[週刊花目付#012] バケツの中のポニョ

2021/05/18(火)19:04
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週刊花目付

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2021.05.10(月)

 

 4つの道場に6人づつの入伝生が配属され、35[花]の式目演習が始まった。各道場とも入伝式の振り返りを饒舌に交わしている。わかくさ道場ではTNが即日回答で先陣を切った。初速は上々。何よりだ。

 

 入伝式を経て、入伝生たちの場に臨むモードが切り替わったように見える。いよいよ「原郷からの旅立ち」を迎えたということなのだろうが、さて何が彼らをそうさせたのだろう。自発的な覚悟だろうか。場のもたらすアフォーダンスだろうか。

 講座の設営は、場面ごとの相転移を偶然に委ねているわけではない。意図を持って迎えに行こうとしている。その意図や方法を、継続的に整備点検しておきたい。

 


2021.05.11(火)

 

 朝は花伝所の、夜は番所のzoom会議。各講座の初動の様子などを交わす。

 

 講座運営の視点に立つと、毎期毎期の特徴を大掴みしてモデリングしながら当期のBPTアブダクションすることがある。たとえば、35[花]は31[花]の発言スコアと似た傾向が見て取れるので、この期の放伝生を仮想ターゲットに想定してイメージメントするといった具合だ。


 もちろんその時には「ないものフィルター」も躍動する。過去期にはあって今期にはないもの、今期にはあって過去期にはないもの。

 

 私が感じるに、35[花]のバケツの中にはポニョがいる。波をつかまえようとしたバケツに、何かとんでもないものまで掬ってしまっている。それを誰かに見せたいのだけれど、それがあんまりにもフラジャイルなので立ちすくんでいるように見えるのだ。

 

 欲しいものは安心なのか、自信なのか、勇気なのか、覚悟なのか。立ちすくむ限りは、ポニョもE.T.もゴジラもシンジも、永遠に解放されることはない。
 

 

2021.05.13(木)

 

 錬成師範の見守りが手厚い。ここまでのところ花目付は出る幕ナシだ。

 

 これまで錬成師範は無所任だったのだが、今期は各道場に配してスコアラーの役を担っていただいている。あれこれの深謀遠慮があっての設営なのだが、ひとまず功を奏しているようで何よりだ。

 

 何事もチームで場に臨む際にはメリットとデメリットがあって、ズレ/ハズレ/ヌケ/アフレが生じる場面でのマネージメントが問われる。このテーマを編集工学的に言い換えれば、フィードバック回路をいかに用意するかということだろうと思う。システムが自律的に機能するまでには、水遣りや調音や、ときには補加や代行も必要だろう。

 

 打てば響く場をしつらえたい。

 


2021.05.14(金)

 

 手の内を明かす話だけれど、この連載は「花伝所を言語化せよ」というミッションの下に書き連ねている。花伝所とはいったい何なのか。そこでは何が行われていて、どこへ向かおうとしているのか。それを花目付ロールの目線で語り重ねる試みだ。いわば秘すれば花」を解く編集である。

 

 さて、世阿弥は「秘すれば花なり、秘せずは花なるべからず」と言った。「秘するによりて大用あるがゆゑなり」と書いている。
 ならば秘伝は秘しておくべきなのか?

 

 おそらくこの問題は顕潜の二極に矮小化して考えるべきではない。「花」を「暗黙知」と言い換えて方法知の発見へ向かうべきなのだ。

 

 発見は、現行の知識が示唆する探求可能性によってもたらされることが多い。しかしながら、その発見への手続きには予想のつかなかったことや検証しにくいことが交じっていることも少なくない。

千夜千冊1042夜『暗黙知の次元』

 

 この連載が日記のスタイルを選んでいるのは、ニューズやノイズを積極的に取り込もうとしているからだ。普遍や不変は、偶然や変化をブラウザーにしてようやく発掘できるものなのだろう。「秘すれば花」は、ライブラリーに保管されるべきものではない筈だ。

 


2021.05.16(日)

 

 第1週目の回答締切。夜半までに24名全員の回答が道場へ届けられた。多くは息が上がっている様子だが、「楽しかった」と振り返る者もいて頼もしい。

 

 学びのプロセスにおいては苦行が美徳とされる風潮もあるが、それはあるとしても局面での体験であって、俯瞰して見れば英雄伝説の1ページなのだから、もっとカタルシスやエンタテイメントの側面が強調されたって良い。
 「傳」の字が表象する物語は、運ばれるメッセージの意味内容ではなく、それを運ぶ者の風姿にあるのだから。

 

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