編集かあさん家では、千夜千冊エディションの新刊を大人と子どもで「読前」している。
「万物はスピンする」。
買ってきたばかりの千夜千冊エディション『宇宙と素粒子』を食卓に置くと、長男(12)が帯の文句をつぶやきながら口絵のページをチェックしに来た。
「なにこれ?」
2秒ぐらい見つめて閉じた。
「ぜんぜん、わからんかった」。
私も開く。折り紙だ。たぶん折り紙の達人の手による連鶴だと思うよと説明したが、長男はもう一度じっくり見ようとはしなかった。
ダイニングの椅子に深めに座って、手に取る。
前口上を読み、目次を眺める。第一章を開く。
あっ、冒頭に『子供の科学』が出てきてる。松岡校長、中学二年の時に、校舎の屋上に上がって、石をくくり付けた紐を落とす実験をしたんだって。我が家も誠文堂新光社の『子供の科学』を2017年から定期購読している。知らせたいという気持ちを押さえきれず、読みながら話す。
「それって、ガリレオやん」と長男。
そうそう、エディションの最初はガリレオの『星界の報告』が選ばれてるというと、向こうからやってきてのぞき込んだ。
「実験、うまくいかへんやろ」
そうみたい。妹が半泣きになったって。ガリレオになりそこねた夏の半日って書いてある。
妹が手伝わされるって、うちと一緒だ。長男が夜、外へ星空を見に行く時はいつでも長女(7)が同行させられるのである。長男は一人で行けず、長女は一人で留守番できないから。望遠カメラを操作する間、長女は自分の影を見ながら踊ったり跳ねたりして待っている。
「ピサの斜塔ぐらい高いところでも、かなり計るのはむずかしいで。速すぎるから。ガリレオ、やっぱり一番傾いてるところから落としたのかな」
自分だったらどうやって計る? センサーとか使うといいのかな。
「その号にはどう書いてあったのかな。編集部にはバックナンバーがぜんぶあるらしいけど、ちょっと気になる」
最新の2020年7月号を本棚から出してみる。冒頭のサイエンス&テクノロジーニュース一覧に目がいく。「コウモリは種によって異なるコロナウィルスを持っていた!」がトップ。宇宙関係は3点。
・ボリソフ彗星はとても寒い場所でできた?
・月面全体の「地質図」が完成!
・超高精度の光格子時計で一般相対性理論を検証
実験特集は「料理のロジック」。キッチンでできる自由研究だ。
校長が読んでいたであろう昭和32年前後のトピックスはどんなのだったのだろう。
「最初に天の川が星の集まりだって最初に観察したのはガリレオらしい」と長男はまた星のことを考えている。
そうだ、天の川は古代から乳の流れる道といわれていた。
「金星が満ち欠けしてるのは自分も見られたけど、自分が持ってる望遠鏡だと土星の輪は無理っぽい。バローレンズがいるみたい」。
長男の望遠鏡は、2年前に『子供の科学』通販で買って一緒に組み立てたものだが、最近は望遠カメラのほうをメインに使っている。
7月下旬、偶然にも、夜空にすべての惑星が揃うらしい。どうやって観察するかあれこれ算段している。
○○編集かあさん家の宇宙本棚
『星と伝説』(野尻抱影、偕成社)
『星ごよみ 星座と宇宙の観察図鑑』(林完次、山川出版社)
『講談社の動く図鑑MOVE 星と星座』(講談社)
『月刊星ナビ 2020年5月号』(アストロアーツ)
『月刊星ナビ 2020年6月号』(アストロアーツ)
『月刊天文ガイド6月号』(誠文堂新光社)
『黒い太陽のおはなし 日食の科学と神話』(文:寮美千子、絵:佐竹美保、小学館)
『おかえりなさいはやぶさ 2592日の宇宙航海記』(吉川真監修、講談社)
『宇宙 そのひろがりをしろう』(加古里子、福音館書店)
『子供の科学 2017年8月号 太陽を究めろ』(誠文堂新光社)
『子供の科学 2019年3月号 月探査が熱い!!』(誠文堂新光社)
『星空ガイド2018』(誠文堂新光社)
『星空ガイド2020』(誠文堂新光社)
『ハッブル望遠鏡が見た宇宙』(野本陽代・Rウィリアムズ、岩波新書)
『続・ハッブル望遠鏡が見た宇宙』(野本陽代・Rウィリアムズ、岩波新書)
『宇宙と素粒子』(松岡正剛、角川ソフィア文庫)
『星の辞典』(柳谷杞一郎、雷鳥社)
『ビッグバン宇宙論』(サイモン・シン 、 青木 薫 翻訳、新潮社)
『エレガントな宇宙 超ひも理論がすべてを解明する』
(ブライアン・グリーン、林一・林大 翻訳、草思社)
『宇宙を織りなすもの』
(ブライアン・グリーン、青木薫 翻訳、草思社)
○○関連リンク
松井 路代
編集的先達:中島敦。2007年生の長男と独自のホームエデュケーション。オペラ好きの夫、小学生の娘と奈良在住の主婦。離では典離、物語講座では冠綴賞というイシスの二冠王。野望は子ども編集学校と小説家デビュー。
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