『絵師ムネチカ』から目が離せない。天才は往々にして何かが欠けている。そしてそのこと自体がまた天才の天才性を引き立たせる。周囲の人々の鼻面を引き回し、人生を変えていく「天才少年」のデモーニッシュな魅力を容赦なく描いた怪作。
これまでにも「神童」もの(?)を数多く描いてきたさそうあきら先生だが、ご本人は極めて方法に自覚的な職人タイプ。長年、マンガ学科の教員として教鞭をとり、『マンガ脚本概論』などの技法書にも定評がある。
輪読クエスト《古河探訪篇》、通称「ブラバジラ」が2019年12月15日(日)に行われた。場所は茨城県古河市。
輪読座は、イシス編集学校で唯一のリアル読書講座だ。編集はインプットとアウトプットのアイダに起き、インプットに読書は欠かせない。それを引き取っているのはバジラ高橋こと高橋秀元。今期、読み解いている熊沢蕃山を読書体験だけでなく、ゆかりの地、古河をめぐる体験からも受け取ってほしいというのだ。
「集え!編集遊者諸君!」とバジラからの突如の呼びかけに応答した知の冒険者たちとの1日をレポートする。


朝9時過ぎに古河に集合し、バスに乗って向かった先は「蕃山堤・蕃山溜」。水田への灌漑に利用するために、蕃山が堤をつくり、今でも滾々と水が湧き出る。地形の形状と蕃山を交差させてバジラが語る。

少し早いランチへの道すがら、手入れもされていない竹やぶを見て「蕃山は竹を植えろ、竹を植えろと言ったんだ」とバジラ。移動中も治水に取り組んだ蕃山の面影を見逃さない。

ランチ後は篆刻美術館に向かう。大正時代の石蔵を利用した美術館に、奏時代のものから現代作家の篆刻や、使用される数十種の岩石各種が展示されている。編集工学研究所でデザインも行う穂積晴明(13[離])は「こんな感じで64技法をやってみたい」と目を輝かせていた。

ノスタルジーな街並みを眺めながら進む一行は、「ブラタモリ」ならぬ「ブラバジラ」。


直木賞作家の永井路子氏の旧宅を訪れる。一般公開された旧宅は、室内に入ることができる。古い商家の佇まいの中で光るのは、永井路子が使っていたであろう家具に鎮座した永井路子の著作だ。


道に迷いながら到着したのは頼政神社。「いわゆる首塚だねぇ、ヒャヒャヒャ」と笑うバジラは神社裏手の小山の中もズンズン進む。ブラバジラは時折、リアル冒険物語と化す。

密林を超えるとそこは三国橋だった。下総国(茨城)、下野国(栃木)、武蔵国(埼玉)の古の三国をまたいでいた渡良瀬川を見渡す。

古川城の跡地も竹やぶになっている。掲示されている古地図から水底に消えた在りし日の古川城を想像する。アナロジーと編集導師バジラの言葉で、参加者の脳裏に城の姿が蘇る。


古河歴史博物館で古河の土地としての歴史や蘭学とのつながり、多くの書画を見学して古河という土地のベースを取り入れた後は、博物館目の前の鷹見泉石記念館へ。武家屋敷に参加者も興味津々となり、バジラを追い越し我先にと屋敷に吸い込まれる。

移動は基本歩きだが、バスやタクシーも使った。とはいえ、1日歩き通しで参加者もバジラも足が棒になっていた。江戸時代の商家をリノベーションした坂長本店店蔵にあるカフェで一休みし、英気を養う。


ブラバジラの締めくくりは、やはり蕃山。鮭延寺の蕃山の墓にお参りをし、1日の礼と日本陽明学の祖へ敬意を表する。夫婦で隣り合った仲睦まじい墓は感慨深く、自然と両手を合わせる者が続出した。バジラもその一人だ。
歴史的に古河を堪能したら、食も堪能しなくてはならない。鯉のあらいを中心に古河の味を堪能し、古河めぐりの幕を閉じた。
バジラの解説と、めぐって目にした史跡などにより、歴史的現在も感じる濃厚なブラバジラであった。
衣笠純子
編集的先達:モーリス・ラヴェル。劇団四季元団員で何を歌ってもミュージカルになる特技の持ち主。折れない編集メンタルと無尽蔵の編集体力、編集工学への使命感の三位一体を備える。オリエンタルな魅力で、なぜかイタリア人に愛される、らしい。
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2026-03-19
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これまでにも「神童」もの(?)を数多く描いてきたさそうあきら先生だが、ご本人は極めて方法に自覚的な職人タイプ。長年、マンガ学科の教員として教鞭をとり、『マンガ脚本概論』などの技法書にも定評がある。
2026-03-17
目玉入道、参上。
体を膨らませ、偽りの目玉(眼状紋)を誇張して懸命に身を守ろうとしているのは、カイコの原種とされるクワコの幼虫。クワコの繭から取れるシルクは、小石丸のそれに似て細く、肌触りがよいらしい。
2026-03-10
平和に飛び交うモンシロチョウも、地球史スケールでは、ほんの少し前に日本にやって来たばかりのパイオニアらしい。押さえきれない衝動に駆り立てられて彼方に旅立つ人たちの原型は、海をわたる蝶なのかもしれない。