自ら編み上げた携帯巣の中で暮らすツマグロフトメイガの幼虫。時おり顔を覗かせてはコナラの葉を齧る。共に学び合う同志もなく、拠り所となる編み図もなく、己の排泄物のみを材料にして小さな虫の一生を紡いでいく。
【松岡正剛 映写室】は師範の林が松岡正剛の表舞台、裏舞台を動画撮影した記録を蔵出ししていくEdist企画です。
【Take-05】は、千夜千冊1800夜の突破を記念して再び「千夜千冊の秘密」の秘密に戻り、松岡がなぜ「本」を主人公に語るのか、その謎に迫ります。今回は、これまで出し惜しみしていた映像をここぞとばかりに出しました。映像の素材としては、リハーサル映像、本番配信映像(提供:丸善雄松堂)、インタビュー映像の3つで構成しています。特にリハーサル時のディレクションはこれまでにない噛み応えです。
松岡は『五輪書』を片手にカメラマンにディレクションを入れ、今までにない本の見せ方を実験的にやりたいと迫った。本番では本は松岡と共に舞台の主役となる。固定カメラ数台と手持ちカメラが本と松岡を追いかける。
映像のラストとなるインタビューシーンでは「質問が悪い」と松岡に叱られたが、講演でも千夜でも明かしたことのない、本への思いを語ってくれた。私のみならず千夜ファンなら、きっと胸がチクリと痛むことだろう。松岡が語り得なかったことの続きは、エディストライターたちがアブダクションして語ってくれることに期待したい。
【松岡正剛 映写室 Take-05】本を主人公にする★祝1800夜
※2021年4月初旬に行ったインタビュー映像と2020年8月に開催された丸善創業150周年記念イベント「千夜千冊の秘密」の本番とリハーサル映像を使用して編集しています。
ヨウジの黒の染めは極め付きである。かつてぼくはベルギーで刊行されたヨウジ本で、黒楽や黒織部の「引き出し黒」のようだと形容した。ヨウジのものは布も仕立てもいい。着ると、体のほうにすうっと落ちていく。田中泯が「こんなに着やすいものは初めてだ」と唸った。
「千夜千冊の秘密」の舞台で松岡はヨウジを纏って舞台に現れると表情もふるまいも変わり「ものすごく着心地がいいんだよ」と言って足を自由に動かして見せた。着る物は人と世界を変えるエンジンで世界の全部が入っている。本と同じなのだ。
撮影・編集 林朝恵
撮影・写真 後藤由加里
協力 松岡正剛事務所、丸善雄松堂
【Back Number】
林朝恵
編集的先達:ウディ・アレン。「あいだ」と「らしさ」の相互編集の達人、くすぐりポイントを見つけるとニヤリと笑う。NYへ映画留学後、千人の外国人講師の人事に。花伝所の花目付、倶楽部撮家で撮影・編集とマルチロールで進行中。
あっという間に44[花]の錬成期間がやってきた。8週間のプログラムの折り返し、編集基礎体力ができたところで、入伝生に更なる負荷がかけられる。入伝生の多くはこの期間に蛹から蝶へと大きな変化を遂げるのだが、編集学校を見渡して […]
カメラがあるから見える景色がある。2025年11月3日、文化の日、なかなか終わらない夏の暑さから解放され、やっと来た秋らしいカラリとした空気の中、倶楽部撮家のメンバーが渋谷に集合した。街中で撮影のワークショップをするの […]
もう会えない彼方の人に贈る一枚 PHOTO Collection【倶楽部撮家】
ある日を境に会えなくなってしまった人。1度も会うことが叶わなかった人。 会いたくても会えない彼方の人がきっと誰しもいるだろう。松岡正剛校長は著書の中で度々、蕪村の句「凧(いかのぼり)きのふの空のありどころ」を取り上げてい […]
2024年8月12日、イシス編集学校校長の松岡正剛が逝去した。エディスト編集部では、直後に約1カ月にわたる追悼コラム連載を実施。編集学校内外から多数寄せられた松岡校長の面影は、1年経ってもなお鮮明だ。まるでその存在が読む […]
光を読む、光を撮る。 2025年8月9日、豪徳寺にあるイシス館とオンラインのハイブリッドで倶楽部撮家のメインイベントとなる瞬茶会(ワークショップ)が開催された。倶楽部メンバーは各々、カメラと懐中電灯を持参して集った。この […]
コメント
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2025-11-18
自ら編み上げた携帯巣の中で暮らすツマグロフトメイガの幼虫。時おり顔を覗かせてはコナラの葉を齧る。共に学び合う同志もなく、拠り所となる編み図もなく、己の排泄物のみを材料にして小さな虫の一生を紡いでいく。
2025-11-13
夜行列車に乗り込んだ一人のハードボイルド風の男。この男は、今しがた買い込んだ400円の幕の内弁当をどのような順序で食べるべきかで悩んでいる。失敗は許されない!これは持てる知力の全てをかけた総力戦なのだ!!
泉昌之のデビュー短篇「夜行」(初出1981年「ガロ」)は、ふだん私たちが経験している些末なこだわりを拡大して見せて笑いを取った。のちにこれが「グルメマンガ」の一変種である「食通マンガ」という巨大ジャンルを形成することになるとは誰も知らない。
(※大ヒットした「孤独のグルメ」の原作者は「泉昌之」コンビの一人、久住昌之)
2025-11-11
木々が色づきを増すこの季節、日当たりがよくて展望の利く場所で、いつまでも日光浴するバッタをたまに見かける。日々の生き残り競争からしばし解放された彼らのことをこれからは「楽康バッタ」と呼ぶことにしよう。