道ばた咲く小さな花に歩み寄り、顔を近づけてじっくり観察すると、そこにはたいてい、もっと小さな命がきらめいている。この真っ赤な小粒ちゃんたちは、カベアナタカラダニ。花粉を食べて暮らす平和なヴィランです。
膨大な記事の中から、イシス編集学校の目利きである当期の師範が「宝物」を発掘し、みなさんにお届けする過去記事レビュー。今回は、9月に開催される第88・89回感門之盟のテーマ「遊撃ブックウェア」から、「ブックウェア」をお題に、3人の師範が記事をセレクトしました。いったいブックウェアって何?
山崎智章 43[花]錬成師範の発掘!
■【セカドク・ノート】②内側の木蓮
一斉に開花した象牙色の木蓮のイメージが、記憶を想起し言葉を紡ぐ。松岡正剛校長初期の著作『眼の劇場』から「内側の木蓮」を世界読書奥義伝[離]の火元組、小坂真奈美方師が読み解く。ブックウェアとは読み書きするする我々と本の間質材。例えば読書する環境や、一緒にとる飲食物、読書の時着るもの(ウェア)だってそれだ。本に書かれた内容を、この間質材も混ぜ込み脳に情報系列として刻むことで、それは唯一無二の記憶となる。またある時間質材は記憶を連鎖的に引き出す「機」(トリガー)ともなる。木蓮の記憶はノヴァーリス、華厳経、ホワイトヘッドにメーテルリンク達を引き出す「機」となり、セカドク[離]の香りを漂わせはじめる。
相部礼子 55[守]同朋衆の発掘!
見よ、この笑顔を。記事に添えられたナビゲーター2人のはじけんばかりの笑顔を。コロナ禍ゆえにオンラインで、手に手をとって、いや、思いと思いをつなげて、積ん読本という未知の世界の扉を開いた90分。その体験は「ギュッと要約オニギリを結」んで、インプットからアウトプット─本の紹介─へと結実。あっという間の三冊屋、4組が出来上がり。「これ、読みたい」が、いつしか「読まなくちゃ」の義務感に変わってしまう積ん読本。それを友達にしてしまう時間になったに違いない。本と本とで結ばれて、ぶつけた思考同士で結ばれて。知らない本とも結ばれる。色んなところにお友達作っちゃう、それがブックウェアなんだね。なるほど。笑顔に納得。
北原ひでお 54[破]評匠の発掘!
■【三冊筋プレス】プルーストを読み通す方法(松井路代)
読書をしていると、時折、到底登りきれない高い峰を垣間見ることがある。「編集かあさん」こと松井路代さんが出会った、世界一長い、この小説もその1つだ。読み始めるまで22年。子育て、夫の病、かつて想いを寄せた人の消息。日々揺れ動く日常に霞む峰を、いかに見失わず登り始めることができたのか。夫が集める関連本で、周辺を調査し、子どもたちの成長を見守って、一歩を踏み出した。そのときブックウェアがもたらす、読書と人生の時空が重なり合う大切なトポロジーに気付く。プチット・マドレーヌの香りやアンスリウムの赤に呼び起こされる過去を、ただの失われた時にしないためにも、僕たちはブックウェアを支えに頁を繰り続けていくべきなのだ。
本は決して「静的」なものではありません。それどころか、最も「動的」なものです。本はハードウェアであり、同時にソフトウェアであり、ヒューマンウェアでもあるのです。言い換えれば、本の力を最大限に引き出す動的な読書とは、《本がさまざまな動機と目的と生態をもって動くようにすること》(松岡正剛『松丸本舗主義』青幻舎)なのです。それを松岡校長は「ブックウェア」と名付けました。3人の師範の「ヨミ」にも、「ブックウェア」が躍如しています。
アイキャッチ/阿久津健(55[守]師範)
編集/バニー新井、角山祥道(43[花]錬成師範)
◎「発掘!」バックナンバー◎
発掘!「めぶき」――当期師範の過去記事レビュー#01
発掘!「アフォーダンス」――当期師範の過去記事レビュー#02
●イシス編集学校 第88・89回感門之盟「遊撃ブックウェア」
★54[破]、43[花]の方はこちら
■日時:2025年9月6日(土)12:30-19:30(予定)
■会場:豪徳寺イシス館 本楼(https://es.isis.ne.jp/access/)
■費用:4,400円(税込)
■申込締切:2025年8月29日(金)
■申込先:https://shop.eel.co.jp/products/es_kanmom88
★55[守]の方はこちら
■日時:2025年9月20日(土)13:00-19:00(予定)
■会場:豪徳寺イシス館 本楼(https://es.isis.ne.jp/access/)
■費用:4,400円(税込)
■申込締切:2025年9月12日(金)
■申込先:https://shop.eel.co.jp/products/es_kanmom89
イシス編集学校 [花伝]チーム
編集的先達:世阿弥。花伝所の指導陣は更新し続ける編集的挑戦者。方法日本をベースに「師範代(編集コーチ)になる」へと入伝生を導く。指導はすこぶる手厚く、行きつ戻りつ重層的に編集をかけ合う。さしかかりすべては花伝の奥義となる。所長、花目付、花伝師範、錬成師範で構成されるコレクティブブレインのチーム。
「乱世こそ花伝所」。松岡正剛校長の言葉を引用し、花目付の林朝恵が熱く口火をきる。44[花]の問答条々、式目の編集工学講義は花伝所をけん引するツインターボ、林・平野の両花目付のクロストーク形式で行われた。2025年10月2 […]
「5つの編集方針を作るのに、どんな方法を使いましたか?」。遊撃師範の吉井優子がキリリとした声で問いかける。ハッと息を飲む声がする。本楼の空気がピリリとする。 ▲松岡校長の書いた「花伝所」の前でマイクを握る吉井師範 &n […]
先人は、木と目とを組み合わせて「相」とした。木と目の間に関係が生れると「あい(相)」になり、見る者がその木に心を寄せると「そう(想)」となる。千夜千冊を読んで自分の想いを馳せるというのは、松岡校長と自分の「相」を交換し続 […]
【書評】『アナーキスト人類学のための断章』×4× REVIEWS 花伝所 Special
松岡正剛いわく《読書はコラボレーション》。読書は著者との対話でもあり、読み手同士で読みを重ねあってもいい。これを具現化する新しい書評スタイル――1冊の本を数名で分割し、それぞれで読み解くシリーズです。今回は、9月に行われ […]
3000を超える記事の中から、イシス編集学校の目利きである当期の師範が「宝物」を発掘し、みなさんにお届けする過去記事レビュー。今回は、編集学校の根幹をなす方法「アナロジー」で発掘! この秋[離]に進む、4人の花伝錬成師 […]
コメント
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2025-11-25
道ばた咲く小さな花に歩み寄り、顔を近づけてじっくり観察すると、そこにはたいてい、もっと小さな命がきらめいている。この真っ赤な小粒ちゃんたちは、カベアナタカラダニ。花粉を食べて暮らす平和なヴィランです。
2025-11-18
自ら編み上げた携帯巣の中で暮らすツマグロフトメイガの幼虫。時おり顔を覗かせてはコナラの葉を齧る。共に学び合う同志もなく、拠り所となる編み図もなく、己の排泄物のみを材料にして小さな虫の一生を紡いでいく。
2025-11-13
夜行列車に乗り込んだ一人のハードボイルド風の男。この男は、今しがた買い込んだ400円の幕の内弁当をどのような順序で食べるべきかで悩んでいる。失敗は許されない!これは持てる知力の全てをかけた総力戦なのだ!!
泉昌之のデビュー短篇「夜行」(初出1981年「ガロ」)は、ふだん私たちが経験している些末なこだわりを拡大して見せて笑いを取った。のちにこれが「グルメマンガ」の一変種である「食通マンガ」という巨大ジャンルを形成することになるとは誰も知らない。
(※大ヒットした「孤独のグルメ」の原作者は「泉昌之」コンビの一人、久住昌之)