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やってくる機ー44[花]5つの編集方針ワーク
- 2025/11/17(月)17:44
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「5つの編集方針を作るのに、どんな方法を使いましたか?」。遊撃師範の吉井優子がキリリとした声で問いかける。ハッと息を飲む声がする。本楼の空気がピリリとする。

▲松岡校長の書いた「花伝所」の前でマイクを握る吉井師範
入伝式では、事前課題をベースに入伝生たちが「道場の5つの編集方針」を作り上げる。事前課題は、師範陣が千夜千冊から選んだ十夜をベースとした内容だ。[花]の演習期間中に心と身体に馴染ませたい十夜を選りすぐったと言えばじわじわ効いてくる薬膳のようなイメージが伝わるだろうか、認知科学から仏教、言語まで、様々なジャンルの[花]の気配が滲む十夜で、師範代へ向けての準備が始まるのだ。
その十夜をベースにした道場の編集方針を作る。与えられた時間は、わずか30分。時間に追われながらも2道場は編集方針を作り上げた。

▲むらさき道場のワーク模様
しかし、編集方針は、《らしさが伝わらない。全体の編集方針が見えない。言葉が平凡すぎる。》と、師範から鋭い指摘を受けることになった。
師範たちが入伝生たちの地を大きく揺らすような鋭い講評をするのには理由がある。
師範代は師範の「代」理として、編集工学の方法を社会に伝えていく使命を持っている。編集学校の最前線であり、花形だ。
だから、これまでの自分に甘んじず、世界を読み、センサーを開き、埒をあける必要がある。自分を世界に開かないと何も始まらない。キズがあってこそ新しい世界の扉が開くのだ。
メッセージを受け、それぞれの道場で次の日から再編集が立ち上がった。
むらさき道場は、K・Kの連投で場が動いた。
「『花鳥の使』に肖って俳句でいきたい!!と思い、季語を調べながら俳句づくりを試みております」
「制約があると、より自分の表現したいことを表現できているように感じております」
Kの新たな発想と連投に驚きながらも、熱意をキャッチし、言葉を重ねるむらさき道場の入伝生たち。「繊細で、淫靡で、神秘的、綾しい集団」がむらさき道場らしさだという発言も飛び出し、深夜まで交わし合いは続いた。
くれない道場では、F・Kの「『道場の5つの編集方針』をつくることの意味ってなんなんでしょうか」という問いが大きく場を揺さぶった。
F・Kが「入伝生同士、どう関わるのか?の方針」ではないかと呟くと、すかさずS・R、K・Mが賛同、応答する。なぜやるのかという《そもそもの問い》が共有されてからは早かった。議論が一気に噛み合い、次の日の23:54に編集方針が組みあがった。
花伝所がモデルにしている世阿弥の「能」の世界では「一調・二機・三声」を大事にした。一調は調子のこと、二機は機会やはずみのこと、三声は発声のこと。
機会はいつやってくるかわからない。だからその時を逃さないように、体や声を用意しておく。
むらさき道場、くれない道場にも「機」がやってきた。K・KやF・Kは、対話と場の可能性を信じ、別様へ向けた発想や問いを場に投げ出すことで「機」を掴んだ。
入伝生たちがこれからの差し掛かる場面でどう変化するか、大いに期待したい。
最後に2道場の5つの編集方針を紹介する。
くれない道場 五つの編集方針 〜くれないの熱を高め合うお作法〜
1.【問】非自己をとり入れる
2.【感】不足・弱さ・カオスを咀嚼する
3.【応】ZPDを相互に分け入る
4.【答】シテとワキを行ったり来たり
5.【返】高速でフィードバックスパイラルを起こす
むらさき道場 五つの編集方針
1. 病葉(わくらば)に 編集企て 衣替え
2. 秋の声 あやの詞に 耳立てる
3. 代田こそ 早苗が育つ 都かな
4. たそとかれ 行き来繰り返し 夜長かな
5. 擬くため 夢幻の紫 解き放て
むらさき道場らしさ:繊細で、淫靡で、神秘的 綾しい集団
アイキャッチ写真/後藤由加里
文/上原悦子(44[花]錬成師範)
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