縞々BPT教室の目利き力

2021/08/05(木)09:00
img POSTedit

 設計士に操縦士、インフルエンサーにナイチンゲール。いずれも47[守]縞々BPT教室メンバーの属性である。と言っても職業ではない。あだ名でもない。称号だ。
 2021年7月末日、縞々BPT教室1回目のオンライン汁講が開かれた。開講から3カ月、互いに顔をあわせるのは初めてである。2日前に田中香師範代から宿題が出された。「他のメンバー回答(特にミメロギア)を読んでおいてください。」「他のメンバーの「らしさ」を考えておいてください。」とのざっくりした指示だった。
 汁講当日、自己紹介の指名をしながら田中が告げる。「MさんにはRさんの、RさんにはFさんの他己紹介もしていただきますので、よろしくお願いしますね」。参加した学衆7名の顔には一瞬戸惑いの色が浮かぶ。他己紹介とは、互いに称号を贈るワークだった。

 

<うねうね他己紹介フォーマット>
○○さんは、まさに(まるで)●●です。わたしが好きな○○さんのミメロギア回答が■■だからです。
そんな○○さんに、「縞々BPT教室の▲▲」の称号をさしあげます。
 

  3分きっかりのシンキングタイムを延長することなく発表された称号とその理由は以下のとおり。戸惑いの色は蜃気楼だったようである。

 

Rさんは教室の「インフルエンサー」です。
「打ち上げ花火の砂浜・プラネタリウムの湖畔」がYouTube動画のように鮮やかだから。

 

Fさんは教室の「藤原屋(ふじわらや~)」です。
「歌舞伎の大谷・能のイチロー」が歌舞伎役者に間違われたこともあるFさんにぴったりだから。

 

Dさんは教室の「ナイチンゲール」です。
「見える声・聞こえる文字」が現われていないことや言えないことも引き出してくれる看護師のようだから。

 

Kさんは教室の「異空間への操縦士」です。
「充電の旅雷・時空の旅幽霊」で宇宙の果てや不思議な世界に連れて行ってくれるから。

 

Sさんは教室の「チャレンジャー海淵」です。
「みる声・ふれる文字」に底知れぬ深海のような奥深さを感じるから。

 

Oさんは教室の「ケンタウロス」です。
「ラムネの砂浜・紅茶の湖畔」でカタカナと漢字を見事に融合させたから。

 

Mさんは教室の「ダイアグラムの設計士」です。
「被災者の声・応援の文字」には、ぐるぐるまわる山手線のように、「助けて」と「がんばれ」のやりとりが続くイメージがあるから。


 イシス編集学校では、インターネット上の教室でお題・回答・指南の言葉が行き交う。開講時は名前しか知らない学衆どうしだが、回答・指南を読みあうことで、互いを理解し合い、連帯感も生じる。

 縞々BPT教室のメンバーはリズムを崩すことなく回答を重ねてきた。Oさんはお題が目指していることや稽古で気づいたことを勧学会に記録することを週1回のルーティンにしている。師範代が提案した「縞々あっぱれ回答集まれ!」には互いの回答のどこがどうあっぱれなのかを言語化した投稿が続々届く。編集稽古の眼目である「振り返り・リバースエンジニアリング」をあちこちで興している。
 着実な編集稽古は、「らしさ」をとらえ、それに適した回答を短時間で選び、言葉で表現する目利き力を培うのだ。

 

 47[守]は8月22日の卒門に向け、稽古に磨きをかけるステージに入った。
 次期48[守]コースの募集締め切りは10月11日(月)

  • 石井梨香

    編集的先達:須賀敦子。懐の深い包容力で、師範としては学匠を、九天玄氣組舵星連としては組長をサポートし続ける。子ども編集学校の師範代もつとめる律義なファンタジスト。趣味は三味線と街の探索。

  • 選書は急流? はたまたマグマ -九州の千夜千冊vol.2―

    イシス編集学校九州支所「九天玄氣組」は今年20周年。発足会を行った秋をめざし、周年事業を進めている。軸となるのは「九州の千夜千冊」を冠した雑誌の発行だ。松岡正剛の千夜千冊から選んだキーブック1冊ごとに33冊のグループをつ […]

  • 始動!松岡正剛に肖る九州の千冊ブックナビ

    8年近く続いた黒潮大蛇行終息の兆しが報じられる中、イシス界隈に、これまでにない潮流がおこっている。 松岡正剛の「千夜千冊」をキーブックとし、「九州の千夜千冊」を冠した雑誌づくりが動き出したのだ。 イシス編集学校の九州支所 […]

  • 本から覗く多読ジム——『ようこそ、ヒュナム洞書店へ』【ニッチも冊師も☆石井梨香】

    少し前に話題になった韓国の小説、ファン・ボルム『ようこそ、ヒュナム洞書店へ』(集英社)を読んでみました。目標を持つこと、目指す道を踏み外さないこと、成功することや人に迷惑をかけないことに追い立てられている人々が、書店と […]

  • 面影とともに進む 「山根尚子さん惜門館」ご案内

    [守]講座の終わりが近づくと、決まって届く質問がある。「教室での発言はいつまで見られるのですか?」 インターネット上の教室でのやりとりがかけがえのないものだということの表れだ。見返すと、あの時のワクワクやドキドキが蘇る。 […]

  • 「編集しようぜ SAY!GO!」師範代は叫んだ【81感門・50守】

    インターネット上の稽古場に50[守]学衆の声が届かなくなって10日が過ぎた。次期に受け渡すものを交し合っていた師範のラウンジももうすぐ幕を下ろす。卒門式の師範代メッセージには、メモリアルな期を走り切った充実がみなぎって […]

コメント

1~3件/3件

川邊透

2025-07-01

発声の先達、赤ん坊や虫や鳥に憑依してボイトレしたくなりました。
写真は、お尻フリフリしながら演奏する全身楽器のミンミンゼミ。思いがけず季節に先を越されたセミの幼虫たちも、そろそろ地表に出てくる頃ですね。

川邊透

2025-06-30

エディストの検索窓に「イモムシ」と打ってみたら、サムネイルにイモムシが登場しているこちらの記事に行き当たりました。
家庭菜園の野菜に引き寄せられてやって来る「マレビト」害虫たちとの攻防を、確かな観察眼で描いておられます。
せっかくなので登場しているイモムシたちの素性をご紹介しますと、アイキャッチ画像のサトイモにとまる「夜行列車」はセスジスズメ(スズメガ科)中齢幼虫、「少し枯れたナガイモの葉にそっくり」なのは、きっと、キイロスズメ(同科)の褐色型終齢幼虫です。
 
添付写真は、文中で目の敵にされているヨトウムシ(種名ヨトウガ(ヤガ科)の幼虫の俗称)ですが、エンドウ、ネギどころか、有毒のクンシラン(キョウチクトウ科)の分厚い葉をもりもり食べていて驚きました。なんと逞しいことでしょう。そして・・・ 何と可愛らしいことでしょう!
イモムシでもゴキブリでもヌスビトハギでもパンにはえた青カビでも何でもいいのですが、ヴィランなものたちのどれかに、一度、スマホレンズを向けてみてください。「この癪に触る生き物をなるべく魅力的に撮ってやろう」と企みながら。すると、不思議なことに、たちまち心の軸が傾き始めて、スキもキライも混沌としてしまいますよ。
 
エディスト・アーカイブは、未知のお宝が無限に眠る別銀河。ワードさばきひとつでお宝候補をプレゼンしてくれる検索窓は、エディスト界の「どこでもドア」的存在ですね。

堀江純一

2025-06-28

ものづくりにからめて、最近刊行されたマンガ作品を一つご紹介。
山本棗『透鏡の先、きみが笑った』(秋田書店)
この作品の中で語られるのは眼鏡職人と音楽家。ともに制作(ボイエーシス)にかかわる人々だ。制作には技術(テクネ―)が伴う。それは自分との対話であると同時に、外部との対話でもある。
お客様はわがままだ。どんな矢が飛んでくるかわからない。ほんの小さな一言が大きな打撃になることもある。
深く傷ついた人の心を結果的に救ったのは、同じく技術に裏打ちされた信念を持つ者のみが発せられる言葉だった。たとえ分野は違えども、テクネ―に信を置く者だけが通じ合える世界があるのだ。