同時期、山本はチームラウンジでつぶやく。「窓の雪囲いがやっと終わった・・」。そこは師範代と師範が、指南や教室編集について交しあいをする場だ。多少の雑談もすることはあるが、山本は切々と訴えるものがある。「除雪機、真剣に購入しないと思ってる日々です」。山本は、70年近くの生涯の大部分を富山で過ごしてきた。雪の怖さは、身にしみている。
12月になり、教室で山本は学衆を編集稽古へと誘う。
「二十四節季の大雪(たいせつ)がもうすぐそこのようです。寒い時には編集稽古で温まりましょうか」。
他方、チームラウンジでは恐怖心があらわになっていく。「降雪の状況などもあり不安は隠せません」「いよいよ冬将軍が到来しそうです」。
そう言われても、チームメンバーの師範と師範代には、なにもできない。
山本の教室は、7名の卒門者を輩出した。19年3月18日、山本は「あらたな息吹とともに、うららかな陽射しの中に出かけていきましょう」と学衆に最後のエールを送り、師範代ロールをまっとうした。同日、チームラウンジもクローズする。その日は、富山県の公立高校の合格発表日。学衆塾を主催する山本にとって、大きなけじめの日となった。受験生のお世話と、師範代ロールと、冬の恐怖から解放された山本。心中は、晴れやかだった。山本は「燦燦と編集を!」という言葉を残し、チームラウンジを後にした。
この冬、積雪量は10cmほどであった。けっきょく、山本は購入した除雪機を使わなかった。
井ノ上シーザー
編集的先達:グレゴリー・ベイトソン。湿度120%のDUSTライター。どんな些細なネタも、シーザーの熱視線で下世話なゴシップに仕立て上げる力量の持主。イシスの異端者もいまや未知奥連若頭、守番匠を担う。
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