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【冊師が聞く07】お題と〆切を原動力に走り続ける多読アスリート
- 2021/07/03(土)09:37
多読ジムの名物冊師が”気になる読衆”にずばりインタビューする新企画「冊師が聞く」。
シリーズ第7回、ラストを飾るインタビュアーは田中むつみ冊師(スタジオしゅしゅ)。インタビューに答えるのは三冊筋プレスの記事でもおなじみの細田陽子さん。いよいよ多読ジムSeason07の申し込みが締切間近。多読ジムとはどんな講座なのか?
◆(sai)2 こと 細田陽子さん(スタジオしゅしゅ)◆
中野区に生まれ、武蔵野台地の自然に囲まれた田無市に育つ。現在は「蔵づくりの街並みと時の鐘」で知られる埼玉県川越市に在住。
2021年3月で地方公務員を無事勤めあげる。目下読書三昧の日々を送りつつ、コロナ明けの旅先を絶賛物色中とのこと。理想の旅は、「世界児童文学の聖地巡礼」。多読ジムには、(sai)2のスタジオ名で、season02春から継続参加中。本と旅と珈琲をこよなく愛する。写真は本楼での汁講で、目次読書の稽古の様子。(44時鐘連音教室)
いきなりですが、スタジオ名(sai)2(さいさい)の由来は?
実は、小学6年生の頃からのニックネームです。旧姓とあるものが化学反応して生まれました。「あるもの」は…伏せています^^。歴代冊師が由来を推理されていて、なかでもスタジオ935のA-38冊師の「白川静さんの「 Φサイ」」説が目から鱗でした。フフフ、この方がカッコいいかも。
歴代冊師に推理されるスタジオ名、カッコイイなあ。A-38冊師とは、ひょっとして浅羽冊師のことですか?
そうなんです。スタジオ935では、名前を数値化するのが流行っていたんです。
なるほど! 互いにスタジオ名で呼び合ったりするところも、多読ジム独自の雰囲気を醸し出していますよね。では(sai)2さん、ズバリ受講の動機と、多読ジムの魅力は?
41破の師範が、多読ジムの大音美弥子冊匠でした。その時に読書コース準備中の話をお聞きして興味を持ち、開講を心待ちにしていました。season01は44守師範代ロール中だったためseason02から参加したのですが、飛び込んでみればとても居心地よく、以降他のロールが重なってもしがみついております。ジムの魅力は、なんといっても知らない本にたくさん出会えること。そして、本を好きな人同志で心おきなく読書の感想を交わし合えることです^^。
どんどん読みたい本が増えていきますよね(笑)。では、これまでの1年間で、多読ジムで巡り合った「忘れ得ぬ一冊」と、その理由を教えてください。
アンドレイ・クルコフ『ペンギンの憂鬱』です。女の子が寛いでいるご家庭の居間で閉ざされたカーテンの先を眺めている憂鬱そうなペンギンのイラストが印象的。そして、ラスト数頁のストーリーの畳み掛けが衝撃的でした。作品の時代設定や発表時期は1990年代なのですが、コロナ禍という先の見えない底知れぬ怖さを抱えた現在と重なります。
(sai)2さんは十四離 曳瞬院を退院されたばかりの千離衆ですが、 [離]の受講中は、たいへんな読書量になったと思います。読書の時間は、どのように作り出していますか?
[離]の受講中は、仕事をこなしつつ家事や睡眠をどこまで削って、読書時間にあてるかばかりを考えていました。夜は課題回答に充てるため、読書は専ら通勤の行き帰りや昼休み、仕事帰りに必ず立ち寄った職場近くの図書館での1、2時間といった細切れ時間を活用していました。常に複数の本を持ち歩き、同時並行で読んでいました。時間の制約と〆切がいい原動力になりますね。
すごい! 何冊も本を持ち歩くだけで、リアル筋トレになりそうです^^。お気に入りの「読書スペース」や「いつも傍に置いているお茶」など、本を読むときのルーチンなどあれば、教えてください。
立ち読みが意外と好きです。本屋さんや図書館、電車移動中のざわざわや高校生の他愛無いおしゃべりがBGMだったりします。家で読むときのお供は、まずは珈琲。手動ミルで挽いた豆で入れる一杯を片手に本を読む時間はほっとします。 最近は庭先のどくだみを干したものを麦茶と一緒に煎じたブレンド茶にもハマっています。
(sai)2さんは、多読ジムの読相術トレーニング<1> ブッククエストの「本の森を抜けて」で本棚ツリーを構築するのが至福の時間とか。3冊のキーブックからそれぞれ3冊ずつのサブブック、さらに3冊ずつをプラスした39冊のツリーを仕上げていくプロセスをお聞きしたいです。
例えば今回は「須賀敦子の本棚」がテーマだったので、はじめにベースとなる書評全体に目を通し、三冊のキーブックを選びます。ノートに三冊から連想した言葉や本を書き出し、「千夜千冊」のキーワード検索で連想を重ね、未読の本は書店や図書館で確認して、そこで目についた本も候補に加えます。ある程度出揃ったところで全体をグルーピングし、ツリーの流れがつながっていく感触がくるまで組み合わせたり分けたりを繰り返し、仮案を作ります。仮案はいったん寝かせ、その間に、本や表紙の情報を集めて仮案のとおりに並べ、タイトルを考えます。タイトルとズレがある子ツリー孫ツリーがあれば本を入れ替えて調整します。
そんなダンドリがあったとは! 本棚ツリーのレシピですね。
料理に例えるなら「ポトフ」でしょうか。肉や野菜などの具やスパイスをそれぞれの持ち味を活かしながら足していき、じっくりコトコト煮込んでいくイメージです。
season06春 [書院]マッスルギャラリー:ブッククエストリアル本棚より。タイトルは「邂逅〜行間の迷宮、無限の結末。」
ポトフの鍋から立ち上る湯気が、食欲ならぬ読欲を誘うツリーでした。ところで(sai)2さんは最近、「杉本博司の江之浦測候所」に感銘を受けられたとのこと。写真もお好きなんですか?
一枚の写真に凝縮された時間を想像するのが好きです。時間が経つほどに魅力的な媒体ですよね。ちょっと古めですが、ウジェーヌ・アジェやベニレス・アボットの撮ったモノクロームな世界に惹かれます。
色の無い世界の豊かさ、いいですね。そして、「世界児童文学の聖地巡礼」をしたいという(sai)2さんの理想の旅にもワクワクしました。お気に入りの児童文学や絵本などがあれば、お聞きしたいです。
定番になりますが、林明子の『こんとあき』やエリック・カールの『はらぺこあおむし』のような何度でも読み聞かせたい絵本が好きです。物語では、上橋菜穂子の『守り人』シリーズをはじめとした世界観が丁寧に描かれているファンタジーがお気に入りです。
手前奥から絵本『はらぺこあおむし』、ベニレス・アボット、ウジェーヌ・アジェの写真集。本棚上段には上橋菜穂子の小説が並ぶ。
最後に、(sai)2さんにとって「多読ジム」とは?
やっぱり、(sai)2さんは、「多読アスリート」でしたね(^^)。再び旅に出られる日を待ちながら、トレーニングをご一緒しましょう!
season06春「三冊筋プレス」に選んだ「旅する三冊」
Info
◉多読ジム season07・夏◉ 締切間近!!
∈START
2021年7月12日(月)
∈MENU
<1>ブッククエスト(BQ):ノンフィクションの名著
<2>エディション読み :『文明の奥と底』
<3>三冊筋プレス :笑う3冊
∈URL
https://es.isis.ne.jp/gym