翁ときた。「プロセス」を教室名に持つ内海がホワイトヘッドを選んだのは当然だろう。方法が世界を必要とし、編集が内海を必要としている。第1期師範代のレジェンド山田仁は原著で千夜をおっかけ続けている。千夜達成前夜の興奮の記憶とともにホメロスを選んでくれた。

③「あら、こうちょー、またいらしてね」とばかりの満面の笑みはイシス のアイドル、八田英子律師。リケジョの八田はエレガントな笑顔のまま宇宙な一夜で。花伝師範でテニスコーチの吉井優子が選んだのはエリアーデ。孤独に向き合って編集道を走れるのはイシスにノスタルジアを見るからだろうか。松丸ブックショップエディターでもあった川田は『書物の出現』。「内声の文字」をいまも大切にしていることがわかる。

 

***

 

さて、千夜一撃帖 雷鳴クロニクル前編はいかがだっただろうか。次回は、後編をお届けする。どんな千夜を誰が選んだかご期待されたい。

 

  • 吉村堅樹

    僧侶で神父。塾講師でスナックホスト。ガードマンで映画助監督。介護ヘルパーでゲームデバッガー。節操ない転職の果て辿り着いた編集学校。揺らぐことないイシス愛が買われて、2012年から林頭に。

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