『キャラ者』は、”マンガ家”だった頃の江口寿史の、(まとまった作品としては)ほぼ最後の仕事。恐るべきクオリティの高さで、この才能が封印されてしまったのはもったいない。
「来年こそはマンガ家に戻ります!」と言ったのは、2016年の本の帯(『江口寿史KING OF POP SideB』)。そろそろ「来年」が来てもいいだろう。

賑やかだった道場が静まり返った。
言葉が交わされていないのではない。錬成演習を前にした気負い、緊張が道場内の言葉から夾雑物を奪う。
5月16日から開始した式目演習、道場生はすでに4つの式目をくぐり抜けた。師範からの指導、道場生同士の共読、火花を散らすような応答も重なり、道場生は自らの指南を磨き続ける。
「ハラハラドキドキがとまりませぬ」、だからこそ歩みを止めないやまぶき道場のK。動かし続けることが編集の要訣と心を決め、自らの指南を塗り替えつつ、発見的に道場生と交し合う。「お題研究フソクを感じて手に汗握る」からたち道場のEも稽古に余念がない。錬成師範の牛山惠子はその姿に「道着を洗濯して帯を締め直す」様を見てにんまりした。
錬成演習は花伝所における守破離の離。式目演習で叩き込まれてきた「型」をフル回転させ、編集的自己を確立する2週間が始まる。
実は擬装は「日本」をつくりだすための、「日本」というのがおおげさならば「くにぶり」(国風)をつくりだすための、必要不可欠とはいわないが、きわめて有効な世界像装置だったのである。
M5で学ぶのはゲームメイキング。それぞれが式目演習でイメージした教室像を形にしていく。名づけ、シツラエから始まる世界定め。30人の「歌合せ」が道場を彩る。先達を真似び、肖る、この虚に没入するプロセスが自己進化を加速させる。錬成演習では、道場生は師範代に着がえ、自らお題を出題する。最初に応じる錬成師範に知った顔はいない。これもシツラエの一つ。実際に師範代登板したら、会ったことのない学衆に相対する。細部にまでわたる仕掛けで道場生は自らの編集的自己を立ち上げるはずだ。指導にも忖度はない。出題のダンドリの微々たる揺らぎにも檄が飛ぶ。指南文の不足に容赦なく突きつけられる指導の切っ先に道場生は真っ向から応じ、即時でフィードバックを重ねていく。
30人の道場生に対し、師範陣は15人、総勢45人による乱取り稽古。否が応でも熱量が上がる。錬成演習は異界へのとば口。道場生は未知の師範代ロールに向かい、擬いて模してその際に差し掛かる。
指導陣もまた静かに道場でその時を待っている。
文 佐藤健太郎(錬成師範)
アイキャッチデザイン 阿久津健(錬成師範)
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