バリバリ行くぜ、編集の道――48[守]本楼合同汁講・今さら篇

2022/01/24(月)09:39
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「帰りの電車でやってしまいました」
 こんなマクラとともに学衆のうるちゃんから回答が届けられると、トミーこと國富敬二師範代は「帰りの電車で! 型破りの即実践ですね!」と応じた。
 
 このやりとりが事件だったのは他でもない。この日1月16日は、豪徳寺の本楼で2年振りとなるリアル汁講が開かれたのだ。兄弟教室(オリーブなじむ教室)との合同開催である。今さら今こそ教室は遠方の学衆が多く、4人がオンラインでの参加。うるちゃんは教室唯一の本楼参加組であり、トミー師範代を引っ張る姿は凜々しかった。
 そのうるちゃんが本楼からの帰路、「手を止めてる場合じゃない!」と回答を放ったのである。これは間違いなく事件だ。

 

 なぜ火が付いたのか。
 汁講で行われたワークは、3冊の本をインタースコアして、教室のキャッチフレーズを決める、というもの。事前に「教室のらしさを示す本を選ぼう」と打ち合わせしていたにも関わらず、挙がってきた本は、教室の雰囲気とは似ても似つかぬものだった。


 (1)柴崎友香『よう知らんけど日記』(うるちゃんセレクト)
 (2)猪野健治『やくざと日本人』(國富師範代セレクト)
 (3)平山亜佐子『不良少女伝 莫連女と少女ギャング団』(角山師範セレクト)

 

 すかさず、学衆かわちゃんが「なにか教室模様の真逆ですね(笑)。もっとアウトローで外れてもいいってことかな」と本質を突いた。そもそも不良少女とは? やくざとは? 皆でアーキタイプを探っていく。
 アウトローとは「型破り」を指すのではないか。自分たちは大人しすぎたんじゃないか。そうだ、自分の中のヤクザを出していこう。バリバリいくぜ。アタイらは卒門までかっ飛ばすんだ! 今さらセブンズの交わし合いは、さながらレディースの決起集会だった。
 この日の紅一点ならぬ墨一点、学衆ピグさんは、自分たちが目指すモードとして「バッドセブンズ」と切り取った。

 

 キャッチフレーズがまとまりかけたその時、関西在住の学衆きっしゃんから、題名をもじって「よう知らんけど」とツッコミが入った。そう、BPTは一本道ではない。肩肘張らずにフッと鼻から息抜いて、行きつ戻りつしようやないか。

 

 誕生したキャッチフレーズがこれだ。

 

 バリバリバリバリ
 自分の殻をやぶれ
 バッドセブンズ
 卒門への道
 ようしらんけど

 

「バリバリと殻を破って、バリバリとお題に取り組んで行きたい」(学衆さきちゃん)
「卒門に向けてヤル気が起こりました」(学衆きっしゃん)
「改めてお尻に火が付いた」(学衆ピグさん)
 汁講後に教室や勧学会に溢れた言葉だ。そうなのだ、リアル汁講は参加者全員に火を付けたのである。

 

 トミー親分率いるバッドセブンズは、卒門までバリバリ行くぜ! 連想全開でどこまでもカブいてやるぜ!

 

 

▲チーム<い・キ・き>の本楼合同汁講の様子。八田英子律師の見事な本楼ツアーに学衆たちは目を輝かせた。

▲トミー師範代とうるちゃんのゴールデンコンビ。


作成/チーム<い・キ・き>(親分・國富敬二 × ガキ大将・角山祥道)

  • 角山祥道

    編集的先達:藤井聡太。「松岡正剛と同じ土俵に立つ」と宣言。花伝所では常に先頭を走り感門では代表挨拶。師範代登板と同時にエディストで連載を始めた前代未聞のプロライター。ISISをさらに複雑系(うずうず)にする異端児。角山が指南する「俺の編集力チェック(無料)」受付中。https://qe.isis.ne.jp/index/kakuyama

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コメント

1~3件/3件

山田細香

2025-06-22

 小学校に入ってすぐにレゴを買ってもらい、ハマった。手持ちのブロックを色や形ごとに袋分けすることから始まり、形をイメージしながら袋に手を入れ、ガラガラかき回しながらパーツを選んで組み立てる。完成したら夕方4時からNHKで放送される世界各国の風景映像の前にかざし、クルクル方向を変えて眺めてから壊す。バラバラになった部品をまた分ける。この繰り返しが楽しくてたまらなかった。
 ブロックはグリッドが決まっているので繊細な表現をするのは難しい。だからイメージしたモノをまず略図化する必要がある。近くから遠くから眺めてみて、作りたい形のアウトラインを決める。これが上手くいかないと、「らしさ」は浮かび上がってこない。

堀江純一

2025-06-20

石川淳といえば、同姓同名のマンガ家に、いしかわじゅん、という人がいますが、彼にはちょっとした笑い話があります。
ある時、いしかわ氏の口座に心当たりのない振り込みがあった。しばらくして出版社から連絡が…。
「文学者の石川淳先生の原稿料を、間違えて、いしかわ先生のところに振り込んでしまいました!!」
振り込み返してくれと言われてその通りにしたそうですが、「間違えた先がオレだったからよかったけど、反対だったらどうしてたんだろうね」と笑い話にされてました。(マンガ家いしかわじゅんについては「マンガのスコア」吾妻ひでお回、安彦良和回などをご参照のこと)

ところで石川淳と聞くと、本格的な大文豪といった感じで、なんとなく近寄りがたい気がしませんか。しかし意外に洒脱な文体はリーダビリティが高く、物語の運びもエンタメ心にあふれています。「山桜」は幕切れも鮮やかな幻想譚。「鷹」は愛煙家必読のマジックリアリズム。「前身」は石川淳に意外なギャグセンスがあることを知らしめる抱腹絶倒の爆笑譚。是非ご一読を。

川邊透

2025-06-17

私たちを取り巻く世界、私たちが感じる世界を相対化し、ふんわふわな気持ちにさせてくれるエピソード、楽しく拝聴しました。

虫に因むお話がたくさん出てきましたね。
イモムシが蛹~蝶に変態する瀬戸際の心象とはどういうものなのか、確かに、気になってしようがありません。
チョウや蚊のように、指先で味を感じられるようになったとしたら、私たちのグルメ生活はいったいどんな衣替えをするのでしょう。

虫たちの「カラダセンサー」のあれこれが少しでも気になった方には、ロンドン大学教授(感覚・行動生態学)ラース・チットカ著『ハチは心をもっている』がオススメです。
(カモノハシが圧力場、電場のようなものを感じているというお話がありましたが、)身近なハチたちが、あのコンパクトな体の中に隠し持っている、電場、地場、偏光等々を感じ取るしくみについて、科学的検証の苦労話などにもニンマリしつつ、遠く深く知ることができます。
で、タイトルが示すように、読み進むうちに、ハチにまつわるトンデモ話は感覚ワールド界隈に留まらず、私たちの「心」を相対化し、「意識」を優しく包み込んで無重力宇宙に置き去りにしてしまいます。
ぜひ、めくるめく昆虫沼の一端を覗き見してみてください。

おかわり旬感本
(6)『ハチは心をもっている』ラース・チットカ(著)今西康子(訳)みすず書房 2025